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2021年7月の記事一覧
冷夏に出会った星の子と
農家のいとこが困るほど
涼しい夏
雨の日に
星の子を拾った
しとしとの雨をよけるように
近所の生け垣で
ひとりでうずくまっていたそれは
星の形をしていて
弱々しく黄色く光っていて
あまりにも星にしか見えない
目も口もあるかわからないのに
わたしを見つめていて
わたしにほそぼそと鳴き声を
投げかけていた
触ったら熱いのかな
思いながらおずおず手を伸ばすと
しっとりとやわらかく
人肌よりすこし熱い
プラスチックモーテル
かいだことのない
コリタスの香りではなく
焼けたアスファルトのたてる
じれたようなにおいが
あてのない真夏の
半月強の旅路を
招き おだて 導く
フライパン並みに熱い
ボンネットにまで
逃げ水が生まれてはしゃぐ
飯もろくに食わず
ルートビアをさんざんあおって
湿布のにおいのげっぷを
後続車に投げ捨てる
やがて追いついた黄昏の伸ばす手は
テールフィンに切り裂かれたのでは
そんな妄想を抱くほどに
ヘ
光と宇宙とコスモロジー
温度の飽和の中に放り込まれる
幾筋もの白い直線たち
出会うやいなや沸きたって
うかれた水分と踊りながら
多孔質へと抱き込みんで
流線型を描いて膨れゆく
正午の光をたたえてゆがかれる光
二分ほどの踊りが終われば
水道水でチルアウト
冷蔵庫には
数時間前に創造された宇宙
濃緑のドレスの宿したゆらぎ
流れから取り出し彫刻された節目
期待のかたまりと小さなものたちが
長い長い共同作業でこさえた
たのもし
(詩)まなつの真実とまみの真夏
まなつとまみは仲がいい
まなつは真夏に生まれたから真夏
冬になったって真夏のまなつ
まみは親の名前を一文字ずつで真実
素直になれないときも真実のまみ
まなつとまみは同じ日生まれ
家ははす向かい
同じ小学校に入り
同じ中学校に入り
高校も同じ
毎日手をつないで
おしゃべりしながら
同じ道を行き帰り
日々のよしなしごとと憂鬱を
ふたりで大事にわけあいながら
まなつには好きな人がいる
まみには言って
あいくるしい あつくるしい
あいくるしい
夏の午前に
あつくるしい
宿題の束
めんどくさい
自由研究
おわらしたい
早いとこ
あいくるしい
かぶとむしたち
あつくるしい
ひと夏の虫かご
めんどくさい
世話をしてても
うごかない
そんな日がくる
あいくるしい
入道雲が
あつくるしい
通り雨
めんどくさい
濡れた服たち
かわかしたい
早いとこ
あいくるしい
露店の金魚
あつくるしい
露店のおっちゃん
めんどくさい
金魚すく