読書の記録#10 東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法
東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法(KADOKAWA) 河野玄斗(著)
前から読みたかった本
近年のクイズブーム、特に東大ブームは目覚ましいものがある。代表的なテレビ番組は東大王だが、その他にも多数の番組が存在する。元々は東大にフォーカスしていないものでも、例えばQさま!!では東大勢が顔を出すことも多いし、難問を解くばかりでなくひらめき重視の"謎解き"で売れっ子になる人も出てくるといった具合だ。知的メディアとして名高いQuizKnockはクイズに関心が薄くとも聞いたことのある人が多いだろう。
さて、そんなクイズブームの中、個人的に最も頭の良さの凄みを感じていたのが今回の本の著者河野玄斗氏である。同氏も東大理科三類に合格しその後東大医学部を選択する経歴を持つのだが、珍しいのはその医学部在学中に司法試験に合格しているという点だろう。国内では理系最高峰であろう場所に身を置きつつ、文系最高峰といって過言でない資格を取っている。なかなか真似の出来ないエネルギーと知力を持っていそうだ。尚、今年医師国家試験も無事にクリアしている。
先述の東大王への出演は無いが、日テレの特番で都度行われる頭脳王は3年連続で出場しているのでご存知の方も多いだろう。尚、頭脳王では3年間で優勝→優勝→準優勝である。見ていても、知識が多いというよりは頭の回転が速い・頭の中の引き出しの使い方が上手いという印象を受ける人物で、このような人の「シンプルな勉強法」とはどの程度シンプルなのか、それとも常人には理解し得ない「シンプル」なのかという観点で本書に関心を強く持っていた。今回ようやく入手することが出来たので他の本を差し置いて早速読破した。
そんなに読みたかったならネットで買えば良いじゃないかという声が間違いなく聞こえてくる時代なのだが(河野氏にここまでの話をしたら「効率的じゃない」と言われそう)、本屋が好きで本を手に取ってレジに持っていく時の高揚感を味わいたいためそれをしていなかった。特に読みたい本であればあるほど高揚感は高く、自分の中での優先順位が高かったのだ。たとえ時間と交通費を犠牲にしても。距離のある大型書店に電車賃を握りしめ(ICカード家に忘れただけ)行ってみたらこの本が置いてあり非常に嬉しかった。
シンプルだった
前段が長くなったが、読んでの印象を率直に言うと「シンプルだった」となる。
ざっくりの構成は、前半はマクロな視点で勉強する体制の作り方、後半はミクロな視点で勉強の仕方のポイントである。河野氏も再三記載しており、個人的にも1番大事なんだろうなと思うことは勉強計画を練ること(河野氏の言葉を使えば「逆算勉強法」)だろう。最終的な目標は何なのか、それを達成するために必要な要素は何なのか、その要素を満たしていくにはどのくらい時間が必要なのか(あるいは限られた時間でどの程度まで要素を満たすのか)、といった話だ。仕事の進め方と一緒である。(そしてこのように仕事を進められない場当たり的な人が多いのもまた真実なので、仕事も勉強もベースとなる姿勢・取り組み方のところは同じだろう)
レベル感の違いはあれ、参考にできる人は多いのではないだろうか。書いてあることを必ずしも徹底し切らなくとも十分活かせる内容だ。
自分自身の勉強法も河野氏記載のものにかなり近いものだった。前にこのnoteで記載したことがあるが、自分も東大理三には及ばないが「トップ校」の枠組みには入ることも多いであろう大学出身である。そしてエスカレーター式ではなく大学受験もしているので、高校生の時にはしっかりと勉強しているわけだが、その際まずは勉強計画を練っていた。ちなみにテーマは"受験直前でも気兼ねなくカラオケやゲームで遊べる受験勉強"である。それに基づいて進めていたので、必ずしも勉強だけに注力するわけでもなく高3の文化祭は全力で取り組んだし(有志で出し物までした)、年明けという受験直前にカラオケにも行った(さすがにセンター試験終わった後にしたが。