小説【スペース・プログラミング】最終章:「エピローグ」
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あれから3年が経ち
桑谷先生は大学卒業と同時に結婚した。
そして、まさかそのお相手があの警備員の柚木さんなんて知る由もなかった。6年ほどの長い付き合いなんだと。柚木さんは41歳で結構な年の差婚だな、と正直思ったが、桑谷先生が外資系メガベンチャーに就職が決定し「夫婦2人で幸せに暮らす」と。素晴らしいことだ。
そんな柚木さんも、警備員をやる傍ら作っていたAIゲームの売れ行きはアメリカのプラットフォームで売った途端好調な売れ行きを見せて、少しずつだが名前が知れるようになってきているみたい。プログラミングって、何歳になってからでも始められて、夢も叶うんだな、と思った。
目黒さんと咲耶姉さんは星野教授の跡を継ぐために、IT市場開拓や新規Webサービス開発のために、切磋琢磨してる毎日を送ってるとのこと。AIの開発や研究はやめたのかな、と思ったけれど、そこは目黒さん的に思うところがあってのことなのだろう、あまりそちらでの進捗は聞かない。
小川さんは、趣味で行っていたSwiftの作品を公開して、それをポートフォリオとして就活市場で見せる形で、大手スマホアプリ企業に内定……が決まったけど蹴った。自分で作ったスマホアプリが実際に商業レベルで食べていけるまで、研究と開発を繰り返す、とのこと。意外と努力家な人なんだな、と思った。
関口さんはT工業大学の物理学の大学院に入り、今は量子力学の研究をしているとのこと。例えば核融合発電の実用化もいいけれど、たまにはプログラミングに集中していたあの頃に戻りたがっているみたい。
そして、僕とホシは、それぞれ車椅子、ADHDという特性を抱えながらも、總星学園高等部に無事内部進学した。僕が得意な国語と社会、ホシが得意な数学と理科というコンビネーションで教えあって、今でも仲良くしている。
「将来大人になったら絶対結婚しようね!」
これをホシは毎日のように言う。逆に大人っぽさを通り越して子供っぽく見えるから、そこが僕にとっても可愛い。
ライトノベル作家もやりながら、僕はジュニア向けの宇宙読本の文章を書いたり、エッセイなどの依頼も受けたりしている。おかげで、治療費やリハビリの面で親に金銭的負担をかけずにいられるし、最近なんだかブッ飛んでる設定のライトノベルも悪くないような気がしてきた。だって僕の人生もあの世での経験も含めて十分ブッ飛んでるから。実際あの時の経験から売り上げの部数も伸びている。
宇宙とプログラミング。どっちが深くて、どっちの方がすごいスピードで広がっていくんだろう? 僕とホシは学校から帰りながら話し合っていた。それを僕たちは示したい。そう考えていると
「2人でいれば解けない問題なんてないよ!」
とホシは言った。そうだ、僕にはかけがえのない大切な最愛の女の子が今も横にいる。きっとその想いをいつまでも大切にしていれば、2人星空に輝く暗天の煌めきのように、見つけられるのだろう。そしてそれを今度こそ離さない。
終わり