「追いつめているかな」と思ったときは、「逃げ道を残す」を思い出してほしい
先日、当社のなかでも大変な歴史好きで、いつも歴史談義で盛り上がる同僚とランチに行ったときのことです。話しをしているなかで、私が最近ナチス・ヒトラーが政権獲得した本(「ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか-民主主義が死ぬ日」)を読んだ話しをしたところ、この同僚は、
「やはり何ごとも追いつめ過ぎてはいけないのですよね。ドイツも第一次大戦後に追いつめられ過ぎたことがナチス・ヒトラーにつながったのですよ。ロシアのプーチンも同じです。」と話していたのです。
私はそれを聞いて、「もっともだな」と思うとともに、中国の兵法書として有名な「孫子」の、
「囲師(いし)にはけつを残し、帰師(きし)にはとどむるなかれ。」
(包囲した敵軍には必ず逃げ道を残しておき、母国に帰る敵軍はひき止めてはいけない。)
の一節を思い出したのです。これは敵を追いつめすぎると、敵は必死に立ち向かってくるため、「逃げ道を残しておく」ことの大事さを伝えたものです。
このような教えが3000年前からあったにも関わらず、繰り返し追いつめ過ぎてきた歴史を振り返ると、人間の悲しい性(さが)を感じてしまいます。
この「逃げ道を残しておく」ということは、日頃の仕事や生活のなかでも使えることが多々あります。
例えば、仕事に厳しい経営者や管理職などのリーダーほど、成果が不十分な社員や部下に厳しく指導することがあります。もちろん、厳しく指導することは本人の危機意識を高めたり、気づきを与えるため、時には必要なことです。
しかし、厳しい指導ばかりで、常にダメ出しをしていたらどうでしょうか。社員や部下が危機意識を高める、気づきを得る前に、圧迫感を感じ、ときには精神的な不調に至ることもあるでしょう。少なくとも、成果を出すために伸び伸びと取り組むような状態にはなりません。
成果が不十分なことについて厳しい指導を行いつつも、他の取り組みでよかったことを褒めたり、認めたりする。そんなことも実は「逃げ道を残しておく」ということなのです。そうすれば、厳しい指導を前向きに受け止める心の余裕も生まれてきます。
もし「相手を追いつめ過ぎているかな」と思うようなことがあれば、「逃げ道を残しておく」ことを思い出して欲しいのです。