「はたらく」について考える前に【第2回】戦略とはなにか
こんにちは。けんけんです。
初回の自己紹介記事でも書いた通り、これから『「はたらく」について考える前に、知っておいた方がよいこと』というテーマで記事をいくつか書いていきます。
知っておいた方がよいこと、とは、みんなが分かっているようでよく分かっていないことを対象にしています。具体的な項目については、前回の記事でも書きましたが、
・目的とはなにか
・戦略とはなにか
・企業とはなにか
・言葉とはなにか
・強みとはなにか
・決めるとはなにか
・好きとはなにか
・らしさとはなにか
等々...
こんな感じのテーマで進めていきます。
さて、2回目は「戦略」について話をしたいと思います。「戦略」という言葉は、そのあとに続く言葉の中でも使う機会が多く、「戦略」が分からないと説明できないことが多いからです。1回目の「目的」という単語もよく出てくるので、1回目の記事を見ていない方はまずはそちらをご覧ください。
「戦略」という言葉は、ネットや企画書、日常会話でもよく出てきますが、その言葉にふり回された経験がある人も多いと思います。
「○○という『戦略』をとっていきます」と話したときに「それは戦略ではない」と言われたり、「○○という我が社の『戦略』に則り、、、」と企画書に書いてあるけど、つまり何をするのかよく分からないとか。
「戦略」という言葉のややこしさは2つあります。1つは、「目的」のパートで話したミルフィーユみたいなレイヤー構造とまったく同じことがおきていて、どのレイヤーの「戦略」の話をしているのか分かりづらいこと。
もう1つは、このレイヤーにおける1役割的なことを指すこともあれば、このレイヤー全体のことを指していたり、それを抽象化したもののことを指すこともあったり、どの話をしているのかすごく分かりづらいことです。
その分かりづらさがゆえに、そもそも「戦略」という言葉をあまり理解せずに使っている人が多いので全体として混乱しやすいのだと思います。この「戦略」の理解を深めることが今回の「目的」になります。
「戦略」とはなんのためにあるのか
さて、そんなややこしい「戦略」の理解を深めていくために、まず「戦略」とはなんのためにあるのか、ということから話をしていきたいと思います。
この問いは直感的に分かる人も多いと思います。シンプルなので、こちらは先に答えを書きます。
「『戦略』とは勝つためにある」
これが一番シンプルな回答です。さて、それでは続いて質問です。
「なんのために勝つ必要があるのか」
これは分かりますか?意外に難しいですよね。
まずここで整理すると、勝つ、という話をしている時点で自分以外の他者がいる前提の話になります。自分に克つ、は少しややこしいので割愛をします。
一方で、自分と他者との間に必ず勝ち負けの関係があるかというと、そうではないですよね。自分と味方のAさん、敵のBさんとその味方のCさんといった場合にはAさんとは勝ち負けがなく、Bさんとは勝ち負けがあることになります。
このときに自分とAさん、Bさん、Cさんは以下のようにグルーピングされます。
Aグループ 自分、Aさん
Bグループ Bさん、Cさん
さて、この2つのグループのあいだでは何がおきているのでしょうか。これも分かりやすい話ですが、あらそい、いわゆる競争や戦争がおきている状態です。つまり、勝ち負けという単語は、あらそいがおきていることが前提になります。
人はなんのためにあらそうのか
さて、それでは人はなんのためにあらそうのでしょう。
この話は本気を出すとかなりややこしい話になってしまい、かつ正解がある話でもありません。そのため少し間違っているのですが、あえて話を簡単にさせてもらいます。
1. 生きるため
2. 自分の安全を守るため
3. 自分の方がすごいと証明するため
4. 自分の信じていることの方が正しいと証明するため
