嘉数研二 | 魚病研究委員

1943年8月30日生まれ | 宮城県仙台市出身 | かかず整形外科元院長 | 医師の傍ら、趣味で錦鯉の飼育をはじめる。1983年〜1988年に錦鯉総合誌「燐光」に執筆した内容を紹介します。時代背景など現在と異なる部分が多くあるかと存じますが、ご理解いただけると幸いです。

嘉数研二 | 魚病研究委員

1943年8月30日生まれ | 宮城県仙台市出身 | かかず整形外科元院長 | 医師の傍ら、趣味で錦鯉の飼育をはじめる。1983年〜1988年に錦鯉総合誌「燐光」に執筆した内容を紹介します。時代背景など現在と異なる部分が多くあるかと存じますが、ご理解いただけると幸いです。

マガジン

  • 錦鯉の成長(鱗について)

    従来、錦鯉の年齢は木の年輪と同じように、その鱗の同心円状の縞模様を数えることによって知ることができると言われていたが、実際には稚魚においてもすでに数十本の縞模様がみられることから、この考え方は否定されているのが現状である。 私は錦鯉の鱗を各種顕微鏡にて観察、実験することにより、鱗の成長形態の一つととらえることができたので報告する。

  • 錦鯉 -今月の魚病対策-

    季節に先駆けた錦鯉の魚病対策について。 錦鯉愛好家の皆様に読んでいただけると幸いです。

最近の記事

まとめ-錦鯉の成長⑤-

鯉の成長には、先天的、後天的因子が大きく関与し一様ではないが、これは鱗にもいえることで、ridgeの数やridge間の幅などもいろいろな条件に左右されるものと考えられ、これを数えることで鯉の年齢を正確に当てることはやや無理があるかもしれない。 しかし、実際にはridgeは年輪というより週輪に近く、ある時期には1週間に1〜2本という単位で作られるときもあり、また鱗の成長が止まれば作られなくなるとも推測されるが、今後更に検索を行い、こういった点も明らかにしていきたい。 1.鱗

    • 結果と考察-錦鯉の成長④-

      この鱗の頭側の表面はridgeが鋸の歯のように並び、鱗が真皮より抜けにくくなるように造られているかのように見える。一見無構造にみえる鱗は、注意深くみると層状構造をしており、扁光顕微鏡ではっきりと、しかも美しく観察された(図5) ヒトの骨の組織学的動態を検索するのに、しばしばテトラサイクリンの投与を行い観察するが、これは、テトラサイクリンが骨の石炭化の際、キレート結合をして、これが螢光顕微鏡で紫外線をあてると黄色に光って見えるのを利用したものである。 果たして鱗においてテト

      • 結果-錦鯉の成長③-

        鱗の表面を顕微鏡で拡大してみると、あたかも木の年輪のように同心円状の縞模様がみられる。これは鱗の頭側及び上・下には明瞭に認めるが、表皮におおわれた尾側は明瞭ではない。この縞模様はridge(たかまり)であり、ridge間の距離は辺縁にいくほどやや広くなっている。 このridge間の距離が大きい鯉の鱗と小さい鯉の鱗とで比較したが、相対する部位において余り差がなかった。つまり、一度形成されたridgeの位置は成長によって大きく移動することはないと推測される(図1) 一方、鱗に

        • 方法-錦鯉の成長②-

          健康な錦鯉(紅白、32センチ)の鱗を抜き取り、次の方法でこれを観察した。 ⑴鱗の拡大像(光学顕微鏡)の観察 ⑵ソフテックス ⑶マイクロらジオグラフィー ⑷H・E染色による鱗の断面の組織像 ⑸偏光顕微鏡による観察 以上を行った後、鱗の組織学的動態を観察するために、 ⑹テトラサイクリン標識を行った鱗の螢光顕微鏡による観察を行った 投与法は二回投与法で、テトラサイクリン五〇ミリグラムを腹腔内へ注射した 第1回目3日間投与後、7日間休み、第2回目も3日間投与を行い、第1回投与前と

