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顧客データを会社の血液にしていきたい話
この記事は「PLAID Design Advent Calendar 2024」11日目の記事です。
デザイナーの鈴木(@suk)です。株式会社プレイドでデザイン部門の責任者と、プロダクトアナリティクス「Wicle」のプロダクトデザイナーをしています。
成長に伴う分断に顧客データを通じて共通理解をもたらす
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「顧客データは経営の血液だ」
代表の倉橋がDAY1DAY※というグループ全社が参加する内部イベントで話した言葉です。
事業が成長していくに伴って、事業を動かしていく人も、役割も、所属する組織も増えて、多様な活動が増えていきます。そうした中で、別組織で取り組んでいることが見えにくくなってきたり、協力を得るためのコミュニケーションパスが複雑で巻き込みが難しくなったり、取り組みとして重複、競合するような活動が生まれているシーンを目にされたことはないでしょうか?
同じ会社で、同じミッションを追い求めているはずが、それぞれの組織ごとに役割や優先したいことがあり、そうではないように見えてしまう。考えている時間軸、守りたいこと、これまでの文脈、様々な前提が入ることで目先での連携が難しくなっているように感じてしまう。
私たちの体を巡る血液は、各器官に必要な酸素と栄養を届け、不要な物質を運び出します。この絶え間ない循環があってこそ、私たちは健康な生活を送ることができます。倉橋は、企業における顧客データも、健全な活動を持続させるための血液のような存在であるべきだと考え、冒頭の言葉を発したのではないかと感じています。
顧客データをまさに血液のように循環させることで、各メンバーそれぞれの専門性や創造性が発揮され、より大きな価値を利用者に提供していけるようになる。そうした状態に繋げるために、顧客データを通じた共通理解の基盤を作りたいという話をします。
※ 毎日がDay OneだというAmazonの考えをリスペクトし、毎年の創業日前後で自分たちのミッションに向き直るためのイベント。詳しくは参考URLをご覧ください。
組織構造により起きる顧客理解の分断
企業が知ることができる顧客データには定性、定量含め様々なものがあります。この記事の文脈では特に顧客インタビューやプロダクトフィードバックなどの定性データや、サーベイのような構造化されたデータに焦点を当てていきます。
私たちが、私たちの顧客を知るために取り扱うことができるデータには、例えば以下のようなものがあります。
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サービスについてお問い合わせいただいたお客様との商談のログ
ご利用いただいている企業との定例ミーティングのログ
契約に至らなかった理由についてお聞かせいただけること
プロダクトにお寄せいただくフィードバックやリクエスト
チャットサポートにお寄せいただくお問い合わせの内容
NPSなど定期的に投稿いただくスコアや自由回答の内容
契約更新に至らなかった理由としてお聞かせいただけること
SNSやレビューサイトに投稿されている利用者の声
マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトとそれぞれの組織が関わる顧客接点ごとに、人やサーベイを介して、必要な範囲の様々なデータに触れられている状態です。一方で、余すところなく活用できているかというと、まだ余地がある状態と感じています。
施策をしたチームでの活用はできているが、チームを超えた共有や活用に至れていない
過去に集めていたデータを活かすのが難しい
集め方がバラバラで、横断して分析するには難易度が高い
インタビューやサーベイに回答する企業の視点だと、あらゆる接点で多種多様な情報提供をしている一方、受け取る私たちの視点だと、自分たちが認知できている施策の範囲でしか顧客を知ることができず、組織構造など企業の事情により、顧客を知る手掛かりの分断が起きていると感じています。
分断されたデータを束ね活動に繋げるための3つのアプローチ
顧客接点により分断されたデータをつなぎ、1つの顧客像として理解できるようにする。または、1つの課題を様々な顧客の視点で理解できるようにする。そうした顧客理解を深めていくために、どのようなことができるでしょうか?
私たちは、以下で紹介する3つのアプローチができるのではと考えています。
必要な時に必要な過去データにアクセスできるようにする
データの文脈ごとに適した活動に繋げられるようにする
顧客の認知をレイヤリングし定点観測できるようにする
1. 必要な時に必要な過去データにアクセスできるようにする
顧客インタビューは毎回新しい気づきや課題を発見できる機会です。それに対して、実施には調査設計からリクルーティング、環境の準備、実査、分析、レポーティングまで、多くの労力がかかります。
自立分散した開発チームでパラレルにインタビューをすることで、自分たちが直接的に必要となる情報を知ることができる一方で、得られた発見の中には、過去に別のチームが発見していたもの、発見には至っていないがログに埋まっているものもあるのではないでしょうか?
