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慢性疼痛に対する具体的なアプローチ&疼痛教育方法


初めまして、理学療法士の下薗です!

普段は自費の整体で働きつつ、個人でパーソナルトレーナーもしています。


慢性的に痛みがあるお客様に施術をさせてもらうことも多いため、慢性疼痛の方がどうすればより良くなるかを毎日のように考えています。



元々
理学療法士2.3年目の時に「慢性疼痛」に興味があり、勉強していたのですが



「認知行動療法が良い」だとか、
「患者教育が大事」だとか
の文献はたくさんあるのですが、具体的にどんなふうにアプローチを進めていけば良いのか?
実際にどういうことを患者さんに伝えればいいのか?


などの具体的に内容は教科書や論文には載っていなかったため、よく悩んでいました。



そこで実際に、僕自身が自費整体で

「どのようなことを意識し」

「どのようなことを伝えて」

「どのようなアプローチをしているのか」


に関しての内容をまとめました。



同じように悩んでいるセラピストにはぜひ読んで欲しい内容です。
※この内容が答えというわけではなく、一例として参考にしてもらえると嬉しいです。



痛みの定義、痛みの分類、評価などは
様々な教科書や論文に載っているので、これらの内容は軽くふれる程度として


今回内容は、教科書や論文などでは学べないような
具体的な「伝え方」「疼痛教育方法」「セラピストとしての関わり方」「臨床でのキーポイント」などをメインにまとめました。





〇痛みの定義

痛みとは「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こり得る状態に不随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」


ここで大事なのは、痛みは「主観的で」「不快な感情」であるため、客観的な評価指標だけで痛みを100%理解しようとしてもできないということです。




VASや NRS、PCSなどの痛みの評価指標を使うこと自体を否定しているわけではないです。


これらの評価で、ある程度痛みの原因や種類、その人の思考の傾向などを予測はできるため、大変良い評価指標だと思いますが、
これだけで痛みを全て理解できているわけではないということを知っておくことが大切です。



「この評価ではこの結果なのに、なぜこうならないのか?」というように、予想していた内容と一致しないことが臨床では普通に起こります。



1つの例ですが
痛みは主観的なものであるが故に、人によって痛みの感じ方は違うため
「ラグビー部でがっつりやってた人」と「運動などを全然してこなかった人」と比べても全然痛みの感じ方が違う場合などもあります。




良い匂いの空間にいけば痛みが和らいだりする場合もありますし、すごく高級なホテルやサービスを受けたら効いてる感があったり、ストレスが強いと痛みを感じやすくもなります。




このように痛みは「主観的」であるが故に、痛みの感じ方には個人差がかなりあるということです。


だからといって、「主観的なものでわからないし評価とかもしなくて良いや」というわけではなく


「痛みを理解しきるのは難しくても、自分のできる範囲で理解するために評価やアプローチをする」という考え方が大切です。




とまぁ前置きが長くなりましたが、

痛みを理解するためには、
あくまで指標として痛みの種類、評価、などを理解しておくことは大切ですので、これらの内容を下記でも簡単にお伝えします。



〇急性疼痛と慢性疼痛



「急性疼痛」は組織損傷に伴って生じる痛みであり、末梢の侵害受容器が身体異常として脳に知らせる警告信号の役割を果たす生理的意義のある痛みです。
急性疼痛は侵害刺激に対する反応であり、ほとんどは組織損傷が治癒するにつれて軽減・消失する。




「慢性疼痛」は単に急性疼痛が長引いたものではなく、全く別の病態で生じていると考えられている。
組織損傷が十分に治癒しているにも関わらず、あるいは痛みの原因となる組織損傷が明確でないにも関わらず持続する痛みのことや、変形性膝関節症のような長期間にわたって侵害刺激が加わり続ける痛みなどのことを言います。




急性疼痛が組織損傷に伴う症状である一方で、

慢性疼痛はそれ自体が病気・疾病であると言われたりします。

上記2つは別の病態であるため、アプローチも変わります。





〇痛みのメカニズムによる分類


痛みはメカニズムによって3つに分類されます。

① 侵害受容性疼痛


② 神経障害性疼痛


③ 痛覚変調性疼痛


の3つに分類されます。







〇痛みの評価

慢性疼痛の方へ対しての評価ツールをいくつかご紹介します。



客観的に分類できるツールの1つとして活用してもらえればと思いますが、
ここが今回重要な内容ではないので、
「痛みの評価ってこんなのがあるんだ」ぐらいの感覚で見てもらえればと思います。




他にもたくさんの評価がありますが
上記は臨床現場でよく使われている評価指標かと思います。



これらの評価ツールは調べれば内容やカットオフ値も出てくるので、今回はこれらの内容を詳しくは解説しませんが、こんな評価があるんだと知ってもらえればと思ってご紹介しました。



ではなぜこれらの評価が必要なのかというと

腰痛や膝痛だといっても
はやく痛みが改善する人もいれば、
長くかかる人もいますし、症状の改善度は10人十色です。



上記の評価指標を用いて
ある程度スクリーニングをすることで
「この人は時間かかりそうだ」
「この人はそれほど時間はかからなさそう」
などが分類しやすくなるため、このような評価が大切
だと言われています。




