メルカリにおける人事データ活用の現在地点
今回ご登壇頂いたのは、株式会社メルカリでHR OperationsのManagerを務めている岩田翔平さんです。
岩田さんは、前職のエン・ジャパン株式会社で転職サイトのプロダクトマネージャーを従事された後、株式会社メルカリに転職され、現在は株式会社メルカリ内での人事システム導入やデータ活用強化をご担当されています。
今回は、HR Tech Conferenceの内容も踏まえ、岩田さんのご担当されているお仕事について、「メルカリにおける人事データ活用の現在地点」をテーマにお話頂きます。
※本記事は、2020年11月30日に開催されたHR Millennial Lounge#12」のイベントレポートとなります。(テーマは「HR Tech Conference 2020から考えるHRテクノロジー最新動向と活用のポイント」になります)
はじめに
メルカリでHR OperationsのManagerをしています岩田と申します。
私はHRTechの導入やEmployee Experienceの改善、人事データ分析基盤の構築等を担当しています。
また、前職はエン・ジャパン株式会社で転職サイトのプロダクトマネージャーを担当していました。
前職はプロダクトマネージャーを担当していたので、人事のスペシャリストというよりは、拡大する組織の中で派生する人事の横断的な課題を解決していくゼネラリスト的な役割を担ってきました。
メルカリの中でも、システム導入やデータ活用を強化していくことが必要ということで、私の所属しているグループが形成されました。
本日は、組織の拡大やコミュニケーションの変化に、人事データ活用の側面からメルカリがどのように対応しているかをお伝えさせて頂きたいと思います。
人事データ活用はあらゆる施策の実行・システム導入の基盤に
初めになぜ人事データ活用なのか?についてお話させて頂きます。
こちらは今回のHR Tech Conferenceで、ジョシュ・バーシン氏が発表していた資料を引用させて頂いているのですが、「あらゆる施策の実行やシステムの導入を行うために、まずは標準化された人事データ整備及び活用をしていくことが必要」だと理解しています。
実際、いざツール活用や施策を実施する中で、データ基盤がしっかりしていないことにより、人事データを活用できないということは良く起きるケースですので、今回は人事データ活用にフォーカスしてお話できればと思っていります。
実際どれくらいデータ活用ができているのかというと、登山でいうところの3合目くらいだと思っています。
データ活用をしていくことで今後様々な可能性が広がっていくとは思いますが、現段階ではプロセスやシステム構築、可視化の段階で、まだまだ序盤かなと思っています。
ただ、三合目と申し上げましたが、序盤の取組の善し悪しで今後どれだけ高く登れるかが決まってくると考えているので、本領域に注力しています。
弊社における人事データ活用についてお話する上で、弊社の組織状態について触れた方が課題感がより伝わるかと思いますので、改めて弊社についてご紹介させて頂きます。
弊社は、「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションを掲げており、ミッションを達成するために存在するバリューとして、「Go Bold」、「All for One」、「Be a Pro」の3点を大切に活動しています。
特徴的なのは「世界的」というキーワードに現れており、プロダクトを作る・仕組みを作るという点について、今後世界規模でスケールして行けるかを基準に考えています。
事業としては日本のメルカリ、USのメルカリ、メルペイに加え、最近では鹿島アントラーズの経営も行っています。
急速な組織拡大による変化で、データを基にした意思決定・コミュニケーションが不可欠に
さてこれから、メルカリHRの置かれている状況について3点に絞って説明します。
1点目に急速な組織拡大をしているということです。
直近はなだらかな増加となってきていますが、創業から一気に2000名近い組織まで急拡大しています。
そのため、組織の拡大にシステムや仕組みがまだまだ追いついていない状況です。
2点目に組織の多様性が急速に高まっていることです。
特徴的な数字をご紹介させて頂くと、東京オフィスで働く社員の国籍数は約40か国、エンジニア組織で約50%が外国籍の社員になっており、外国籍メンバーの割合が増えている状況です。
人事にも影響が大きいのですが、社内の言語は日本語と英語が混在しており、エンジニア組織では英語が標準となっています。
規模が大きくなって、組織に多様性が生まれるとどのようなことが起きるのかというと、コミュニケーションをハイコンテクストからローコンテクストに変えていく必要があります。
これがメルカリの置かれている状況の3点目となります。
これまではリファラル採用を強化し、経歴が似たメンバーを集めていたため、いわゆる空気を読む・個別判断をすることがうまくいっていました。
しかし、急速に組織が大きくなったことで、これまでのハイコンテクストで伝わることが難しくなり、ガイドラインに基づく判断が求められたり、データ・ロジックを示した円滑なコミュニケーションも重要になってきています。