各チームで実施しているインタビューなどの取り組みを、他チームが適切な権限管理の上でアクセスしやすい場所に、 キャッチアップしやすい形式でストックしていくことで、必要な人がロールを問わず顧客の今に対する解像度を高めることができ、それぞれの組織で打ち手を考えていくことにつなげていけるのではないかと考えています。
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ツールが進化し、CentouやDovetailのようなインサイトリポジトリのようなプロダクトも広まってきています。こうしたツールや、Notionのようなデータベース系のツールを活用することによって、チームを横断したデータの集約管理と、過去の気づきをもとにした素早い意思決定、得られた気づきをもとに注力ポイントを見定めた筋肉質なインタビュー実施につなげていけるのではないでしょうか。
プレイドのデザイン組織では、Notionを活用し、前述の「データソースの文脈」ごとにデータをストックできるDBを構築することによって、適切な活動に繋げやすい形で定性データを積み上げることにトライしていこうとしています。
2. データの文脈ごとに適した活動に繋げられるようにする
顧客データは、データを知る際の文脈・状況に応じて解釈が方向づけられると考えています。
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商談ログ:利用前期待値、抱えている課題
プロダクトフィードバック、NPS(ネガ)、レビュー(ネガ):期待とのギャップ
失注要因・解約アンケートログ:許容できなかったギャップ
NPS(ポジ)、レビュー(ポジ):価値を実感した要素
レビュー(ポジ・ネガ):他社比較による相対評価
さらに、解釈されたグループごとに接続できる活動が分かれてくるように思います。
利用前期待値、抱えている課題
サービスサイトや提案資料のコミュニケーションメッセージ
期待とのギャップ、許容できなかったギャップ
プロダクトの新機能アイデアや改善方針、事前コミュニケーションの期待値調整の度合い
クリティカルなギャップを解くためのオペレーション改善やチームの組成
価値を実感した要素
プロダクト改善に対するリソース配分の調整、マーケティングメッセージへの反映・改善
他社比較による相対評価
サービスサイトや提案資料のコミュニケーションメッセージ
データソースの内容に注目し、同じ解釈ができるデータ同士をグルーピングすることによって、接続する活動だけでなく、あるべきデータの置き方やコミュニケーションの流れも思い描くことができてくるのではないかと感じています。
3. 顧客の認知をレイヤリングし定点観測できるようにする
顧客データは読み解いてアクションに繋げて終わりではなく、アクションの結果として顧客の認知がどう変わったか知るところまで進められてサイクルが1周すると感じています。
そして、ブランドやプロダクトの特性をもとに幾つかのレイヤーに分けて顧客認知を調査することで、適切に現状把握ができると考えています。
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ブランドに対して想起するイメージ
プロダクト利用に至るジャーニーで感じる価値要素
プロダクト利用中に感じる摩擦
既に他部門で実施してくれている調査も含め、問いをレイヤーで分けて構造整理し、定期で実施していくことによって、ブランドやプロダクトに対する認知がどのように移り変わっているのか、トレンドとして改善しているのか悪化しているのかの把握が可能になり、状況に応じた意思決定やリソース配分の調整を進めることができるのではないでしょうか。
必要な人がロールを問わず顧客の今に対する解像度を高めることができ、各組織で打ち手を考えていくことにつながる。そうした環境を作れないかと思い、デザイン組織と社内のいくつかの組織とが連携し、まさにこれからデータの集約を進めていこうとしています。
チームカルチャーを活かすプロセスが優位性をつくる
進めていく上で越えていきたい山は少なくないように感じます。例えば、これまで各チームで個別最適に管理していた顧客データを一元管理したり、共通の軸で分析できるようにするためには、ストックするためのツールを統一し、ログなどの貯め方も合わせていく必要があると思います。
一方でチームとしてはこれまでのやり方を変えるほどのメリットを短期的には感じづらく、ユーザーへの価値を少しでも早く届けるためには、現状のオペレーションを維持したほうがいいと感じられることは自然なことです。
トップダウン的アプローチでツールやストックの仕方を統一する進め方もあるかもしれませんが、顧客理解の活動は定常的に実施され続けていることが重要です。強引なプロセスでは共感が得られずデータがストックされない、ツール移行の意思決定ができずに結局分断が起きるということにつながりかねません。
もし、チームが積み上げてきた慣習や、どこまで歩み寄れるかの対話や検証を通じて、チームの良さを生かせる適したプロセスを設計できることができたら、容易に模倣出来ない強いオペレーションになっていくのではないか。チームとの連携を通じてそうしたプロセスを探っていけないかと考えています。
「顧客データを企業の血液にする」ための基盤を作る
事業や組織が大きくなり、目的が細分化され、組織の力学が複雑化していく中でも、共通の視点をもたらせるものは顧客理解でしかないと感じます。
それぞれのチームの視点で顧客データを活用することにとどまらず、折角なら血液を広く素早く循環させ、より良い活動をしてけるようになるような仕組みを作る。それがデザイン組織として次に取り組みたい大きなテーマだと考えています。
来年の今頃にまた、サイクルを回してみた結果や気づきをお伝えしたいと思いますし、既に近しいことに取り組まれている方がいらっしゃいましたら、情報交換させていただけると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!👋🏻
PLAID Design Advent Calendar 2024 12日目は、Satomi Hagiyaさんによる、「デザイナーとして自信が持てなかった私を救った「弱い自分を愛でる」という言葉」です。 お楽しみに!!