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水害からの復活を期待する熊本県人吉市

1.人吉市の地理的位置
熊本県南部にある球磨地方の中心地で鹿児島との県境にある。九州縦貫自動車道ができるまで、人吉の人々は例えば東京との往復で飛行機を使う場合、鹿児島空港を使う方が便利だった(鹿児島空港自体が鹿児島市内から可成りの距離がある霧島にあるということも関与している)。
人吉は周囲を山に囲まれた盆地である。秋~冬の朝は市内を流れる球磨川から朝霧が発生することでも知られる。

【図1:熊本県内に置ける人吉の位置】
熊本県リンク集(省庁・市町村)に掲載されている地図を筆者加工

2.人吉市の歴史概要
人吉市は小規模ながら小京都ともいわれ、人吉城址(人吉城は繊月城という呼称がある)もあることから歴史ついて簡記しておきたい。この地は嘗ての相良藩(人吉藩が正しいよう乍ら、相良藩で通っている)の城下町である。従って町名に紺屋町、鍛冶屋町など町名が残り、実際に鍛冶屋もまだある。治めていた相良氏は鎌倉時代の地頭から始まり明治維新まで大名であった。歴史に詳しい人は田沼意次の所領地、遠江の相良藩を思い起こすだろう。
ルーツは遠江らしい。

3.人吉の観光資源・特産
筆者は中学時代に1年9ヵ月住んでいた他、2010年以降も4-5回行っている。観光資源のWeb情報は後掲するとして自ら考えるものを挙げる。
(1)美人の湯と言われる温泉地
入ると肌が滑々とする温泉である。「火の国熊本」と言われるように温泉はかなりの数があるが、代表地は次の3つである。
①菊池川沿いの温泉群(上流から菊池・山鹿・玉名)
山鹿は山鹿灯籠踊り、八千代座で全国的に有名
②人吉温泉
③阿蘇の黒川温泉(地元では新参者で県外・九州外の客向け)
湯質評価は①と②で甲乙つけがたいという評価もあるが、風光明媚さという意味では人吉が上であろう。
(2)日本三急流・球磨川の川下り
(3)川魚の恵・・鮎とうなぎ
①鮎・・球磨川および支流での鮎漁は全国でも有名
毎年1月に開催されマスコミで取り上げられる新宿京王百貨店「全国の駅弁と旨いもの大会」に熊本代表として人吉の「鮎の姿寿し」がよく出ている。鮎と言えば塩焼のイメージがあると思うが、珍味の「うるか」や干した鮎の甘露煮もある。
②うなぎ
市内に有名店が2軒あり、午前10時の開店前から多くの行列が出来ている。市外、他県からの客が殆どと思われる。東日本のように蒸さず、且つ天然の鮎なので弾力がある。

【図2:上村うなぎ店の2段重ね鰻重(筆者撮影)】

(4)国宝「青井阿蘇神社」
(伝)大同元年/806年創建とされる。2023年に「通潤橋」が国宝になることが決まったが、それまでは熊本唯一の国宝であった。全国有数の由緒を持つ阿蘇神社の3大神社の一つである。尚、加賀・前田家と並ぶ2大美術品蒐集家として知られる肥後・細川家は国宝を多く保有していたものの、東京の永青文庫に収蔵されているため熊本の国宝になっていない。

【図3:青井阿蘇神社(筆者撮影)】

(5)工芸品「キジ馬」
くまモンが今や熊本県のシンボルであるよう人吉のシンボルはこれである。平家落人が作り始めたとの謂われあり。人吉出身者に寄れば、東北のこけしが東の横綱ならキジ馬は西の横綱とのことである。人吉土産に止まらず熊本土産の定番である。キジ馬と合わせて作られている花手箱は女性に大変喜ばれる。筆者は実際に工房を訪れたことがある。

【図4:キジ馬の親子と花手箱(筆者撮影)】

【図4:キジ馬の親子と花手箱(筆者撮影)】

(6) 日本最高の米焼酎・球磨焼酎
人吉に限らず、球磨地方は米(のみ)から造る米焼酎・球磨焼酎で知られ、球磨焼酎酒造組合のWebサイトを見ると27蔵がある。
https://kumashochu.or.jp/ (球磨焼酎酒造組合ホームページ)
米焼酎を造っている蔵は全国各地に散在するものの、これだけ集中しているところは他になく、米焼酎の最高峰が球磨焼酎であることに異論を唱える人はまず居ないと考える。人吉市内には無料で全銘柄を試飲可能な蔵もある(筆者は2ヶ所に行ったことがある)。ついでながら、国内の低迷に比して海外輸出が伸びている日本酒に鑑みれば、米焼酎が一番日本酒に近く海外での拡販余地があると筆者は考える。

【図5:伝統酒器「ガラとチョク」(筆者撮影)】


<参考>人吉温泉協会人吉観光案内 https://hitoyoshionsen.net/ 

4.最後に・・2020年水害について
2020年7月の集中豪雨で人吉・球磨地方は壊滅的な打撃を受けた。国宝青井阿蘇神社も水没し、有形文化財指定の温泉宿群も2階まで浸水した。復旧はかなり進んだものの、肥薩線復旧は全く白紙の状態で人吉駅はクローズしたままである。全国にも知られた駅弁売り(前述鮎の姿寿し弁当など)もなくなっている。人吉市が開示しているデータ(2021年まで)で観光客が大幅に減っていることが分かる。幸い九州新幹線の新八代から高速バスが出ていて嘗てのJRを使う旅程より大幅な短時間で人吉まで行ける。早期の観光回復を望んでいる。

【表1:人吉市観光客数推移(人吉市公開の統計情報より筆者作成)】

周知のとおり、凍結されていた川辺川ダム建設の検討が、水害を契機として再開された。参考までに水害にかかる地理的な情報を以下に付しておく。

【図6:球磨川・川辺川と人吉・球磨地方】
【図7:球磨川と川辺川の合流とダム建設】

以上

追記
2024/1/6付の日経土曜版「プラス1」の何でもランキング「温泉地 文豪気分で散策」で人吉は西日本で5位。
城崎・道後・有馬・湯布院・人吉がランク入り。山頭火と与謝野鉄幹・晶子のお陰?
筆者が2023年3月に撮影した人吉の風景↓
https://photos.app.goo.gl/EUAgEEDzxKjgNXoN8

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