相続人の中に未成年者がいる場合の留意点
先日相続税の申告をさせていただいた今野さん(仮名)は、働き盛りの40歳代で、相続人は奥様と3人のお子さんでした。
当然、子供たちは全員未成年者でしたので、ご葬儀はとても悲しいものとなってしまいました。
今野さんのご相続のように、相続人に未成年者がいる場合に留意しておかなければならない事項をまとめました。
😘特別代理人の選任について
亡くなられた方がお若い場合には、遺言書が作成されていることは非常にまれであり、その場合には遺産分割協議書を作成して、故人の財産分けを行います。
遺産分割協議には、その未成年者に代わって、親権者が法定代理人となって参加し、遺産分割協議書の署名押印も法定代理人が行うことになります。
しかし、次のようなケースでは、いわゆる利益相反関係が生じるため、親権者は未成年者の法定代理人になることはできないため、「特別代理人」を選定する必要があります。
①(今野さんの場合のように、)親権者(母親)と未成年者が(子)がともに相続人である場合
②相続人でない親権者を同じくする複数の未成年者である相続人(子)がおり、そのうちの1人の法定代理人となる場合(1人の子の代理人に離れても、2人目以降の子の代理人にはなれない。)
特別代理人の選任は、親権者が家庭裁判所に「特別代理人選任申立書」を提出して申立てを行います。
特別代理人は、利益相反関係のない親族がなることが多いですが、第三者がなることもできます。
今野さんの場合は、一番上の子の特別代理人に今野さんのお父さん(父方の祖父)、2番目の子に今野さんのお母さん(父方の祖母)、3番目の子に奥様のお父さん(母方の祖父)になっていただきました。
😁未成年者控除について
さて、今野さんの実際の遺産分割協議に関してですが、特別代理人を含めて話し合いを行った結果、子供たちは未成年者でもあるため、全てを奥様が相続することに決まったというお話で相続税の申告の依頼を受けました。
そこで、未成年者控除という仕組みについてお話をしました。
未成年者控除とは、相続または遺贈によって財産を取得した者が、その相続または遺贈にかかる被相続人(=亡くなられた方)の法定相続人に該当し、かつ、未成年者に該当する場合には、20歳に達するまでの年数に10万円をを乗じて算出した金額をそれぞれの相続税から控除する、というものです。
ここで注意すべきは、
①未成年者が「相続または遺贈によって財産を取得」していなければ、未成年者控除は適用できない
②控除を受けることができる金額が、その控除を受ける未成年者の相続税額を超えるときは(控除不足額があるときは)、その控除しきれなかった金額を扶養義務者の相続税額から控除することができる
という点です。
②について今野さんの場合を例にとると、
1番目の子(15歳)が100万円の財産を相続して20万円の相続税が発生したが、未成年者控除額が50万円((20歳-15歳)×10万円=50万円)なので控除不足額が30万円、
2番目の子(12歳)が100万円の財産を相続して20万円の相続税が発生したが、未成年者控除額が80万円((20歳-12歳)×10万円=80万円)なので控除不足額が60万円、
3番目の子(10歳)が100万円の財産を相続して20万円の相続税が発生したが、未成年者控除額が100万円((20歳-10歳)×10万円=100万円)なので控除不足額が80万円、
合計の控除不足額が170万円となり、この全額を奥様の相続税額から控除できるということです。
従って、少額でもいいので3人の子供たちにも財産分けしていただくようにお話ししました。(同じような考え方で、障害者控除という制度もあります。)
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