これはみなさん、なんとなくお分かりだと思いますが、マズローの5段階欲求にあてはめてみました(マズローが分からない方は検索してみてください)。3番目の帰属欲求だけは、あらそいというよりも仲間をつくりたい、という概念なので除外しています。冒頭の話で言えば、自分とAさん、BさんとCさんとの関係です。
まずは自分の安全のためにあらそい、自分の安全が確保されると人はつながりを求め、つながりあった集団がより上位の欲求のためにあらそいをはじめる、そんな構造になっています。
このように整理をすると、あらそいの原因は欲求、つまりやりたいことがあるから、ということになります。ここまでみてくると、前回の記事を見た方はもう分かりますよね。
目的 自分の安全を守りたい等
目標 あらそいに勝つ
手段 戦略
そう、「戦略」とは目的に対しての手段だということが分かります。
「戦略」は、なぜ必要なのか
さて、つづいて似たような質問です。さきほどの質問が"for What"だとしたら、こちらは"Why"ということになります。この質問が、「戦略」という言葉の本質に近づく大事な問いになります。
さきほど述べたように、「戦略」は勝つため、その結果としてやりたいことを実現するためにあります。それでは、なぜ「戦略」が手段として必要になるのでしょうか。この問いに答えるために、まずは「戦略」が必要となる具体的なシーンを想定してみましょう。
最初の具体例として、ゲームの話をしてみます。ゲームをよくする方は、ロールプレイングゲームをしたことがあると思います。そのロールプレイングゲームの遊び方を、いったん極端に2つの派閥に分けてみます。
1. レベル99にまでしてゲームをクリアする人
2. 可能な限り低いレベルのままゲームをクリアする人
1.の場合、どういう風にゲーム内で敵と戦うことになるか。これはもう、「たたかう」を押し続けるオートプレイで勝てる、いわゆる脳筋(脳みそ筋肉)で勝てるようになります。この時に「戦略」は必要ありません。
2.の場合はどうでしょう。よくYoutubeとかにも最低レベルクリアの動画があがっていますが、それらを見るとかなり頭を使って工夫しないと勝てないことが分かります。
誰か1人だけセンターになるキャラをきめて、そのキャラを軸にしながら毎回敵の弱点をきちんと調べ、その弱点をつくために必要なスキルやアイテムを駆使しながら、それぞれのキャラが必要な役割を担ってやっていく、、、みたいな感じです。これは「戦略」そのものといってよいでしょう。
次にゲームはやらないけどスポーツなら分かるよ、という方に向けて、サッカの話をしてみます。
サッカーは本来、同じくらいの実力を持った11人対11人であらそうスポーツですよね。そのためフォーメーションや選手の配置ふくめて色々な「戦略」があると思いますが、それでは以下の場合に「戦略」は必要でしょうか。
1. リバプールフルメンバー対日本の小学生のサッカークラブフルメンバー
2. レアル・マドリードフルメンバー対メッシ1人
これはもう分かりますよね、この例だと1.のリバプール側と2.のレアル・マドリード側にはもはや「戦略」はいりません。「戦略」はバルサ対レアルであり、リバプール対マンCであり、バイエルン対ドルトムントだから必要になるわけです。
一応このときに日本の小学生のサッカークラブ、およびメッシには「戦略」が必要になるのですが、もはや「戦略」でどうにかなるレベルではありません。厳密にいえば、相手選手全員に下剤を飲ませて不戦勝にするとか、全員に賄賂を渡して八百長試合にするとか、やり方はありますが。
さて、事例はこれくらいにして、「戦略」はどういうときに必要なのか見てきましたが、要は相手との力関係が拮抗していたり、やや劣位のときに「戦略」は必要になります。そしてその力関係を決めるのは、それぞれがもっている資源の量と質になります。