とはいえ秋にも行ってるので何が「さすがに」なのかサッパリだが)。1番の趣味のフィギュアスケートもシーズンをしっかり追えたし、勉強を終えた夜には毎日30分TVゲームをしてから寝ていた。受験前日までそんな具合だったが、無事現役で大学に進学した。自分の遊びたい欲と付き合いつつ勉強する計画が上手くいったからこそだと思う。(尚、受験が近づいてもしっかり遊ぶためにかなり早めから受験勉強に本格的に取り組む計画にしていたこと及び勉強計画の作戦に甘さがあったため不合格になった試験もあることを補記しておく)
自分語りが長くなったが、そんなこんなで自分なりの勉強法が確立されていたので、特段参考にする気は無いまま本を読んだのだが、結果として割と自分に似ていた。
要は河野氏ほどの実績があっても特段超人的な何かをしているわけではなく、目標を定めてそれに向けた努力をやり切ることが重要という話なのだ。
勉強に限らず、仕事は勿論、スポーツや趣味でも活かせそうな考え方であり、読者に求められるのは「自分レベルに落とし込めるか」だと感じた。
河野氏の凄さはやり切る精神力にあり
河野氏も本作内で記載しているが、そういったシンプルな手法であるにもかかわらず出来る人は一握りなのだ。「頭で分かっているけど実践できない」である。なぜかと言えば、色々な思いが交錯するからだ。スマホをいじりたい、遊びたい、勉強したくない…。「分かっちゃいるけど、そこまで徹底できないんだよね」という声が多くありそうだ。
河野氏の凄さは、こうやると決めたらその通りに遂行していく精神力にあるのだろう。頭脳王では超人的な頭の良さを見せつけているが、本人も言っているように所謂天才ではないのだろう。強いて天才という言葉を使うなら、「やり切る天才」なのだと思う。
こういう頭脳王などと称されるような人は往々にしてパーフェクトであろうとするものなのかなと思いきや、
・司法試験やってる間は医学系の試験はパスギリギリの点数で凌ぐ
・社会は日本史を選択したから世界史は分からん
・司法試験の予備校入った当初はダンスサークルの練習めっちゃ顔出してた(これは当初のスタンスという理由があるが)
・優秀な人に話を聞きに行くべきだったんだけどこの間もそれうっかりすっ飛ばして自分が良しと思った方向でがむしゃらにやっちゃったからちょっと効率的じゃない部分があった(テヘペロ)
なのである。なんとも人間味がある。
「この授業は単位取れさえすれば良いから毎年出てるこの分野だけ勉強しよう」とやっていた自分のようではないか。
頭脳王でそうなのだから、そりゃ自分もそうなるわなと勝手に納得した。
ただ、「こうしよう」と決めたら徹底的にやり切るのだ。そこが凄い。誘惑に負ける人の方が多いだろう。自分に至っては上述の通り負ける前提で誘惑ありきの計画を作ったくらいだ。
やり切ることにメリットを感じられればやり切れるというのは、必ずしもそうとは言い切れないように思う。人は誘惑に弱い。
ただ、自分がどのくらい誘惑に弱いのかを把握することは出来るだろうし、そのうえでその弱さと上手く付き合いながらどのように目標にアプローチしていくかということは取り組めるだろう。
自分がパーフェクトじゃないということを受け入れつつ(河野氏は受け入れているように見える)、自分流に落とし込んだ目標への向かい方を身に着けていこう。その入口として自分はこういう風にやっているよ。そんな本だった。ある種、河野氏の人生について垣間見る自伝のような本なのかもしれないという思いが読了後によぎった。
良い意味で、思った以上に普通な話であり是非一読をお勧めしたい。勉強に限らず、仕事の進め方にも通ずる。
常人離れした天才と見せかけて、必要な努力をした秀才の一冊である。
もう自分なりの勉強法も確立している(と思っている)身であり、「あの頭脳王はどういうことを考えて勉強してるのかな」という興味本位の色が強いスタートで本を手に取ったので、本の良さを最も享受出来たかというと自信は無い。
河野氏が年下なのでしょうがないが、高校生くらいで出会いたい本だった。