家族ケアラーのQOL ~自分の経験から~
QOL、クオリティ・オブ・ライフとは「生活の質」を指す用語で、広まって久しいですね。
どちらかというと医療現場で使われることが多いですが、「生活」の「質」ですから誰にとっても重要なテーマです。
今回は「家族をケアする人(家族ケアラー)のQOL」について考えてみました。
1.OQLの定義
「質」をどう評価するか、がポイントだと思います。
世間一般的に「質の高い生活」と解釈すると急につまんない概念になってしまいます。
上記の定義にあるように「どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか」を、一人一人が定義づけする必要があるでしょう。
2.家族のうつ病とQOLの関わり
QOLを検討する中で「家族がうつ病(その他精神疾患)になった」という要素はどのように関係してくるでしょうか。
あくまで一般論&個人的な経験から意見を書かせていただきますね。
家族がうつ病になると、多かれ少なかれそれ以前に予定していた未来を目指すことが難しくなります。
○年後に家を買って、○年頃には○○出来ていて、夫婦の老後はこんなことをして、のような未来像は一旦手放す必要が出てくるでしょう。
従来のQOLが新しい変化(家族のうつ)によって無効化したことを受け入れるのは至難の業です。更に家族としての将来像だけでなく、自分自身のキャリアや子どもの進学などにも影響が出ます。
予期せぬ出来事は大きな変化と共にストレスを連れてきます。
変化へ対応しきれるか、という不安も感じるでしょう。
この時に、例えばうつではない側(妻・夫)が「私が全部一人で何とかしなければ」と考えない、家族で相談し合える下地が出来ていると、ストレスも不安も許容範囲内でおさめることが出来るでしょう。
3.ケアラーのQOLとは
今まで目指していたものが無くなって、途方に暮れたり何をしたらいいのか何を頑張ればいいのかが分からなくなってしまいます。
家族のケアという役目はありますが、最初のうちはそこへ「自分らしさ」や「人生の幸福」を感じることは難しいでしょう。
家族がうつ病になり、そのケアを担う人のQOLは、まずは降ってわいた役割とどう向き合うか、という課題に取り組む必要があります。
家族がうつ病になったことで担わなくてはならなくなった役目や責任は、確かに重荷です。しかしそれは「タネ」でもあります。その後何につながるか、現時点では何も分からないのです。
4.家族みんなのQOL
うつ病本人の「人間らしい生活や自分らしい生活」、家族それぞれの「人間らしい生活や自分らしい生活」の集合体が「家族みんなのQOL」になります。
心理学には「ゲシュタルト」という言葉があります。
点と点の合計が面になるのではなく、相互作用や影響、反応を含めて「点+点」以上の「まとまり」としての効果や力のことです。
家族にも、家族同士が協力することによって、1+1よりも大きな力が生まれます。それは一人ではできなかったことが、家族の理解によってモチベーションが上がったり、アドバイスを聞き入れて新しい世界が広がったり、協力してもらうことで予想以上の結果を残せたりすること、と言えます。
家族がうつ病になった事実をただフォローし合うだけの「タスク」にしてしまうと、疲労感とストレスと自己評価の低下しか得られない気がしてしまいます。
ですがフォローする人は未知の体験を得られ、フォローされた人は今までなかった感謝を感じることが出来ます。また、病気も怪我も誰でもなる可能性があります。次に家族のだれかにアクシデントが起きた時には、過去の経験が「経験知」になっているでしょう。
QOLの「自分らしい生活」とは、「自分が好きなものを手に入れるだけの生活」ではなく、今あるもの・周りの環境・自分が出来ることを可能な限り活用したら何が実現できるか、を叶えるチャンス、とも言えます。
家族みんなのQOLとは、家族同士が協力して生まれたゲシュタルト効果によって目指せる「生活の質」のことではないでしょうか。