苦役列車 (映画037)
「苦役列車」
原作は西村賢太、「苦役列車」は2012年に公開された山下敦弘監督作品です。時代背景は1980年代の後半くらい、主人公の山本未来が演じる北町貫太は十九歳ですが、同世代の立場からすると山下敦弘監督は1980年代の雰囲気や当時の若者の姿を見事に再現していました。あれほどではないにしても北町貫太の振る舞いには心当たりが多少なりともあります。特に異性に対しての接し方というよりも心境的な側面、北町貫太は性欲の丸出しでしたが、自身に置いて振り返ってみると滲み出していたのではないだろうか?と恥ずかしい気分にさせられます。また、個人的には高良健吾が演じる友達は専門学校に通う十九歳、大学生ではなくて専門学校生というのは当時の自身と重なります。つまり、大学に通えるほどの学力が足らず専門学校に行ってしまったいい加減さを思い起こさせる高良健吾が演じる友達でした。高良健吾は専門学校生と大学生の微妙な差というものを上手く区別できているようにも思いました。その友達の彼女は夢や憧れを語りますが、そのような異性も見たような気がします。結果、彼女を侮辱、友達に見限られる北町貫太ですが、加えて、懇願の末、前田敦子が演じる大学生にも嫌われてしまうのは痛々しいくらい憐れでありました。異性に嫌われるのはともかく、友達に嫌われるのはこれまであまり観たことがなくて印象的でした。一方、立ち入り禁止の海のシーンは名場面、夢を追い続ける人へのエールも汲み取れるので好感触の青春映画でした。