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        • 錦鯉の成長(鱗について)
          5本
        • 錦鯉 -今月の魚病対策-
          49本

        記事

          はじめに-錦鯉の成長①-

          従来、錦鯉の年齢は木の年輪と同じように、その鱗の同心円状の縞模様を数えることによって知ることができると言われていたが、実際には稚魚においてもすでに数十本の縞模様がみられることから、この考え方は否定されているのが現状である。 鯉の鱗は真皮がキチン化して生じるといわれ、鱗の成長は、その中心にある中心核から外方へ伸びるという。この中心核は終生変化せず、脱鱗した場合でも再びここから発生するとされる。 私は錦鯉の鱗を各種顕微鏡にて観察、実験することにより、鱗の成長形態の一つととらえ

          はじめに-錦鯉の成長①-

          おわりに-12月の魚病対策-

          今回で曲がりなりにも私の義務を果たすことができました。1年間通せるかどうか不安でしたが、愛鯉会の会員の皆様の有り難い励ましや、自分自身の勉強のためということで、無事終えることができました。 全国の愛好家の方々から多くのご質問をお受けし、適切な返事が出来なかったことも少なくなく、申し訳なく思っております。誌上をお借りしてお詫び申し上げます。このような失敗や経験を今後に生かし、更に発展させたいと思います。 こうした中で何よりも嬉しかったことは、愛鯉会の方々にお会いした時、「今

          おわりに-12月の魚病対策-

          鯉と注射法-12月の魚病対策-

          鯉の病気に注射が頻用されるようになってきましたが、一般的には余り勧めたくない方法です。 背や尾筒あるいは胸鰭の筋肉部分に注射し、即効性でかつ、確実な効果を得ようとするわけですが、Aseptic(無菌的な)という概念がマスターされていない場合は注射や手術は思わぬ合併症を引き起こします。鯉の常に水に接している特異性を考えるとき、鯉からの薬物の吸収や、もしこの部分のbarrierがないとするならば、最も安全で確実性のある、そして即効性でも劣らない方法ではないかと思います。 多少

          鯉と注射法-12月の魚病対策-

          イカリ虫を制するもの-12月の魚病対策-

          ここ1〜2年の私の池の病気発生状況は、何といってもイカリ虫によるものが最も多く見られました。しかしこれまで述べてきた、マゾテンの定期投与とその応用によって、後遺症を残すような被害はありませんでした。 多くの愛鯉家からイカリ虫の被害のあったことを聞かされますが、イカリ虫を制するものは鯉の魚病対策の半分は制したといってもよいぐらいの頻度の高いもので、さらにマゾテンや他の寄生虫(ダクチロギルス、ギロダクチリス、エピスティリス、チョウなど)や細菌(カラムナリス菌、シュウドモナス菌な

          イカリ虫を制するもの-12月の魚病対策-

          水温の管理-12月の魚病対策-

          越冬の準備は完了したことと思います。冬期の水温は低くても6℃〜7℃くらいには保ち、5℃以下にならないように注意しましょう。 昨年は、予想外の寒波の襲来で二℃〜三℃になった池もあると耳にしますが、大変危険な状況ですので、気をつけてください。理想的には、8℃〜10℃ぐらいが良いという結論は、既に越冬対策委員会で出されております。 水温が8℃であっても鯉が動いている場合は、麦あるいは越冬用の餌を2〜3日に一度は、多すぎぬよう与えます。冬期は体力を維持する程度ではよく、決して太ら

          水温の管理-12月の魚病対策-

          この頃想うこと-11月の魚病対策-

          私のこの「今月の魚病対策」シリーズもあと12月を残すのみとなりました。いろいろと励ましや質問やらご教示やらいただいた鯉友の皆さんに感謝いたしております。 今にして思いますと、よくも臆面もなくこのシリーズの掲載を引き受けたものだと自分の無謀さにただあきれておる状態です。しかし、私の根底に流れるもの―愛鯉を病気から守るのは愛鯉家自身である―という思想をどうしても捨てきれないために、分不相応を承知で背伸びいたしてしまった次第でした。   愛鯉会の魚病対策研究員会や魚病対策委員会の