「戦略」が必要ないとき、というのは逆にその資源が圧倒的に優位にある状態のときですが、ゲームでもないかぎりこういう時はそもそもあらそいがおきません。あらそいがなければ「戦略」は必要ありません。
つまり、「戦略」が必要になるのは一言で言うと
勝つために必要な資源はいつだって足りないから
ということになります。
これは「戦略」を立てたり、振り返る時に大事なポイントです。資源が足りないことは、「戦略」を立てられないことや「戦略」がうまくいかないことのいいわけにはならない、なぜかというとそもそも資源が足りない時に取り組むものが「戦略」だからです。
「戦略」とはなにか
さて、これまで「戦略」とはなんのために、そしてなぜ必要なのかを考えてきましたが、ここからは
「『戦略』とはそもそもなにか」
について考えていきたいと思います。
冒頭でもお話ししたとおり、「戦略」と同じ言葉で呼ばれていても、この言葉は人や使い方によって異なることを指していることが多いです。ここに「戦略」という言葉のややこしさがあり、そのため「戦略」という言葉はすごく混乱しやすい言葉になっています。
今回、テーマとしては分かりやすく理解する、とおいているので、できるかぎり分かりやすい言葉でおいてみたいと思います。 「戦略」とは一言でいうと何か。
戦略・・・がんばりどころを決める
ちょっと文字数多くなってしまいましたが、一番イメージに近い言葉はこれでしょうか。
くわしく解説をしていきます。資源が足りない中で、どうするかを考えることが「戦略」なので、この貴重な資源をどのように分配するのか、が「戦略」の大事な役割になります。
これまで資源にふれていなかったので、ここでふれます。資源という言葉も人や時代によって定義が異なりますが、ここではヒト・モノ・カネ・時間・情報という5つの資源で定義します。
これらの「戦略」における立ち位置について考えてみると、資源によって役割が異なることが分かります。
まずは情報ですが、マーケットの定量数値や競争相手の動向、顧客アンケートを含めたいわゆる情報は、資源でありながらも資源の分配を司る役割も担っています。 そのため、「戦略」のスタート地点とも言えます。
次にモノ、カネですが、これらは「戦略」の中でも特に中長期(3−5年)の「戦略」においてはじめて登場してくるリソースになります。モノはビジネスであれば工場や土地、商品、戦争でいえば武器や輸送手段みたいなもの、カネはそれらのモノ(あるいはこの後にくるヒト)を購入するための資源になってきます。 短期の「戦略」においては考慮に入れづらいと思います。
最後に、ヒト、時間です。これが、実際の「戦略」を立案、実行するシーンにおいて考えることが多い要素です。誰にどこで何をやってもらうのか、どれくらいの時間を費やしてもらうのか、自分を含めたヒト、時間の使い方、が一般的には「戦略」の主軸になるかと思います。
ここまでをまとめると、以下のようになります。
情報
この資源を用いて最適な分配を考える「戦略」のスタート地点
モノ・カネ
主に中長期的な「戦略」において、配分を考える
長期的な地の利と武器、物量による優位をどのようにつくるか
ヒト・時間
主に短期的な「戦略」において、配分を考える
誰にどこで何を、どれくらいの時間を費やしてやってもらうのか
相手について得られた情報を元に、どのように優先的にこの資源、短期としては主にヒトや時間を分配して勝つのか、これがいわゆるがんばりどころ、と呼んでいる理由になります。よく、「戦略」とはやらないことを決めること、と言われるのはこれとほぼ同じ話です。
一方、これだけでは「戦略」は成立しません。それはなぜか。これを理解するためには、意思決定という言葉の説明が必要なのですが、 みなさんは意思決定、別の言葉で言えば決断と判断の違いは分かりますか。
本当はこれだけでも1記事が書けてしまうのですが、 本日は簡易的に以下のようにご理解ください。
決断 客観的な正解、不正解がない中でやることを選択する
