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Nº106 質問:伊検1級のリスニング問題は、客観的に見てどれくらいのレベル?

答え:数値に基けば、中の上(まで)。

 はい、ということで今回のお話はタイトルの通り、イタリア語検定1級のいわゆるリスニング問題のレベル感についてでございます

 みなさんは、イタリア語検定の1級って聞いたらどんなイメージでしょうか

 以前からネット上ではいろんな日本人イタリア語講師らが、やれC1相当だの、C2相当だのと持論を誇らしげに展開してきています
 しかしどれもこれも、その人の感想に過ぎないわけです、結局はね

 いや現実には、内容の信ぴょう性よりも、単純に発言力のある人や組織の発信することが、気づけばあたかも正義であるかのように広まってしまっている

 そういう風潮に嫌気がさした私は、その話題については放置してきていました

 そんな私ですが、今回は数値をもとにした現状分析の結果をシンプルに、この話題に関心がある人に向けて、レポートしようと思って、以下のようにまとめてみました


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 現状分析をしてみよう、と考えた私は、まずやり方について整理し、ひとまずCILS B2を比較対象として選びました

 というのも、私自身の感想では伊検1級はCILSなどのB2相当だと以前から感じていたので、手始めにB2と比較すればいいじゃないかと思ったわけです(万一大きな差異が認められれば、相手をC1にすればいいだけ)

 ここで結論を先に書くと、私の肌感は的を射ていました
 順にお話ししていきます

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 さて、比較のために手に入る問題は、伊検については2022年の問題、CILSについては2017年の問題ですので、それらを用いました
 幸い両者とも問題の形式は、近年で見ても基本設計に影響するような変更はありませんので、2022年と2017年のものを比較することでの不都合はないものと判断しました

 それらを使って、単語数や読み上げ時間を人力およびソフトを用いて計測しました(地味作業)

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まず伊検1級のデータを見てみましょう

 伊検1級のリスニング問題は全部で5パートに分かれていて、音声は全て2回読みです

  • 読み上げられる単語数は、設問形式の説明などの部分は取り除いた上での純粋な読み上げ部分のみで、全体で1690

  • 読み上げにかかった時間は、上と同じ水準で計測して、12分15秒

 そこから計算すると、平均して1分間に138ワードを読み上げていることがわかりました

 他に紹介しておきたい数値は以下のとおりです

  • Prova1の4問について、平均で75ワード読み上げられた

  • Prova5の2題について、平均で155ワード読み上げられた(1つが166ワード、もう1つが144ワード)

 一度に続けて聞かなければならないイタリア語は、伊検1級は最大でも166ワードでした
 これを覚えておいてください

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続いて、CILSのB2のデータを見てみましょう

 CILSの試験は全部で3パート(Ascolto1からAscolto3まで)に分けられていて、読み上げは全て2回行われます
 読み上げ回数は、伊検1級と同じですね

 他の主要な数値はこうなってます

  • 読み上げられる単語数は、設問の説明やガイダンス部分は除き、全体で1342

  • 読み上げにかかった時間は、9分56秒

 そこから計算すると、平均して1分間に135.1ワードを読み上げていることがわかりました

 他に紹介しておきたい数値は以下のとおりです

  • Ascolto1の7問について、平均で51ワード読み上げられた

  • Ascolto2の1題について、647ワード読み上げられた(かかった時間は4分32秒。一続き)

  • Ascolto3の1題について、341ワード読み上げられた(かかった時間は2分48秒。一続き)

 CILS B2の試験では、一続きの読み上げで最も長いのが647ワード、次に長いものが341ワード
 こういう長い読み上げを聴いて理解することが求められたわけです

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考察とまとめ

 以上を整理し直すと、

1分あたりの平均読み上げワード数
伊検1級 138
CILS B2 135.1
と、互角

一続きの最大聞き取りワード数
伊検1級 166 
CILS B2 647
と、CILSが伊検より3.9倍多い(長い)

ということが見えてきました
 みなさん、両者のリスニング問題の一つの側面が多少は感じられたでしょうか?

さて、最後に私の感想を簡単に

 リスニング問題で私が一番負荷を感じるのは、ある連続する読み上げの長さです
 よく言われるように、リスニング問題は「回転寿司を食べるようなもの」(確かドラゴン桜2で聞いた記憶です)なので、どこかで「あれ?今のところって・・」とか思ってしまうとたちまちピンチ(メモを取るのも逆効果)

 単語だの表現だのは、結局のところ知識の問題なので、知っている単語や表現は多少読み上げが早くてもわかってしまうものですからね、心配はいらない

 そうなってくると、脳内でひたすら意味を理解し、情報を整理し、というところの負荷が一番重い

 よって、リスニング問題の主な負荷の原因は、一続きの読み上げワード数の多さにある、と言えるわけです

 そう考える私にとっては、伊検1級よりもCILS B2のリスニング問題の方が緊張感を持って臨むべき相手と言えます

 もちろん、今回の比較はご覧の通りごく一部のスタッツだけに基づくもの
 もっと細かい視点を取り上げれば別のことも見えてくるかもしれませんが、それは他の方にやっていただくとして、ひとまずみなさんには今回の数値から各自で「へー、そうなんだねー」とか感想を持ってもらえたら十分かと思います

 あ、言い忘れそうになりましたが、今回の結果から

伊検1級のリスニング問題対策の最終チェックとして、CILS B2の Ascolto を試してみると良さそうです!

ということが言えますので、みなさんにおすすめしておきますね(CILSのHP探して練習問題のページを見てみてください。ただし、問題の形式は大きく異なります。あくまでも読み上げの速さや長さの点でご参考に)

 では、最後まで読んでいただき、どうもありがとうございましたー


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