つれないつり(5) ボラ
満潮が過ぎた。月に照らされた運河の表面が騒がしくなってきた。たくさんのミミズのようなものが、そのボデイから考えられないようなスピード動いている。
普段、海底にいるゴカイ、イソメなど、海のミミズのようないわゆる多毛類という生物が、交尾のために巣穴から出てきて水面を漂う。これを「バチ抜け」という。ゴカイが太鼓のバチに似ているからそう呼ばれているそうだ。短いバチ、長いバチ、いろんなバチが私の目の前で動いている。
大阪湾の工場近くの運河で、自然の営みが夜毎に行われている。生命の神