          この頃想うこと-11月の魚病対策-

          注意するべきこと-11月の魚病対策-

          人為的な失敗例これまで主として代表的な魚病について述べてきましたが、魚病同様に注意しなければならない人為的な失敗例について述べてみます。 ⑴鯉の飛び出し 治療のために池から小さな薬浴槽に移した場合や、新しい鯉を入池した場合に発生します。ちょっと目を離したスキや、夜間に外へ飛び出して死亡あるいは回復不能な損傷を負います。水面が30〜40センチぐらい低くても、また移した水槽が多少広いといっても安心はできません。簡単なふたなどをしてもはずしてしまうことがありますので、薬浴やでき

          注意するべきこと-11月の魚病対策-

          冬になる前に-11月の魚病対策-

          10月に続いて11月もいろいろと忙しい季節です。いろいろな行事で鯉の出し入れが頻繁となって、かなりのストレスが鯉にかかるわけですが、それにしましても、一シーズンに何度も同じ鯉が品評会に出品されるのを見ますと、本当にかわいそうになってしまいます。 1シーズンに3回も品評会に出された鯉が春先に死んでしまったり、死なないまでもすっかり体調をくずして翌年はもう使い物にならなくなってしまったりという経過をしばしば見たり聞いたりします。鯉は非常に敏感で、神経質な動物です。多くても年に1

          冬になる前に-11月の魚病対策-

          自己採点し自己批判を-10月の魚病対策-

          スポーツや碁、将棋と違って、鯉の趣味は上手、下手が誠に抽象的で、明確に順位がつけられないわけです。ある程度経験すると初級者は中級者のごとく、中級者は上級者のごとく錯覚を起こして天狗になり、俺は俺の好きなようにやるといった気持ちになりがちです。しかし、実際は上手、下手はあるし、厳然たる差が存在するのです。品評会などでたまたま良い成績をとると、錯覚はさらに頑固なものになっていくようです。 愛好家としての力は  ⑴鑑賞力  ⑵池の管理力(水管理)  ⑶鯉の管理力(魚病、餌など)

          自己採点し自己批判を-10月の魚病対策-

          水草の除去と植え替えを-10月の魚病対策-

          さて、寄生虫や細菌の交代期のみならず、水草の交換機ですので、ホテイ草やアヤメ等を利用している方は、葉の先が黄色になってきましたら要注意となります。 4月号で述べましたように、クレソン等と植え替えるとよいでしょう。水草の効果は大きいのですが、逆にこれをおろそかにすると害も大きいものになりますのでご注意ください。

          水草の除去と植え替えを-10月の魚病対策-

          定期投薬も忘れずに-10月の魚病対策-

          マゾテンの定期投与はいつものように月1回行いますが、しばしばこの定期投与の中間にイカリ虫の発生を見ることがあります。 たいてい定期投与が済んで2〜3週間後で、鱗や鰓の充血、立鱗あるいはイカリ虫そのものを見ますが、このときはすぐにマゾテン投与を行ってください。数日で虫っ気がなくなります。 この投与によって、結局定期投与を入れますと2〜3週間間隔で3回の投与を行う計算になるわけです。 薬の投与は、必要上最小限に効率よく投与するのが理想であることは言うまでもありません。現実に

          定期投薬も忘れずに-10月の魚病対策-

          イカリ虫の点検と薬浴を-10月の魚病対策-

          新しい鯉の購入あるいは土池から戻ってきた鯉を池に入れるときは必ずイカリ虫の点検をして、付着しているときはこれを抜き取り、その部位を局所消毒します。 次に、過マンガン酸カリ溶液(2〜5PPM)で三十分ほど薬浴し、池に入れるわけですが、このとき絶対に運搬に使用した水を池に入れないように注意してください。 池の水で作った過マンガン酸カリ溶液のタライに鯉のみを移して薬浴し、次にまた鯉のみを池に入れるようにすればよいわけで、思いがけない外部からの寄生虫や細菌の混入を最小限に食い止め

          イカリ虫の点検と薬浴を-10月の魚病対策-