
家族のメンタル不調にどう対応する?NG行動と適切なサポート法
家族が精神疾患を抱えたとき、「どう接すればいいのかわからない」「何をすれば回復につながるのか」と悩むことが多いですよね。
病気の治療は医療機関で行われますが、「治療以外の時間をどう過ごすか」 が回復に大きな影響を与えます。
特に、家族の接し方は回復のスピードを左右する重要な要素 です。
「頑張れ」「気の持ちようだよ」といった何気ない言葉が逆効果になり、家族との信頼関係が崩れてしまうこともあります。
この記事では、家族がやってしまいがちなNG行動と、回復を支えるための正しいサポート方法 を詳しく解説します。
「どこまで支えればいいのか?」という不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.家族のメンタル不調は「対応次第で回復が変わる」
①メンタル不調の家族にどう接するかで、回復のスピードが大きく変わる
メンタルの病気も、体と同じ「病気」です。だから医学的治療と医師の指導は大事です。
ただ、それだけでは回復しません。
他の病気よりも「治療時以外をどう過ごすのか」が回復過程に大きく影響します。
家族の接し方がなぜ影響するのでしょう。
それは、信頼度が低下する可能性があるからです。
例えばうつ病の初期に「頑張れ」が禁句なのは有名ですよね。
それは、当人は「頑張らなければいけないのは百も承知で、頑張り続けて限界突破した状態」がうつ病であり、これ以上頑張ることが出来ないところに「頑張れ」と言われると、わかっていても出来ない自分を更に追い込んだり、自己否定がさらに強化されてしまうからです。
一緒に暮らす家族からこうした接し方をされたらどう考えるでしょう。
「この人(家族)には自分の辛さは分かってもらえない」
「この人(家族)には何を言っても無駄なんだ」
と判断し、心を閉ざしてしまうでしょう。
②「頑張れ」は家族にとっても逆効果
分かりやすいNG例としてもう一度「頑張れ」を取り上げます。
なぜ「頑張れ」が逆効果なのでしょうか。
「頑張れ」と言われると、本人は「もっと努力しなければならない」と思い込む。
しかし、精神的にエネルギーが枯渇しているため、努力しようとしてもできない。
「努力できない自分はダメだ…」と自己否定感が強まり、さらに落ち込む。
結果的に、症状が悪化してしまう。
家族側は心の病ではない、または経験者でもないことがほとんどです。疲れてしんどくて何もしたくなくなる状態を経験していても、医師から病気と診断される状態は経験していません。
この二つは似ているようで全く違います。
家族は自分の体験から照らし合わせて「もう少しやる気を出せば元気になれる」と信じて「頑張れ」と声をかけることが多いです。それは相手を信じているからかもしれません。
しかし家族側が期待するような反応は返ってこない。そればかりか余計何も出来なくなったり反発してきます。
家族としては良かれと思っての「頑張れ」でネガティブな反応を返されることでがっかりし、家族側としても支えるモチベーションが低下してしまうのです。
③大切なのは「正しい接し方を知ること」
家族として、「どう接するのが正しいのか?」を知ることで、無理なく支えることができるようになります。
【声掛けの具体例】
否定せず、まずは気持ちを受け止める
→例:「そう感じているんだね」「辛かったね」
無理に元気づけようとしない
→例:「焦らず、ゆっくりで大丈夫だよ」
「解決策を押しつけない」ことが大切
→例:「今は何が負担になっているのか、一緒に考えようか?」
「何もしなくてもいい」という安心感を与える
→例:「何もできなくても大丈夫だよ。そばにいるよ。」
「これを言えばOK」という文言があるわけではありません。
まずは相手がどんな状態・心境にあるのか、を知ろうとする接し方が必要です。
2.知っておきたい!家族がやってしまいがちなNG行動
①無理に励ます・ポジティブな言葉を押し付ける
×「そんなに落ち込まないで」
×「気の持ちようだよ!」
これがNGな理由は、病気によって停滞しているメンタルを否定されるからです。
励ますつもりが、言われた側は「落ち込むのは悪いこと」と解釈し、「気持ちをポジティブにできない自分がダメなんだ」と捉えてしまい、自己否定感が高まります。
○「今は辛いよね」
○「話なら聞くから、言ってね」
と、現状を否定しない接し方を心がけましょう。
②「気にしすぎ」「甘え」と言って現状を否定する
×「そんなの気にしすぎだよ」
×「もっとしっかりしなさい」
これがNGな理由は、自分のメンタルダウンは「甘え」「怠け」「逃げ」であると勘違いしてしまう恐れがあることです。
甘えでも気にし過ぎでもありません。病気なのです。
病気だから気分が落ち込むのだ、と言うことを、本人だけでなく家族も正しく受け入れていないと、こうした声かけをしてしまう可能性があります。
家族は叱咤より共感的態度で接しましょう。
○「そう感じているんだね」
○「話してくれてありがとう」
③アドバイスを押し付ける
NG例として3つ目はアドバイスの押し付けです。
×「運動すれば元気になるよ!」