確かにある程度分類してアプローチしていくことは大切ですが、

できる限り評価した上で分類はしますが

3つの要因が混合している可能性があるということを理解しつつ、どのウエイトが大きいかや、どのような要素や要因があるのかを予測してアプローチしていくということは大切です。





例えば
侵害受容性の疼痛の要因が大きい場合
→障害部位自体の問題や隣接間接の問題など、バイオメディカルな考え方などのアプローチを中心に実施することが多くなります。





〇神経障害性の疼痛の要因が大きい場合
→問診の評価ツールに合わせて、デルマトームに一致しているか、筋力低下、感覚障害、腱反射、痛みの種類やしびれなども評価した上で、必要があればドクターに診察をお願いすることもあるかと思います。

保存療法で進めるとなれば、バイオメディカルな考え方だけでなく、心理社会的な要因や痛みの教育なども実施していくことになります。






〇痛覚変調性の疼痛の要因が大きい場合
→痛みのある部位に損傷などがなくとも痛みを感じていたりも多いため、バイオメディカルの考えだけでは改善が難しく、思考や環境、痛みの教育などに関してのアプローチも必要になってきます。






〇バイオメディカルモデルとBPSモデル



ここからは


「痛みの教育って何をすればいいのか?」


「どういうふうに患者さんの思考にアプローチしていくのか?」


「環境へのアプローチって何?」


などをお伝えしていきます。



これらの内容には答えがないので、教科書には載っていないと思います。


僕自身は
・疼痛関連のセミナーへの参加
・実際の臨床で痛みが改善した経験
・論文の内容を臨床に落とし込むにはどうすべきか?を考え続ける
という方法で今の考えにいたりました。




実際に自費の臨床で行っていく中で、効果的だと感じている方法を、具体例も入れつつお伝えさせていただきます。




ここから下の内容は


論文や教科書で言われている内容を元に考えておりますが、僕自身の解釈も中には混ざっていますし


「正解」がない内容ですので、これが正解ではなく、あくまで1つの考え方として取り入れていただければと思います。




痛みのあるお客さんや患者さんをみていて
下記のような経験はありませんか?



「画像で診断してもらってから痛みがなくなりました」といったケースを経験したこともあります。



なぜこの動きで痛いのか?
などのように理論的に考えても解釈がつながらないというようなことは臨床現場では数多くあるかと思います。



バイオメディカルの考え方だけで痛みが改善されれば良いのですが
理論や理屈に合わない痛みというものが、実際に臨床をしていると多く遭遇します。




痛みというのは体の構造や動きなど以外にも、
心理面や社会面などがかなり影響しているため、上記のようなことが多々起こります。



従来は「生物医学モデル」のような考え方で、機械を修理するように人間の身体も治療できると考えられてきました。



ネジの歯車が狂ったなら、そこのネジを修正すれば良いように、人間の体も構造や機能を整えれば良くなると考えられていました。




しかし現在は「生物心理社会モデル(BPS)」という考え方が主流となってきました。




言葉をみるとややこしいですが、簡単に言うと
「人の健康や疾患は、体の構造や動きなどだけでなく、メンタルの状態などの心理的側面や、人間関係などの社会的な側面も関係している」という考え方です。


下記の画像のようにコップに水を足していくということをイメージしてもらえるとわかりやすいかとおもいます。




このようなBPSモデルでは
「筋肉・関節」と「メンタル」のどちらかが問題というような「or」の考え方ではなく


膝自体の問題もあるけど、
親戚との遺産相続で揉めていることや、
痛みが良くならないと感じているような破局的思考など……

全てが合わさっているというような「and」の考え方で痛みや症状が出現しているという考え方です。


こられの内容を勉強することで
「あの痛みはメンタルだ」 とセラピストが理解できない痛みをメンタルの問題と片付けてしまう人も今まで見たことがあります。


たしかにメンタルが影響していますが 「メンタルの問題だから何もできない」と片付けてしまうのはすごく勿体無いですし、身体を任せてもらっているプロとしての役目ははたせていないと思います。



臨床をしていて、実際にメンタル要素が大きく痛みに関与している可能性が高い人もいますが


他にも様々な要素(筋肉、関節、姿勢、睡眠、栄養、仕事の環境など…)が組み合わさって痛みが起こっているので、他の要素で痛みを減らしていくことはできます。



メンタルに関しても
【痛みの捉え方や違った視点の考え方】をお伝えすることで変化していくことも多々あります。

「メンタルだから良くならない」で片付けてしまわずに、自分たちにもできるアプローチや関わりを考えることが大切だと思っています。



僕たちセラピストが社会面な家族関係や友人関係などにアプローチすることは難しいですが
【痛みに関しての知識や体の機能】に加えて、【出来事に対しての捉え方や思考】を変えていく手助けはできます。



だからこそ、セラピストは体の構造や機能だけでなく、

●どのようにお伝えすれば理解しやすいのか?

●自分の痛みに対しての考えをどうすれば変えてあげられるきっかけになれるか?

●自分の体のことを知ってもらうにはどうすれば良いか?

●どのようにすれば痛みが怖くなくなるのか?……


など も考えつつお客様に関わることが大切です。 上記は例ですが、このようなことを考えつつ日々お客様に施術させてもらってます。  







〇慢性疼痛の人へのアプローチの7つのキーポイント


ここから
【僕自身が実際にしている臨床の進め方】を
具体例も混えながらお伝えしていきます。

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