判断 客観的な正解、不正解がある中でやることを選択する
「戦略」とは、決断である
これは「戦略」についてありがちな間違いなのですが、「戦略」とは必要な情報を揃えれば何をすればいいか分かる、というものではありません。それは機械やITができることを効率悪くやろうとしているだけで、そんなことは実際にはありません。 誤解のないようにですが、必要な情報を死ぬ気で集めることは大前提です。
80%までは判断できるが、最後の20%は決断という名のジャンプをして飛ぶ必要があり、このジャンプをするために必要なものが「戦略」ストーリーとも呼べるものになります。 これは別の言い方をすると、上流の「目的」含めて全体としてどのような「思想」に則ったストーリーを描いていますか、という問いになります。
前回の「目的」の事例はまさにこの話なのですが、ダイエットをするときに、選んだ手段、選ばなかった手段、という話、覚えていますでしょうか。目的に対して合理的に(客観的に)判断すれば、他の手段の方が明らかに正しいのに、自分の「思想」に則ってそれとは異なる決断をしていました。
おさらいまでに前回の話を持ち出すと、「モテて認められてイキイキと過ごすことが自分の人生だと思っている」思想の持ち主が、自己管理ができるイケてるビジネスパーソンと思ってもらうために、朝走ってから職場に向かい、職場についたら「今日朝から10km近く走ってきたんだよね」と周りに言いたいのでダイエットをしている、そんなストーリーを持つ人でした。
断食することや毎日6時間ワークアウトすることの方がダイエットという目的に対しては合理的なのですが、この思想やストーリーの人にとってその選択はあり得ない、というそんな話をしました。
この決断を行うために必要なストーリー、およびそれらの出発点となる「思想」がないと、「戦略」というものは成立しない、ということは、「戦略」を理解する上でとても大事なポイントになってきます。
つまり、「戦略」とは資源の分配のことを指すと同時に、「思想」、「目的」からつらなる「戦略」ストーリーのことも指しているわけです。これがないと「戦略」は完成しないからです。
また、これとは別途、「戦略」をコミュニケーションとして関わる人に伝わる言葉にする、ということも必ず出てくるのですが、こういうときには得てして「分かりやすい一言」として伝えることが必要です。
ダイエットの事例でいったときに、いまいちな言葉ですが「イケてるビジネスパーソンに、おれはなる!」とおいたとしましょう。これは「戦略」メッセージとも呼べるものですが、これがないと「戦略」が活きません。これも「戦略」の構成要素となるため、「戦略」という言葉で呼んでいる人が多いです。
この時点でだいぶややこしいので、ここまでを整理すると以下のようになります。
戦略とは
がんばりどころ
全体として足りない資源をどこに優先的に分配するか
を決める
「思想」や「目的」からつらなるストーリーを元に選択する
と同時に、
「戦略」ストーリー
「モテて認められてイキイキと過ごすことが自分の人生だと思っている」思想の持ち主が、自己管理ができるイケてるビジネスパーソンと思ってもらうために、朝走ってから職場に向かい、職場についたら「今日朝から10km近く走ってきたんだよね」と周りに言いたいのでダイエットをしている
「戦略」メッセージ
「イケてるビジネスパーソンに、おれはなる!」
を指すこともある。
「戦略」にもレイヤー構造がある
さて、なるべくシンプルに話をしようとしている中で、少し話をややこしくします。 先ほど、戦略は目的、目標に対しての手段、と言いましたが、実はちょっと構造を簡略化しています。 戦略をきちんと考える際には、よく以下のように手段が分かれて5つのレイヤー(または4つ)に分けられることが多いです。
目的
目標
マト
戦略
戦術