×「外に出たほうがいいよ!」
うつ病の回復には、適度な運動や太陽に当たると良い、と言われます。健康面を考えればとても大事ですが、「そこからスタートしなくては」と思うことが大きな勘違いです。
患者本人を見ていると分かりますが、外へ出るなど論外、運動などもってのほかと分かるくらい気持ちも身体も停滞しています。
その状態で運動や外出を勧めたら、間違いなく自己嫌悪感が強まります。
○「今は何が負担になっているのか」を一緒に考える
向き合い方をして、その中で本人の状態を見ながら「○○をやってみるのはどう?」と提案するならOKです。
④「時間さえ経てば治る」と放置する
×「そのうちよくなるでしょ」
×「とりあえず様子を見よう」
家族も患者のケアだけしていればいいわけではないですよね。むしろ病気になった本人の分もやることが増えて忙しくなる方も多いでしょう。
それもあってつい放置してしまうと、病気本人の見捨てられ感と孤独感が強まってしまいます。
「自分は病気になって迷惑な存在だ」「いないほうがいいんだ」と思い込んでしまいます。
家族が取るスタンスは「見守り」です。これは放置とは違います。
○「出来ることがあったら言ってね」
○「頼ってくれた方が嬉しいから、遠慮しないでね」
と、ある程度本人の判断にゆだねることで距離をとりましょう。

3.家族が出来る適切なサポート方法とは
①アクティブリスニング:話を聞くことが一番のサポート
メンタル不調の人にとって、一番辛いのは「自分の気持ちを理解してもらえないこと」です。
家族は「何かアドバイスをしなきゃ」「励まさなきゃ」と思うかもしれませんが、実は「話を聞くだけ」でも十分なサポートになります。
話を聞いてもらうことで、こんな効果があります。
「ひとりじゃない」と感じ、孤独感が軽減される
気持ちを言葉にすることで、自分の考えを整理できる
安心感が生まれ、ストレスが和らぐ
アクティブリスニング(積極的傾聴)は、「相手が話しやすい雰囲気を作る」ことが大切です。
相づちやうなずきを入れる
→「うんうん」「それは大変だったね」と、しっかり話を聞いていることを伝える。
話を遮らない・アドバイスをしない
→「それはこうした方がいいよ!」と解決策を押し付けるのはNG!
→まずは「そうだったんだね」と気持ちを受け止める。
感情に寄り添う(共感する)
→「辛かったね」「それは悔しかったね」と、相手の気持ちに共感する。
②生活の負担を減らすサポートをする
メンタル不調の人は、日常生活のちょっとしたことでも「できない」と感じることがあります。
特に「うつ病」や「双極性障害(うつ状態)」では、以下のような症状が出ることがあります。
家事ができない(掃除・料理・洗濯)
食事をとるのが面倒
買い物に行けない
家族として、「何をどこまでサポートするか」を整理すると、負担が少なくなります。
本人が「できること」は見守る(無理に手伝わない)
「できないこと」だけサポートする(家事・買い物・病院付き添いなど)
例えば以下のような接し方を試してみてください。
食事を一緒にとる
→ひとりだと食事をとらなくなることが多いので、一緒に食べる時間を作る。
買い物を代わりにしてあげる
→外出する気力がないときは、食材や日用品を買ってきてあげる。
通院に同行する
→ひとりで通院するのが不安な場合、一緒に行くことで安心できる。
環境を整える(部屋の片づけ・静かな空間作り)
→音や光に敏感になっていることがあるので、リラックスできる環境を作る。
無理に何でもやってあげるのではなく、「できない部分だけをサポートする」のがポイントです。
出来ることを本人に任せるのは、家族が踏み込み過ぎないためにも重要です。
③家族自身のケアも大切にする
家族が「すべて自分が支えなければ」と思い込むと、「共倒れ」してしまうリスクがあります。
支えるためには、支える側も元気でいることが何より大事です。
【家族のメンタルを守るためのセルフケア方法】
ひとりの時間を持つ
→毎日30分~1時間でも、自分だけの時間を確保する。(読書・散歩・趣味など)
ストレスを吐き出す場所を作る
→信頼できる人に話す
→日記を書く
→カウンセリングを利用する。
すべてを自分で抱え込まない
→医療機関・支援団体・カウンセリングなどのサポートを活用する。
【家族向けのサポート制度も活用しよう】
支える側もサポートを受けることができます。
家族会:同じ悩みを持つ人と話せる。
精神保健福祉センター:家族向けの相談ができる。
カウンセリング:プロに相談し、気持ちを整理する。
家族が自分の悩みを相談できる場所を作り、自分の時間を持つことに、罪悪感を持たないよう注意しましょう。

4.無理なく支えるために活用できる支援制度
精神疾患を抱える家族を支えるのは、想像以上に大きな負担です。
「自分がしっかりしなければ…」と頑張るうちに、支える側も疲れてしまい、「共倒れ」してしまうケースも少なくありません。
しかし、日本には家族の負担を軽減するための公的な支援制度が数多くあります。
「こんな制度があるなんて知らなかった…」と後で気づく方も多いため、知っているかどうかで、支える側の負担が大きく変わります!
