親の介護は身近な問題
自分も歳を取って加齢を感じますが、親はそれ以上に急速に体の衰えを感じているのが普通ではないでしょうか。最近では、やたら人生100歳時代だといわれますが、100歳を健康に生きながらえる人は現代人にどれほどいるでしょうか。
棡原村での健康長寿
かつて長寿村と呼ばれた棡原村ですが、既に近年の町村合併せ村名も消えていますが、東北大学名誉教授・近藤正二博士と甲府市の医師・古守豊甫博士により、夫婦揃った全国でも珍しい長寿村であることが報告がされました。30年以上に渡る両博士の全国990町村を実地調査した長寿研究で、近藤博士は「食・動・心」が長寿をもたらすとしています。
棡原村には水田がなく、主食は芋類、きび、あわ、そば、麦などの穀物だったようです。これに野菜、山菜、川魚といいますから、現代的に見れば素朴な「食」ということになります。
また周囲は山に囲まれており、急峻な地に家や畑があって日常的に道を歩いて上り下りして知らず知らずに足腰が鍛えられ、体力も維持しやすい生活環境だと結論付けているようです。
現代生活では工夫が必要
こうした環境を現代に求めても、自動車に自転車、バイク、電車など、移動手段も随分違います。さらにオフィスに学校では椅子に座る時間が長く、大腰筋や大腿四頭筋を動かす時間は意識しないと作ることができません。
まして、パソコン漬けのオフィス、テレビにスマホの家庭での生活では、からだを動かす時間を到底確保することはできません。筋肉が弱り、やがて筋肉が硬くなり、骨の位置がずれて、姿勢の悪化を招きます。
既に現代は小学生ですら、姿勢が悪いのはこのためですが、中高年の健康にも筋肉の減少は大きな生活上の移動の問題のみならず、健康問題から程なく介護問題へと発展します。
親の介護と中年に達する子自身の健康問題
いまや日本においては70代、80代の親を40代から60代の中高年が面倒を見る時代が到来しています。自ずと中年以降には何らかの病気にかかる人は増えてきますが、ガンなどで親の介護どころではないという家庭もあるようです。残念ながら親が子を先に亡くすこことも、然程珍しい光景ではなくなりました。
この点から、生活習慣病にかからないように、また生活習慣病になってもできる限り本人が自分で治す、クスリに頼らなくても自分で治せる、ということを認識すべき時代になっています。
ガンもよく歩くことで罹患リスクが低くなることが知られるようになりました。他の生活習慣病も同様です。但し、中途半端なことではなく、しっかりと腹囲が若い頃のように細くなることが望まれます。
国は、健康日本21でメタボ基準を設けていますが、残念ながら十分な成果が上がろうはずはありません。腹囲が男性で85㎝というのは一般的なに体格の人にとってはそれなりに太っている状態です。若い頃の10㎝程お腹周りが緩んだ状態です。
国はメタボ基準を見直して腹囲だけでなく、血液検査なども考慮することにあらためましたが、85㎝を下回っていても問題を抱える血液検査の結果が悪い人は多いと思われるからです。
中年の子どもは、歩く生活を取り戻す
それだけ現代人は歩いていません。江戸時代は、大店の若旦那でさえ10㎞は歩いたといい、丁稚などは30kmといいます。歩き遍路をすると距離の感覚が非常に研ぎ澄まされて来ますが、残念ながら都会での生活者のみならず、地方都市で生活する人でも、電車や自動車の利用します。都市によっては、むしろ地方の方が都市部よりも歩かない現象さえ起きてしまします。
中高年が健康を取り戻すには、先ずは日常的に歩くことをしっかりと生活の中に取り入れることです。また、休みの日には最低で10㎞、出来れば20~30㎞歩いてみると、からだのこと、歩くことの重要さが少しはわかると思います。中年になって最初に健康上の問題が起きるのは、たいてい血圧か脂質異常のいずれか、もしくは既に両方とも問題を抱えているかもしれません。
親を面倒を見よう、支えようという気持ちはあっても、この世代自身が健康に問題を抱えていては親の介護どころではなりません。なるべく40代からよく歩くことを生活習慣に取り入れることをお勧めします。さらに腹囲は男女を問わず、できる限り80㎝以下にすることが必要です。
脳血管疾患などの発症リスクは、グッと減るに違いありません。赤血球はよく歩くことで、柔らかくなって毛細血管などにも容易に入り込むことができるようになるといいます。脳血管障害もリスクは大きく低下すると考えられます。
親の介護問題も冷静に考える
自分の健康に自信が持てるようになると、親の介護問題を考えるのに経済的、時間的、精神的な余裕があります。介護は市区町村に地域包括センターなどで種々の生活支援、生活相談にのってくれますが、窓口関係者は親世代の身体的問題をどこまで理解しているかは個人差があるであろうと考えられます。
また、介護施設系に業務委託されていることも多く、社会福祉士や介護支援専門員などが配置されていて先ず介護ありきで考えがちです。医療現場より良いという指摘はありますが、高齢者自身が健康を取り戻そうとする意欲や具体の対応を熟知しているとは限りません。
国は施設介護には補助金などかなり費用がかさむことから、訪問医療などと組み合わせた自宅介護を増やすことに施策の重点を置いています。
高齢者自身も体を動かすことを考える
わたしはこうした点から、先ずは、高齢者も自分自身がからだを動かすことが少なく、生活習慣病を発症していること、また再び体を良く動かすことが出来れば疾患も、要介護度も大いに軽減するということの認識を深めることが必要だと考えるようになりました。
現在、特養や有料老人ホームなどの介護施設におけるリハビリ指導は、けして必要十分に行われるわけではありません。高齢になるとたいてい運動不足が長年続いたことから疾病を抱えます。心肺機能も大きく低下していますが、毎日ゆっくりと歩く距離を延ばすことで、心肺機能は強化されていきます。
まだ要介護手前の要支援や要注意な人を施設に入ると、十分に歩くことができなくなる環境となってしまします。その意味で、自宅療養、自宅介護はもう一度健康を取り戻す最後のチャンスといってもいいかもしれません。
そこには、病気も要介護も自分自身で行動をあらためるという意識を高めることが必要です。ともすると病院化した現代社会にあって、必要以上に医療機関や医師に無条件で身を任せるという人がいますが、生活習慣病と呼ばれる如く、自分で生活習慣をあらためるだけで再び自分で歩くことが出来たり、病気を良くすることができると考えをあらためることが大切です。
クスリは、本来長期的な問題を抱えないよう、一時的に服用すべきものです。日本ではクスリは一旦飲み始めると亡くなるまで飲まされる一方、現実には飲み忘ればかりでなく、自分で勝手に減薬しているという現実があります。この残薬問題も、医療保険から支出されますから医療機関や薬局は儲かりますが、国も税金の面でも何とも無駄な話です。
これらの無駄をなくす点からも、自分の健康・介護の問題は、からだを動かすことから考え直すことをしっかり再教育し直すことが重要です。もっとも、病院の患者の7~8割が生活習慣病です。患者の半分が自分で治すとなれば、病院も医師もこんなに必要ありません。医療体制も、医療制度も、ある方を再考することが必要になるかもしれません。
その前に、介護破産などにならないうちに、自分の健康も、自分の財産も、自分の経済も、自分で守りましょう。親の健康・介護の問題は誰にとっても身近な問題ですから。