このマトは、目標や戦略側に含まれたり、あるいはまったく別の言葉で置かれることがあるのですが、今回は理解しやすいように、こちらだけカタカナで違和感がありますが、マトと置かせてもらいます。
これまで置いてきた言葉を当てはめると、以下のようになります。
目的 やりたいこと
目標 どこまでやるか
マト
戦略 がんばりどころ
戦術
これに対して、マト、戦術はどうなるのでしょうか。戦術の方が簡単なので先にいきましょう、こちらは「戦略」に対しての手段という立ち位置になります。つまり、がんばりかたです。
マトはどうでしょう。これは、上下と少し似た単語が出てくるのでややこしいのですが、 定義で言えばどこでやるのか、と置かせていただきます。
先ほど、目標に含まれたり「戦略」側に含まれたり、とお伝えしましたが、
このどこでやるのか、という要素は、目標として与えられていることもあれば、「戦略」のがんばりどころとして自分で決めることもあり、立ち位置が結構流動的なもの、もっというと時間単位でも流動的なものになっています。
そのため、恐らく割愛されることが多いと思うのですが、項目として入れた方が抜け漏れなく網羅しやすいため入れておきます。
さて、ここまでを整理すると以下のようになります。
目的 やりたいこと ↓
目標 どこまでやるか ↓
マト どこでやるか ↓ 戦略ストーリー
戦略 がんばりどころ ↓
戦術 がんばりかた ↓
ここからまた話をややこしくします。 冒頭からお伝えしていた通り、この一連の構造にはレイヤーがあります。そのレイヤーの中で、上位にとっての手段は下位の目的となる旨、また目的の行き着く先は思想、手段の行き着く先は行動であることもお伝えしていたかと思います。
また、この「戦略」ストーリー自体は、全体としての「思想」「目的」に支配されると同時に、その実行主体者の「思想」「目的」も反映されたものになってくるのですが、これは「強み」や「好き」と言った言葉をふまえて説明しないと分かりづらいため、別の機会にお話をします。
思想
目的 やりたいこと ↓
目標 どこまでやるか ↓
マト どこでやるか ↓ 戦略ストーリー
戦略 がんばりどころ ↓
戦術 がんばりかた ↓
目的 やりたいこと ↓
目標 どこまでやるか ↓
マト どこでやるか ↓ 戦略ストーリー
戦略 がんばりどころ ↓
戦術 がんばりかた ↓
目的 やりたいこと ↓
目標 どこまでやるか ↓
マト どこでやるか ↓ 戦略ストーリー
戦略 がんばりどころ ↓
戦術 がんばりかた ↓
目的 やりたいこと ↓
目標 どこまでやるか ↓
マト どこでやるか ↓ 戦略ストーリー
戦略 がんばりどころ ↓
戦術 がんばりかた ↓
目的 やりたいこと ↓
目標 どこまでやるか ↓
マト どこでやるか ↓ 戦略ストーリー
戦略 がんばりどころ ↓
戦術 がんばりかた ↓
行動
「戦略」の全体構造を事例としてみる
これは具体的な事例があった方が分かりやすいと思いますので、事例をあげてみます。戦争に例えると分かりやすいのですが、現代の戦争をあげるとよく分からなくなるのでご存知の方が一番多そうなキングダムを事例にしてみました。
多分に史実や漫画とも異なるところが出てくることはご容赦いただきながら、今回の目的はキングダムや中国の歴史を正しく理解することではなく、「戦略」ということを理解する講座なので、そこに注目してもらえればと思います。
今回は、その中でも最近連載されていた趙との戦いを事例に、触れたいと思います。 秦が趙に侵攻した攻略戦ですね、詳細は長すぎるので漫画をぜひ手に取ってみてください。漫画でもかなり長いですが。
前回の記事で書いた戦略のカスケードダウンとは、まさにこのことと思ってみてもらえればと思います。
思想
人が人を殺さなくてすむ世界をつくる 中華を統一して法治国家を作ることで、戦乱を繰り返し血を流しすぎた中華に戦のない世の中を作りたい
政
