インドのトリヴィア(その3:最終回)

得意ではないインドに寄り道してしまったのでこれが最終回。日本人にも少しは馴染みのある事柄とする。

 

1.世界三大宗教の虚実

世界四大文明という用語は中国と日本でしか使っていないと先般書いた。同じように世界三大宗教・・キリスト教・イスラム教授・仏教・・というのも日本でしか通用しない。


東京都立大の地理の教授で世界に詳しく英語の著作も多い方が「日本人は三大○○が好きだけけど他の国は聞いたことがない」と言われていた。中国は宗教が曖昧=ばらけているので、宗教人口から言えば、キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教になる。実際は以下のとおり。

1位:キリスト教、2位:イスラム教、3位:無宗教、4位;ヒンドゥー教、5位:仏教 


「いやいや、ヒンドゥー教はインドだけで、世界宗教という用語があるよう世界的に広がっているという意味での世界三大宗教でしょう」、というのは日本人の論理でしかなく三大というものはない。

 

2.大乗仏教と上座部仏教の虚実

嘗ては大乗仏教と小乗仏教と日本では書かれていたが、小乗仏教は大乗仏教から見た蔑称なので、今では上座部仏教になったと多くの人が理解しているであろう(当然ながら釈迦=仏陀が起こしたのは小乗仏教となる)。


しかし今ではこれも正しくない。大乗仏教以外の多くの部派に分かれた仏教は「部派仏教」といい上座部仏教(スリランカが母体)はその内の一つである。 



大乗仏教は実体的にはクシャーナ朝(イラン・アーリア人(またテュルク人)の王朝)で成立したといってよく、インド人が創ったものではない(前回書いたようその中心地のガンダーラは今のパキスタン)。

 

3,ゾロアスター教とインド

ゾロアスター教の説明をし出すと長くなる。【参考】でポイントを参照願うとして、インドとの関係について。

インドとゾロアスター教と何が関係あるのか?と思う人が多いのではないだろうか。実はゾロアスター教の世界最大のコミュニティはインド亜大陸西南部、端的に言えばムンバイ(ボンベイ)とその周辺地域にある。


ここのゾロアスター教徒は(恰も隋唐時代のソグド人のように)商売が上手かったようで多くの財閥を生んでいる。中でも最も有名なのはタタ財閥(正しくはターター。グジャラート語で短気者という意味らしい)。



日本の世界史において、英国は、インドのアヘンを中国に、中国の茶・絹を英国に、英国の工業製品(綿製品)をインドへ、という中国・インドから見ると酷い三角貿易をしたように教えていたと思うが、この三角貿易を考え出したのはインドのゾロアスター教徒の商人である。今の中国でも三角貿易にインド人が関わってきたことが分かってきたらしい。

ただでさえ中印は仲が良くないのに更に悪材料?


因みにインドのゾロアスター教徒の著名人として、指揮者のスービン・メータ、Queenのフレディ・マーキュリー(本名ファッロフ・ブルサーラー)がいる。


 

【参考】ゾロアスター教のポイント;

①開祖のザラシュトラ(ドイツではツァラトゥストラ)は想定ではウズベキスタン近辺生まれのアーリア人である。

②仏教がそうであるように多数の派生があり一括りにできなく、決してペルシアだけの宗教ではない。中国に入って祆教(拝火教)と呼ばれたものは、ペルシアのゾロアスター教と同じではない(ソグド人のゾロアスター教である)。

③ザラシュトラは紀元前15-10世紀位の人ではと想定されている。キリスト教、イスラム教に先行し死後の審判や世界の終末思想を創出した。

④善の神=アフラ・マズダー、悪の神=アーリマンと教科書に書いてある。アーリマンではなくアンラ・マンユが本来正しい。アーリマンはアンラ・マンユのパフラヴィー語(ササーン朝ベルシアの公用語)のアフレマンから来ている。パフラヴィー語を使うのならアフラ・マズダーはオフルマズドにしないと平仄が取れない。


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