宅浪したい人たちへ 宅浪という名の悪魔
コチラの記事では,私も経験した自宅浪人,いわゆる「宅浪」について書こうと思います.
宅浪の定義から,やるべきかそうでないか,宅浪を成功させるコツはないのか?みたいな話で構成していきますのでお付き合いください.
※忙しい人はタイトルと太字部分だけ読めばOK
宅浪を定義する
まず,塾や予備校,通信制教育の類を“一切”利用せずに過年度生として受験勉強をすることを宅浪と定義しよう.
私の話をするので,自分の経験から定義させてもらっている点はご了承願いたい.
ちょっとした夏期講習や通信教育,期間限定の予備校通いなどお金を払って教育を受ける類のものに一切頼らない浪人生活を宅浪としている.
筆者の宅浪はどのようなもの?
私が宅浪を経験したことには既に触れているが,その内容を簡単に紹介したいと思う.長々と書いてもアレなので,まずはエッセンスを箇条書きにする:
現役時代は神戸大学を受験,前後期ともに失敗
父,弟との三人暮らしで世帯収入200万円台と経済的余裕がなく宅浪生活開始
1年の宅浪ののち,大阪大学を受験,前後期ともに失敗
さらに1年の宅浪ののち,京都大学を受験,合格
こんな感じである.実は2年も宅浪した(変態)のである.思い切りは良い性格なので,宅浪自体は抵抗なく受け入れて勉強開始.参考書を見ながら勉強方法を開発・マイナーチェンジして実力を高め,ついでに志望校を神大→阪大と上げて失敗.相当落ち込んだものの追加1年の宅浪を決意.さらに志望校を阪大→京大と上げ合格,という流れであった.ここで細かい勉強法に触れることはしないが,続く記事で詳細に解説する機会を持とうと考えている.一年目の阪大の失敗は痛いが,最終的に京大に受かったことでギリギリ帳尻を合わせた形になっているのではないだろうか?
宅浪はすべき?
いきなりのちゃぶ台返し風で申し訳ないが,私の考えでは,宅浪はできる限り回避するべき!ものである.一見すると,宅浪には少なくないメリットがあるように思える.
お金が(ものすごく)節約できる
時間を(ものすごく)自由に使える
受かった時に(ものすごく)スカッとする
などであろうか.筆者もこれらを享受した.だが,これらのメリットは合格を掴み取ってこそ初めて享受できるものであり,宅浪を選択すること自体がその合格を遠ざけてしまうという大きなデメリットを抱えていることもよく理解しておく必要がある.宅浪は“超”ハイリスクハイリターンと言えば良いだろうか.
もっとはっきりいうと,家計に余裕がなかったり,そのほか特殊な事情を抱えていない限り塾や予備校に頼った浪人生活を送るべきだと思う.その理由は,次に挙げる宅浪の難しさである:
朝起きてから眠るまでの生活を自分で,少なくとも1年間,管理する必要がある
勉強プランを自分で作成・実行する必要がある
まず,受験勉強以前に「1」という困難さがある.宅浪が始まると,起床,朝食,勉強開始,勉強終了,休憩,夕食,入浴,就寝,休日設定,…といった勉強・生活スケジュールを年間通して自分で決め管理する必要が出てくるのである.
前年度まで高校生であったなら,学校のリズムに合わせて生活のサイクルが自然というかほぼ強制的に決まってしまうことはよく知っておられることだろう.これは一見窮屈であるが,ひとたび学校という枠組みから解き放たれてしまうと逆に自由度の多さに困ってしまう,というのが経験談である.
そして,この生活管理をさらに難しくするのが各種の誘惑である.ネットゲームに興じる,アルバイトで金を稼ぐことを覚える,異性(じゃなくても)との交際に時間を使う,…などは学校に通っていても生活に影響を与えうる強力な誘惑である.そのような強力な誘惑に,少なくとも1年間,1人の力で耐えなければならない.