ここまでがメルカリにおける大きな変化となっています。
その上で、メルカリにおけるHRの役割も大きく変わってきていて、データを基にした意思決定とコミュニケーション、プロセスの設計が必要になってきます。
先ほどのハイコンテクスト・ローコンテクストの変化に関する話に関連していますが、どのような施策を行う上でもデータを基に施策を考えることが基盤になっていないと、今後のスケールに繋がらないと考えています。
データ活用の実現に伴い専門組織「HR Operations」の立ち上げ
課題感としては前述の通りなのですが、実際にデータ活用をしようとした際のデータ状況が下図となります。
本図の縦軸に人事データの種類、横軸に入社・職場環境等の社員の体験を記載しているのですが、様々な種類のデータベースが存在していたりスプレッドシートでデータ管理をしているものもあったりと、必要なデータをすぐに見つけることができない状況でした。
また、データを連携しようにもデータベースごとの定義が異なっており活用できなくなっていました。
この事象は弊社だけでなく、恐らく急成長する組織では起こりうる、あるあるの事象ではないかと思います。
このような課題に対して、冒頭お伝えした通りメルカリではHR Operationsという組織を立ち上げています。
データを重要視していく上で、HR Operationsとしては、
・人事データが正しくインプットされる滑らかなプロセスを構築
・意思決定を効果的に行えるデータをアウトプットする
という2つの役割を担っています。
そのため、HR Operationsという組織は、システムや仕組みを構築する「HR Information System」・データを活用をメインとした「HR Data Management」という2つのチームで構成されています。
HR Operationsでは、メルカリのミッションを人事データ活用で支えるというのがミッションになっています。
プロセス構築とシステム化が人事データ活用の第一歩
弊社の中では、人事データを活用するため、①意思決定精度、スピードの向上、②従業員体験の向上、③人事業務の効率化、ガバナンス強化、という3つの柱を掲げています。
その上で、どのように人事データ活用をしているかというと、以下6つのステップに基づき進めています。
1. プロセス構築
2. システム化
3. 可視化
4. クロス分析
5. 統計/機械学習分析
6. アクションレコメンド
最終的に、上記の4-6のような分析の高度化を見据え、まずは1-3のプロセス構築・システム化・可視化に注力して取り組んでいます。
EX Journeyを基にプロセス構築し、データの一元管理を実現
実際にどのようにプロセスを構築していくかというと、メルカリではEmployee Experienceを大切にしているため、全社で実現したい従業員体験を可視化しています。
その上で、Employee Experienceを基にタッチポイントを整理し、HRISのチームを中心にモジュールを導入し、どのような人事プロセスを体験をしてもらうかを設計しています。
先ほどご紹介した、バラバラになっている人事データをどのように統合しているかを表したのが上図です。
人事データ統合のために、基幹システムを導入してデータの一元化を推進しています。
こちらに表しているのは一部となりますが、Operation・Personalの領域ではWorkday、学習ツールではLinkedIn Learningを用いて、あらゆる接点で学習を実現、感情の変化(Sentimental)という点ではQualtricsを用いて、領域ごとにデータが可視化されるようにしています。
一部モジュールは計画中なので、まだ完全にはデータの一元化が完成してはおりませんが、このような進め方で着実に進んでいっています。
分析・活用のレベルを上げ、精度の高いアクションレコメンドの実現へ
今後はステップ4.5.6のクロス分析・統計/機械学習分析(予測分析)・アクションレコメンドへと移行して行きたいと思っています。
しかし、まだ前段のプロセス構築・システム化・可視化でもやるべきことがあるため、いきなり高度化には進まず、データを標準化した上でレベルを上げていきたいと考えています。
具体的には、やはりアクションレコメンドまでやっていきたいと考えています。
先ほどご紹介した、Operational・Personal・Sentiment・Activityのデータが整備され、連携されることで、様々なアクションレコメンドを実現できるようにしていきたいと考えています。
まとめとなりますが、人事データを効果的に活用するためには、①データのインプットとアウトプットはセットで考える、②実現したいEXを基にプロセスを構築する、③標準化したデータを基に分析の高度化に取り組むことの3点が重要だと考えています。
最後にご案内となりますが、今も積極的に採用募集していますので、ご興味持って頂けたら、是非ご応募いただけると嬉しいです。
本日はご清聴頂きありがとうございました。
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