目的 中華を統一したい
目標 15年で他の6カ国を制圧していく
マト 地理的に7カ国の中央にある趙
戦略 斉との非公式な不可侵条約を結び趙攻略に全勢力を注ぐ
戦術 統一に向けた最大の障壁である李牧(趙)を倒す奇策に出る
戦略ストーリー
中華を統一するためには、隣国であり、思想に与しない李牧がいる趙を真っ先に滅ぼす必要があり、そうすることで中華の地理的な中心を手中に収めると同時に統一を阻む意思と力をもった強敵李牧を葬ることができる。そこに全勢力を傾けるために、地理的に真逆の大国であり、思想に共鳴してくれた斉と手を結ぶことで趙攻略に集中できる環境を作り、目標を達成するために10年かけて地道に攻略するのではなく全滅を覚悟で奇策にうって出ることを決める。
昌平君
目的 趙を滅ぼす奇策を成功させる
目標 邯鄲を攻略する
マト 鄴の攻略
戦略 3将軍20万人の連合軍による列尾から鄴への一点突破
戦術 兵站を偽装して西部攻略と見せかけ列尾を落とし鄴に向かう
戦略ストーリー
趙を滅ぼすためには、首都邯鄲を落とす必要があるが、邯鄲にまでたどり着く唯一の道筋は一見愚策に見えるが邯鄲のすぐ下にある最強の城塞都市鄴を落とすこと以外に道がない。普通に考えたら戦場となるはずの趙西部に向けて、秦にいる全将軍3名による連合軍を出発させながら、兵站をひそかに鄴の方面にうつす準備を進め、途中から急転換して鄴への入り口となる列尾まで全速力で進む。
王翦
目的 鄴を攻め落とす
目標 鄴を兵糧攻めにする
マト 敵主力の閼与軍を撃破
戦略 3つの遊軍部隊を中心にメンツを固め勝負をかける
戦術 朱海平原で総力戦
戦略ストーリー
鄴を攻め落とすために少数精鋭で偵察をしにいった王翦は、この城が絶対に攻め落とせないことを悟り鄴を兵糧攻めにすることにして、周りの9つの城の住民をわざと鄴に送り込み難民として収容させてパンクさせることに。その鄴を解放するために趙の3つの大軍が確実に攻めてくるところを受けるために3将軍で部隊に分かれ、向こうの主力が確実に集まると見立てた閼与軍を迎え撃つ部隊を一番手厚くして野戦で応戦することにした。
桓騎
目的 鄴を孤立させる
目標 鄴に来る解放軍を撃破しながら包囲し続ける
マト 鄴の兵糧庫
戦略 鄴の兵糧を枯渇させる
戦術 人を忍び込ませて焼き払う
戦略ストーリー
列尾を取り返されて兵站が遮断された秦と、難民を収容しすぎて兵糧が底を尽きそうになっている鄴の我慢比べが始まった状態のなか、王翦は鄴の内部に配下を侵入させることに成功。鄴の兵糧庫を全部同時に焼き払うことで兵糧を枯渇させることに成功し、鄴は抱えた難民の暴動を抑えることで手いっぱいに。最終的には、暴動により難民が鄴を開門してしまい、そこに桓騎軍が流れ込んで鄴は一時的に桓騎軍が支配することに。
信
目的 朱海平原の遊軍として相手中央軍を窮地に陥れる
目標 王翦の中央軍と挟撃の体制を作る
マト 将軍が2人撃たれた右翼で踏ん張る
戦略 信と羌瘣の個人戦闘力で将軍の首をあげる
戦術 個人の力技で勝負する、部隊を鼓舞して突破力をあげる
戦略ストーリー
最大の戦場となった朱海平原において、拮抗する両軍の実力を踏まえると最終的には中央本陣の挟撃に成功した側が勝つ。左翼、右翼それぞれで激戦が展開される中、ダメージの大きい右翼は将が2名撃たれる状態となり、信が代わりをつとめることに。趙左翼の屈強な将軍たちを狙い最後は信と羌瘣いずれかによる一騎討ちを実現するためにモチベーションを上げて攻め込み、個人力で将軍格を次々に倒して趙の中央軍に挟撃を仕掛けることに成功し、趙は敗走することになった。
行動 明日、戦場で目の前の敵を一人一人倒していく
ざっとこんな感じでしょうか。細かいところ間違っていたり、そこは違う、ということがありましたらひたすらご容赦ください。今回の目的は、キングダムを戦略的に語ることではなく、「戦略」というものの構成要素やレイヤーの感じがわかることなので、それさえなんとなく伝われば大丈夫です。