生活管理ができることは,悲しいことに困難な大前提となる.そして,たとえ運良くそれがクリアできたとしても,次の困難である「2」の勉強プラン作成・実行も同時にうまくやり切らなければならないのである.昨年度まで相談に乗ってくれていたであろう高校の先生は,おそらく新年度に新たな学年を迎えている.そうなると,卒業してしまった浪人生に割くことのできる時間は限られてしまう.というか下手すると相手にもしてもらえない.この状況はかなり過酷であり,志望校の試験問題を突破するのに必要な力を自分1人で身につけなければならないということなのである.入試問題は,どこかの賢いおっちゃんおばちゃんが必死こいて作っている.そのように知恵を絞って作り上げられた問題を18,19歳程度の若者が単独で突破しなければならない,と言えば難しさが伝わるだろうか?
以上のように,宅浪とはかなり無茶な戦いで,その完遂に相当の精神力を要するのである.家庭の事情でもない限り,誰かに頭を下げてでも金を都合し,塾なり予備校なりに1年通って浪人するほうが安全なのである.
それでも宅浪するしかない人へ
さて,上に書いたような困難こそあれ,それでも宅浪を選ぶしかない人がいることは理解している.かくいう私も,経済的な事情諸々で宅浪以外の選択肢は正直なかったわけである.
あなたがどうしても宅浪を選択しなければならない状況になった場合,なんとしてでも宅浪生活を成立させて合格を勝ち取らねばならない.そのために,次の2つの能力が必須であることを認識しておいてほしい:
生活を管理する能力
わからない問題の解答を1人で理解する能力
生活管理能力については既に述べた通りである.これは,努力に加えて本人の気質にも大きく影響される部分でもある.生来の我慢弱さがある場合,宅浪の道は普通より困難になってしまうかもしれない.
さらにもう一つの必須能力として,自分1人で分からないところを潰していく能力を挙げておいた.宅浪では,分からないところを質問する相手や機会を確保することが極端に難しくなる.普通はこの問題を金で解決するわけであるが,宅浪生はそういうわけにもいかない.この場合,問題集の解答例を見てその内容を理解し,自分のものとする(次に同じ問題が出た時に自力で解くことができる)必要がある.この力は宅浪を成立させる上で必須なものであることを強く認識してほしい.もし,現役時代にこの能力を身につけていないとしたら,宅浪生活の中で新たに身につけていくことになるであろう.数ヶ月やって向いていないと感じたら,素直に予備校に行く選択肢を復活させるほうが良いかもしれない.
実は人と一緒に勉強するのを避けているだけの人
この部分は急遽追加した.というのも,宅浪を選択しようとしている人で,実は「現役生と一緒に勉強するのが恥ずかしい」「周りの目が怖い」「予備校に行くのが怖い」などという理由が上位に来る人はいないだろうか?もしこのような理由で宅浪を選択しようとするならば,ちょっと待って欲しい.もちろんその選択が良い場合もあるが,試しに通ってみたらうまく回ることもあるかもしれない.自分に合わなければやめれば良い,と割り切って予備校なり塾なりに通ってみて欲しい.今の目的は1年後の合格であり,合格を遠のかせてまで優先する理由になりうるのか?ということを問いたいのである.そして筆者の持論を付け加えさせてもらえれば,「人はそれほど他人に興味がない」ものであり,したがって通い出せば杞憂に終わる.目的を見失って手段を誤りかけていないか,今一度考えるには十分な状況だと思う.
一応断っておくが,精神の病を患っている人の選択に口を出す気はなく,そのような方は医師と相談の上で自分に合う選択をすべきだろう.
宅浪に向いている人も実はいる,が・・・
最後に,ちょっと例外の話をしよう.
実は,浪人生の中にも塾や予備校が不要な人がいる.
試験当日の体調不良やよっぽど苦手な問題ばかり出てしまったなど,相当に運が悪いかおっちょこちょいか知らんが,とにかく実力自体は十分なのに運悪く不合格,という人である.こういう人にはもちろん予備校など不要で,宅浪で受かってしまう.私の京大の同級生にもいたのだが,彼は1年の宅浪で受かったそうである.
ただし,こういう人たちは自分で自分の実力をわかっている.
私の記事を読みながら多少なりとも不安になっているあなたは塾・予備校が不要な特殊な人には当たらないので,どうぞ心配せずにいてほしい(?)
むしろそういった人が周りにたまたまいたからといって,安易に「自分も!」とならず,冷静に自己分析を行なって欲しいのである.
K. Hisakawa