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知らぬ間に組長になっていた話_17

これは、知らぬ間に私が組長になっていた話です。

 「ちょっとこれ見てくださいよ」と同僚が言った。
教育相談の希望調査である。勤務校は生徒が教員を指名して教育相談を行うことが年に2回ある。毎回私を指名してくれるレギュラーもいれば、ご新規さんもいる。ガチの相談もあれば、1時間愚痴を聞かされることもあるし、好きな映画の話で終わることもある。なんでもありなのだ。この時間は面白い。

 「話しやすいから」
 「進路の話をしたいから」など指名してくれる理由は人それぞれ。

 話は逸れるが、組長といえば「山口組組長 司忍」に似ていた同僚が前の勤務先にいた。周囲から恐れられていたが、本当はお茶目で優しい方だと私は知っている。たくさん学ばせてもらった先輩の一人だ。
 仲の良い先輩Aが組長似の強面のK先輩に、に会ってから1週間くらいで
A:「○○さん、山口組組長 司忍に似てるって言われたことありませんか?」と半笑いで聞いていた。なんて人だ。
 その組長似のKさんは「ハハッ」と笑って誤魔化していたが、会ってから1週間の人に暴力団の組長に似ていると言われませんか、と直に聞ける神経が知れない。Kさんも黒いセカンドバッグを持っていたのでまぁそれは司忍に見えたのだが。

 話が逸れた。

 ある1枚の希望調査を見た。そこには私を希望した理由がこう書いてあった。

「世話になってるから」


同僚が笑って言う。「もはやKEITA組、組長じゃないですか」

「お世話になってるから」
「世話になってるから」

1文字入るか入らないかでかなり印象が変わる。

そろそろ元同僚を見習ってセカンドバッグを買ってみようかと思う。




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