そして今回は飛ばしてしまいましたが、それぞれの「戦略」ストーリーにピックアップしたキャラクターたちの個性や価値観を感じましたか。それはこの後の記事で述べる話につながるのでぜひ覚えておいてください。
ちなみに、よく目的、目標、戦略の違いが解説される時に、ばらばらのレイヤーの中からピックアップして語られていることが多い気がします。(たとえば政の目的と王翦の目標と信の戦略みたいにピックアップ)レイヤーを意識しないとそういうことになるのですが、そのせいで余計にわかりづらくなっている印象を個人的には受けます。
こちらも余談ですが、下のレイヤーに行けば行くほど、より個人の戦闘力が主を占めてきます。これは会社でも同じだと思っていて、従業員1万人を超える大きな会社であればこの上から下まで全部網羅することになりますが、従業員100人くらいまでの規模であれば、恐らくかなりの領域が戦略というよりも、個人でなんとかする、そのために個人が鼓舞されてモチベーションが上がっている、ということが大事で、呼ぶとしたらそれが戦略となる世界だと思います。
おわりに 戦略とはなにか
さて、ここまでの話をもう一度整理しましょうか。
そしてここまでを通じて伝えたいことを、前回同様ストーリーにしてまとめます。
・「戦略」という言葉は分かりづらいです。いろいろなことを指して使われるし、レイヤー構造もあるのでばらつきますし、前回説明した「目的」と同じようなことがおきています。
・「戦略」はやりたいことを実現するためにあらそいに勝つための手段なのですが、これが必要なのは、あらそいの時はいつだって勝つために必要な資源が足りず、適切に分配する必要があるからです。
・その点において、「戦略」とはがんばりどころを決めること、と言えるのですが、これを決める基準は上流の「思想」からつらなるストーリーに支配されます。そしてこの「戦略」ストーリーや、これを分かりやすく表現した「戦略」メッセージも「戦略」と呼ばれることが多いです。
・そしてこれは「目的」と同じような話になりますが、「思想」がないと「戦略」自体が成立しないことになり、そういうときは判断をしようと無数の情報を集め続けて最後まで決断をしないまま、ということが大半を占めます。そしてそれは、現実として多いです。
サマリもかなり長くなってしまいましたが、ここまでお話しして、「戦略」という言葉をめぐってなぜよく人が混乱するのか、 なんとなくイメージはお伝えできたかと思います。
「戦略」を「戦略」ストーリーを指す言葉として使っていることもあれば、自分と違うレイヤーにおける「戦略」の話をしていることもあるし、そもそも「戦略」という言葉の意味を正しくわかっていないこともあります。
そして前回の「目的」の話同様、戦略という言葉は前提となる「思想」がないと意味がありません。そしてやっかいなことに、「思想」がなくても日常は回ってしまう、今回の事例で言えば目の前の敵を一人一人倒していくことで結果として成立してしまうことがある、ということです。
この「戦略」不在の状態を正しく把握しないと、「戦略」をめぐって永遠に不毛な議論がおきるとともに、「目的」の話でもお伝えしたとおり意味を感じずにモチベーションがわかないことが至るところでおきます。これは自戒もこめて記載しておきます。
はたらく、をめぐって「戦略」という言葉はよく使われます。「人生を戦略的に」とか、「仕事における戦略」とか「人生100年戦略」とか。それを考える前に、「戦略」という言葉の意味をぜひ考えてみてください。
これからの記事もお楽しみに。みなさんの感想も踏まえて、どの順番でやっていくかも決めていきたいので、スキ、コメントともにたくさんお待ちしております。
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