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【読了】「ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと」

ゆる言語学ラジオを絡めて書いた記事が、ちょくちょく読んでもらっているようでうれしい。
みんなも積ん読しような。



そんな記事を書いたはいいが、お前は本当に本を読んでいるのか?と言われてもおかしくないなと思う。本の記事全然ないから。

こんなこと恥ずかしげもなく書いて、、、

だから、昔に読んだ本の紹介をしようと思ってたけど、読み始めた本が面白かったので、これを記事にしようと思った。



概要

以前に、ゆる言語学ラジオで紹介されていて、著者の伊藤雄馬先生も出演した回があり、かなり気になっていたので本を買ってみた、というのが経緯。

就活から逃げ出した言語学徒の青年は、美しい言語を話す少数民族・ムラブリと出会った。文字のないムラブリ語を研究し、自由を愛するムラブリと暮らすうち、日本で培った常識は剥がれ、身体感覚までもが変わっていく……。

言葉とはなにか? そして幸福、自由とはなにか? ムラブリ語研究をとおしてたどり着いた答えとは……?

集英社インターナショナルHPより

結論からいうとめちゃくちゃ面白かった。
エッセイのような書き出しで、研究者としての苦労や成果、ところどころに論文などを引用しながら持論が形成されていく様子が、軽い文体で読めて楽しいし、価値観を壊される感覚が心地いい。

いままで読んできたもので類書としては以下の2冊のようなイメージ
・ペンギンが教えてくれた 物理のはなし
・アロハで猟師、はじめました



著者 伊藤雄馬先生

まず、この著者の伊藤雄馬先生は異色の経歴ながら、多くの人に憧れられる生き方をしていると思う。
ものを持たない、定住しない生活を歩むための技術を日々研究している。
ここでいう「技術」や「研究」は字面から得られる固い高尚なものではなく、素朴でのびのびとしたものであることは、ゆる言語学ラジオの出演回や本を読んだひとならわかると思う。



このように自由に生き方を定め、そのために余計なものはそぎ落とす。そんな生き方を支持して憧れる現代日本人は多いのではないか。
僕もまずは「憧れるなあ」と思って観ていた。

このような生き方はヒッピーだったり、スピリチュアルな側面を持った人を世間的にイメージしがちと思う。
言葉を怖れずに言うと、「ぱっぱらぱーな奴ら」みたいな。



だけど著者はかなり知性の高い人間で、アカデミックな形でムラブリを研究して、その過程で、ものを持たなくなっていった経緯がある。
就職したくなくて、大学教員になれるだろうか?
論文を書き、発表をする生活や、ムラブリ語をはじめタイ語やその他方言もマスターし現地人と調査できるのだろうか?

著者はそんな大学教員生活をやめているので、そういったものは「合わない」、もしくは「不要ではないか」、と考えていると思うのだが、この本を手に取る人に
「なんか世界観変わったとか、スピリチュアルな胡散臭い話とかするんでしょ?」と思われたくないので書いている。



そう、アプローチがアカデミックなのだ。
言語学や人類学、遺伝学などをベースにムラブリを研究し、そこにある思想を身体的に学んだからこその持論がある。

ちなみに、スピリチュアルな方々を見下したような書き方をしたけど、各宗教や信条にはそれぞれの哲学があると思うのでそれらも構造的な理解ができれば、必ずしもすべてが「胡散臭い」とか「気持ち悪い」ものではないと思う。
この本でも触れている「身体性」を宗教は重視していると思うし、学問的には「身体性」を軽視していると思う。
イメージが胡散臭いだけで終わるとよくないよ、という話。



「身体性」

ちょっとだけ、中身に触れると、「身体性」というキーワードが共感もしたし、モヤっとした感覚を言語化してくれているなと思った。

言語化できない、自身の体で体感・経験・習得するものが僕もあると思う。
細かなことで言えば、「この時Aさんならなんていうだろうか」とか「Aさんならどう行動するんだろうか」ということがあると思う。
これもある種Aさんの身体性を獲得した結果の思想であると思う。



もっと身体的な話で言うとスポーツでの技術習得である。
僕は学生時代陸上部だったし、武道も昔かじっていた。
(伊藤雄馬先生も陸上部で武術も習ったことがあるらしい)
どちらも身体操作にかなり重きに置いているスポーツと思っている。

だから、自分の体がどうやって動くのか、どうやって他人は体を動かしているのか、をかなり考えたし観察した。
武道では精神性も重視されるので訓戒のような儀式から学んだこともいくつかある。

そこで何となく掴んでいたのが
学ぶべき人の所作動作を真似たほうが、その人の思想を学びやすい、ということ。
細かな所作から、生活パターンまでいろんな振れ幅があるが、本当に人を理解したといえるのは、その人と同じ時間同じ場所同じ行動をしなければならない、と考えている。(つまり不可能ってことなんだけど近づくことはできる)


ちなみにこれ、最近の悩みなんだけど
上記のように、相手の考えをインストールしてトレースする技術を磨いていったら、相手の望む反応をするAIみたいな会話しかできなくて困っている。。


ということで、憧れあり、共感あり、共通点若干あり、ということで伊藤雄馬先生並びにムラブリにめちゃくちゃ興味惹かれました。

映画見ます。


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