この章では精神疾患を抱える家族を支えるために活用できる3つの制度を詳しく解説します。
①自立支援医療制度(医療費の負担を1割に)
精神疾患の治療は、長期的な通院やカウンセリングが必要になることが多く、医療費の負担が重くなりがちです。
そこで活用できるのが、「自立支援医療制度」です。
この制度を利用すると、精神科の診察やカウンセリング、薬代の自己負担が一割負担/一定額に軽減されます。
【申請方法】
①主治医に「自立支援医療制度を利用したい」と相談し、診断書をもらう
②市役所・区役所の「障害福祉課」または「福祉窓口」に申請書を提出
③審査が通れば「自立支援医療受給者証」が発行され、医療費が1割負担/一定額に抑えられます。
②障害年金(経済的な支援)
精神疾患が原因で働くことが難しくなった場合、「障害年金」を受給できる可能性があります。
これは、生活費の補助として活用できる年金制度で、受給できれば2ヶ月に1回一定額の支給が受けられます。
【受給の条件】
以下の条件を満たしていると、障害年金の対象となる可能性があります。
✅初診日(最初に病院を受診した日)を証明できる
✅障害認定日に一定の障害状態と診断される
✅年金保険料の納付要件を満たしている。
【申請の流れ】
①主治医に「障害年金の診断書」を書いてもらう
②市役所(年金課)または年金事務所で「障害年金の申請書類」を提出
③審査が通ると等級が決定→支給開始
障害年金の申請は煩雑で分かりにくいものが多いです。数度申請することも可能ですが、認定を受けることが難しくなることもあります。
社会保険労務士にサポートを依頼する、と言う方法も検討しましょう。
③精神保健福祉センター(家族も相談できる)
「精神保健福祉センター」は、精神疾患を抱える本人だけでなく、家族もサポートしてくれる公的な支援機関です。
【受けられるサポート】
✅ストレスや不安、うつ病、依存症など、さまざまなメンタルヘルスに関する相談が可能
✅ 専門的な知識を持つ職員が、個別の状況に応じた適切なアドバイスやサポートを提供
✅病気を抱えたご本人にどう接したらよいか、を相談できる
ただし単発の相談になるので、継続相談は出来ません。
精神保健福祉センターは各県に1か所設置が義務付けられている公的機関です。お住いの場所から遠い可能性もありますので、まずは電話かホームページから問い合わせてみましょう。
ひとりで抱え込まないために、使える制度はどんどん活用しましょう。
5.まとめ:家族のサポートは「焦らず・無理せず」が大切
精神疾患を抱える家族を支えるとき、「何をすればいいか」よりも「何をしないほうがいいか」を知ることが大切です。
「頑張れ」「気にしすぎだよ」といった言葉は、本人を追い詰める可能性があり、逆に回復を妨げてしまうこともあります。
では、どうすればいいのでしょうか?
家族ができる正しいサポート方法は以下の3つです。
①「アクティブリスニング」で話を聞く
→アドバイスを押し付けるのではなく、相手の気持ちを受け止める。
②「生活の負担を減らすサポート」をする
→無理に何でも手伝わず、本人が「できること」と「できないこと」を見極める。
③「支える側のセルフケア」も忘れない
→家族自身のストレスを軽減し、無理なく支えられる環境を整える。
また、「自立支援医療制度」「障害年金」「精神保健福祉センター」などの支援制度を活用することで、家族の負担を減らすことも可能です。
「ひとりで頑張らなければ」と思わず、家族も適切な支援を受けながら、無理のないサポートを心がけましょう。
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