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【教育】話を「聴く」ようにしたら子どもとの関係がよくなった

昨年度、育児休業を取っていたときのこと。
「話を聴く」
ということについて、ある考え方に出会った。

僕たちは、悩んでいる人の役に立って問題解決をしたいがゆえに、話してくれた悩みに対して、つい、解決して終止符をうつような、処方箋を出すような聞き方をしてしまう。
けれども、相手は話を聞いてほしかっただけだったりする。
これは、話し相手がいないという孤独のサインで、孤独を解決したいという思いの表れである。
しかし、解決策を与えてしまうと、その人にとっては相談することがなくなってしまうので、孤独が維持されてしまう。
そうではなく、つながりが求められている。
相手から、有意義な情報を抜き取る技術よりも、「この人とは繋がっているから、また相談しよう」と思ってもらえることを大切にしたい。

東畑開人さんの発言より引用

確かに、同僚の相談に解決策を示して「あとは一人でやってね!」と終わりにすることがある。また、子どもの話を聞いていて、「それで、用件は何!?」と尋ねてしまうこともある。そうではなくて、同僚にも子どもにも、「ただ話を聞き、繋がっている」だけでよかったのかもしれない。

「必要な情報を抜き取り、解決策を与える」聞き方になってしまうのはどうしてだろうか。「ただ聴く」ことが難しいのはどうしてだろうか。

僕が考えるに、その理由は、聴く時間がないことに尽きるのかと思う。限られた時間のなかで効率的に仕事を進めようとするあまり、同僚との何気ない会話にまで目的意識をもつようになり、できるだけ短く終わらせるように考えてしまう。

子どもの悩みを聞いたときには、悩みに対して「こうしたらどうか」とアドバイスしたくなるし、「友達から嫌なことをされた」と言われたら、その相手を呼んで話し合って解決したくなる。

学校は「保護者に対する説明責任」を果たそうとするあまり、解決を急いでいることもあるだろうが、いずれにせよ、「ただ話を聴き、繋がっている」ことは結構難しい

育休中だった僕は、「職場復帰したら東畑さんの話の聴き方を実践してみよう」とぼんやり思っていた。

今月のこと。
4時間目が終わったころ。どの学年も給食の準備をしているなか、2年生の男の子が廊下に立っていた。

どうしたのか気になって近くまでかけ寄ってみた。男の子の表情はすぐれず、下を向いている。聞いてみると、次のように話してくれた。

・2年生は教室の入り口にある九九表を唱えてから教室に入るようになっている。
・九九が苦手で〇×2までしか分かっていない。
・そこに同級生2名がやってきて、「そんな簡単なのもできないのか」と言ってきた。
・そのことが嫌で、もう教室に入りたくない。

担任のときならば、相手の児童を呼んで、事実を確認して、謝らせようとしていたかもしれない。けれども、僕はいま、担任ではないので、今までとは違う対応をしてみようと思った。

①「話をそのまま聴き、気持ちに共感する」
 こちら側の解釈は一切入れない。

②「話を聴いていて分からないことは質問する」
 共感したいという気持ちがあったので、質問は次々と出てきた。

③「解決策を与えない」
 「気持ちが落ち着いたら給食を食べよう!」とだけ言って、教室に送り出した。

**

次の日のこと。
その男の子は僕を見つけるなり、かけ寄ってきた
どうやら、クラスを変えたいらしい。
さすがにそれはできないので、気持ちだけ受け止めて教室へ向かわせた。

その次の日のこと。
また男の子が近づいてきた。
早く高学年になって、僕の授業を受けたいとのこと。
そんな会話を楽しんで、さよならした。

その後も、職員室に訪ねてきたり遠くから手を振っていたりする男の子。
もしかして、僕との距離が縮まっている
ただ、話を聴いただけなのに。
問題も解決させていないのに。
東畑さんが言うように、「この人と繋がっているから、また相談しよう」と思ってもらえたのだろうか。

***

子どもに指導しないことは少し勇気がいるが、僕の実感としては、子どもの話を聴くだけでよかったことが多い。

例えば、担任不在で入ったそうじのとき。
女の子が僕に「男の子が腕をたたいてきた」と訴えてきた。
男の子は近くにいた。僕の顔を見て、ごにょごにょつぶやいてごまかしている。
以前の僕だったら、別室に連れて行き、二人から話を聞き、謝らせただろう。
女の子に「男の子と話してみる?」と聞いたところ、「別に大丈夫。痛くなかったし」とのこと。
話を聞いて欲しかったのだな、と思う。
こちらが先回りして問題解決を急ぐことも必要なかったりする。

それにしても、どうして余裕がなくっているのだろうか。
学校はもっとゆったり教師と子どもが関わった方がいい。
「話を聴く余裕」を取り戻しませんか?


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