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海外駐在員の処遇は適切ですか?

 海外駐在員の処遇の見直しを検討する企業から助言を求められることが増えています。
 当社が今年2~3月に行なったアンケート調査の結果では、急激な為替変動や物価高騰などの経済環境の変化に伴い、回答企業の43%が直近1年程度で処遇の見直しを行なっており、加えて31%の企業が今後見直しを検討しているという結果となりました。

※アンケート結果はコチラ・・・ 

 今週はこのレポートをご覧になったお客様から“壁打ち”の依頼を受けてお目にかかりました。

 グローバル企業である同社には常時100~120名の海外駐在員(日本本社からの出向者)がいて、海外駐在手当などその処遇に関する規程類は大手コンサルティング会社のパッケージを導入しています。

 駐在員の給与は本国通貨と現地通貨に分けて支払われており(スプリットペイ方式)、一定割合を超える大幅な為替変動に対しては手当を増減することで公正が保たれる仕組みになっています。

 それもあり、長年にわたって処遇の見直しは行われておらず、特にそれに対して不満の声などは挙がっていなかったとのことです。

 しかしさすがにここ1~2年のような大きな変化は過去にはなく、ここへきて出向者からは見直しの必要性を唱える声が上がり始めたようです。また同社では事業が一層グローバル化していることから、グローバルでの適材適所を促進するという人事方針が決まっており、全世界で報酬を適正化するといった大きな課題もあるようです。

 さて、そのためにどのような制度設計が必要か、報酬額の根拠となる物価変動をいかに定量化するか・・・といった難解な部分は私に手出しができるはずもありませんが、お客様から求められた情報は「各社が制度を企画する上でその礎として持っている“思想や理念”」についてでした。

例えば――
【仕事の難易度についての考え方】
 このお客様は、「海外に赴任すること自体、仕事の難易度が上がるわけですから~」と自然な感じでおっしゃいました。そのことが常に正しいわけでは決してありませんし、そもそも国の内外を問わず事業規模や担うミッションなどによってそれぞれに異なるジョブサイズを適切に評価・価値付けすつことが報酬決定の基本だと思いますが、大事なことはそのコンセンサスがあらゆる議論のスタートであるということではないでしょうか。(特に比較的事例の少ない中堅中小企業)

【安全・健康に対する考え方】
 日本とは生活環境が大きく異なる場合もある海外駐在員やその家族にとって、もっとも優先順位の高い課題は安全や健康ではないでしょうか。現に、海外に従業員を派遣する企業では「安全配慮義務」に対する意識を見直さざるを得ないような判例も示されています。
 最近では感染症の流行やそれに伴う心身の不調が増加したことなどから医療保険のパッケージを見直したり、物価の高騰に伴い、これまでのようにセキュリティレベルの高いアパートに住むことができるよう家賃の上限を高くする例も目に付きます。

【家族に対する考え方】
 駐在員や家族の安全・健康ということの中には、家族の関係性を健全に保つということも含まれます。外資系企業が日本に派遣している駐在員の中で単身で来日しているのは5%未満というデータもあるように、海外の企業(社会)では海外に家族のどちらかだけが赴任するということは自然ではないという常識があるようですが、日本企業から派遣される駐在員(独身者は除く)の3割以上が単身赴任です。

 介護などの家庭事情に加えて、パートナーがキャリアの断絶を防ぐために国内に留まらざるを得ない場合や、子女の教育費が会社から負担されないために単身で赴任せざるを得ない場合など、それぞれの事象をどう捉えるかというとうな正解のないことについて、社内で時間をかけた対話が必要です。(最近では「駐妻(駐夫)」が現地で仕事を行なうことができるよう議論や検討が活発化しています)
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 どのような制度を導入したところでそれは万能ではなく、必ずどこかで矛盾や不満は生じるでしょう。その際、タイムリーに全ての不満を解消することは難しいことですが、変更するにせよしないにせよ、拠り所となるのは思想・理念です。

 制度や算式といったハード面に急いで走る前に、「海外駐在とは」、「従業員の安全を守るとは」、「従業員にとって家族とは」といったそもそもの事柄について、対話に時間をかけることが重要です。













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