進化論への勘違い
“進化論はいかに進化したのか”という本を読んで、進化論について誤解してた。いや、僕だけじゃなくて多くの人が誤解しているのではないか。
1.本を読むきっかけ
#木曜日は本曜日という本屋さんを応援する素敵なプロジェクトがある。
その中で株式会社COTENの深井龍之介さんが紹介していたのが、更科功著の“進化論はいかに進化したのか”である。
深井さんによると現代人の8割が進化論について、勘違いしているとのことであったので、気になって読んでみた。
2.どんな本か?
分子古生物学を専門とする著者が、ダーウィンの進化論から現代の進化論までの変遷を紹介している。
前半はダーウィンの進化論と現代の進化論について、後半は進化と生物の関係を、ヒトや恐竜といった生物の例を挙げながら説明している。前半はやや難しいがこの本のメインで、後半は読み物として読みやすい。
全体的に各章が短く、図も多くて分かりやすい。生物の遺伝の知識があれば読み易いが、なくても読めると思う。
3.読む前の進化論のイメージ
僕がこの本を読む前は、ダーウィンの進化論に対して、次のようなイメージを抱いていた。
①進化すると進歩する(現状より良くなる)
②生物の進化には目的がある
③進化論=ダーウィンの業績(他の人は知らない)
4.気づき① 進化と進歩の違い
皆さんは進化=進歩と思っていないだろうか?
進化は「進んで化ける」と書くので、進化することで、より進んだ高等な生物になるものだと僕は思っていた。
しかし、進化に進歩の意味を含み、目的や目標を持って生物が進化したと考えるのは、ラマルクやスペンサーの進化論だった。
ダーウィンの進化には進歩の意味はなく、単なる遺伝的な変化を進化と呼んでいるし、現代の進化生物学もその立場を取る。そして、目的なく偶然に進化したものが、自然選択で生き残って現代に至ったと考えている。
ややこしいのが、スペンサーの進化論が社会進化論として世に広まったことだ。だから、進化=進歩のイメージが強いのだと思う。
ヒトは、ヒトを中心として高等な生物に進化してきたと考えがちだけど、実際はそうではない。例えば水中生活に適した進化を見れば、魚の方がヒトより適している。陸上生活に適した進化を見ても、ヒトは他の生物に劣る。このように進歩は主観によっていくらでも見え方は変わってしまうのだ。
5.気づき② ダーウィンの“種の起源”はなぜ評価されているのか?
進化論=ダーウィンの業績と僕は勝手に思っていた。しかし、ダーウィンが生まれる前から進化の概念はあった。僕が知らないだけで、進化論を唱えた学者はたくさん存在していて、本書にも多くの人名が登場する。また、“種の起源”の発表から160年経って科学は進歩し、ダーウィンの進化論も現代の進化生物学からすれば、一部間違いがあることもわかっている。
では、ダーウィンがなぜ?今なお有名なのか。それは、「自然選択を提唱した偉大な実績」と、“種の起源”が科学書と呼ばれている所以である「持論に対して、証拠を示している」からだ。要は仮説を立て検証しているのだ。
進化について持論を展開する時に、その事実は確かめようがない。なぜなら進化は人類の歴史よりはるかにスパンが長くて、タイムマシンで過去から観察しない限り事実はわからない。でも、今生きている生物や化石を観察して、仮説を立て、検証することで、確かめようがない事実も、仮説を事実に近づけることができる。
本書を読むと、進化生物学はダーウィン以外にも多くの研究者が様々な仮説が考えて、検証し、支持・否定され、進んできた学問だということがよくわかる。いや、こんな当たり前なことは進化生物学に限らず他の分野でも同じだ。
だからこそ、仮説→観察→検証のサイクルを回した科学的な論の進め方を世に広めた(世界で初めてではないはずだが)ダーウィンは有名なのだ。
しかし、有名なことは、良くも悪くも進化論やダーウィンに対して誤ったイメージを与えてしまった。そのダーウィンの進化論に対する誤解を指摘しつつ、ダーウィンの進化論のすごさを現代の進化論と合わせて導いてくれるのが本書であり、著者のダーウィン愛を感じられるすごくいい本であった。
6.種の起源を読んでみよう
この本を読んで、いかに我々が一般的なイメージで物事を分かった気でいるかを気付かされた。いや、なんならこのnoteを書いてる僕も何となく分かった気になっているだけだ。
だから、“種の起源”を読んでみようと思った。ダーウィンを深く理解しようという想いよりは、何か確かめずにはいられない気持ちになった。
今まで僕は本を読んでも原典を読んだことはほとんどなかった。だから上下巻合わせて850ページを超えるボリュームを前に、読了できないかもと不安が頭をよぎる。でも、今はそれ以上にワクワクした気持ちが勝っているので、その火が消えないうちに手をつけよう。