世界に誇る日本の食文化Vol.1 青森県の「いかの寿司」~レシピ付き~
(記事作成:公益社団法人 日本栄養士会)
こんにちは!日本栄養士会です。
未来につなぎたい食文化として伝統食・郷土料理をリレー形式でご紹介します。
自然を尊ぶ日本人ならではの食文化を、見て、読んで、味わってみませんか。
青森県の伝統食「いかの寿司」
本州最北端に位置する青森県は、東は太平洋、西は日本海、北は津軽海峡と三方を海に囲まれ、懐には陸奥湾を抱き、豊かな自然と漁場に恵まれているため、四季を通して新鮮な農林水産物を味わうことができます。全国トップの生産量を誇るりんご1)をはじめ、ごぼう、にんにく、ながいも、だいこん等の農畜産物、ひらめ、わかさぎ、しらうお、いか、しじみ、ほたて等の水産物といった多様で豊富な農林水産物を生産しています。
今回は、さまざまな味を楽しめる「いか」の郷土料理を紹介します。縄文時代前期~中期に栄えた三内丸山遺跡から、いか類のカラストンビ(口あごに相当する部分)が数多く出土しており、古くから食されていたことがうかがわれます。1 世帯当たりの年間消費ランキング(県庁所在地)では青森市が全国第1 位となっており2)、青森県民にはポピュラーな食材です。刺し身や煮物、揚げ物等いろいろな調理法を楽しむことができます。
捨てるところがなく、ゴロ(肝臓)焼き、塩辛、生っぴ(一夜干し)、いかメンチ等、地域ごとにおいしい郷土料理があります。郷土料理の中でも、県北部に位置する下北地方では、正月料理として「いかの寿司」を食べます。そのため昔ながらの作り方では12 月初めになると酢漬けを行います。
現在は、飯の入っていないものが一般的ですが、その原型は、内臓を取り除いたいかに野菜と飯と塩を入れて発酵させ、家の外の樽に各家庭で漬けていた「なれずし」だったようです3)。50 年くらい前のわが家では、箱買いしたいかの胴に、足、高菜、にんじん、紅しょうがを詰め込み、飯は入っていなかった記憶があります。
野菜の種類も各家庭で違ったようです。氷の張った樽の中から取り出し、正月の来客や門打ちの男衆の肴として振る舞ったことを懐かしく思い出します。70 代の方から話を聞くと、子どもの頃には飯が入っていたということで、時を経て現在の飯なしのものになったようです。
また、「ハレの日」の料理から通年で食べられるようになりました。自家製でしか食べることができなかったものが、スーパーマーケットで購入するのが主流になり、取り寄せもできるようになりました。今では身近な郷土料理になりましたが、これからまたどのように変化していくのか、行く末が楽しみです。
飯でなく野菜を詰めた
いかの寿司
材料(2人分)
いか…1杯(250~300g)
キャベツ…80g
にんじん…10g
塩(具材塩もみ用)… 小さじ1/4(1.5g)
しょうが…5g
A酢…80mL
A酒…大さじ1(15mL)
A砂糖…小さじ1/2(1.5g)
A塩…小さじ1/4(1.5g)
作り方
いかは胴の中に指を入れ、内臓ごと足を引き抜き、ゴロ(肝臓)と軟骨を取り除き、洗う。
熱湯にいかの胴・足を入れ、胴の部分が丸くふっくらしたら火を止め、水にとって皮をむく。
キャベツ、にんじんは千切りにし、ボウルに入れ、塩を振ってしんなりなるまでよくもむ。水気を軽く絞り千切りしたしょうがを加え、さっとあえる。
2の胴に2の足、3の野菜を詰め込む。
保存袋にAと4を入れ、空気を抜きながら袋の口を閉じ、冷蔵庫に1日おく。
幅1cmくらいの輪切りにし、盛り付ける。
※取り除いたゴロは油で炒め、キャベツ等の野菜を入れて、しょうゆ・酒・鷹の爪(輪切り)で調味して食べるのがおすすめ。
文 献
1) 農林水産省:作況調査・果樹(令和4年5月18日),
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/ringo/r3/index.html(2022年12月5日)
2) 総務省統計局:家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市( ※ )ランキング(2019年( 令和元年)~2021年( 令和3年)平均)魚介類,
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
3) 青森県農林水産部総合販売戦略課:食の文化伝承ガイドブック, p.179(2005),
https://www.umai-aomori.jp/wp-content/themes/aouma/pdf/syokubunka104-204.pdf
執筆者:公益社団法人 日本栄養士会 企画広報課
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