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「事業開発をやってみたいなら、事業開発をやるしかない」というキャリアのお話

久しぶりの投稿ですが、なんだか人を食ったようなタイトルで恐縮です。

私は2024年2月現在、スパイダープラスの執行役員として商品企画の責任者をしています。
商品企画と言ってますが、当然ながら事業戦略あってこその商品戦略でもあり、販売戦略も立てる必要があるため、
やっていることは事業企画(事業開発+商品企画)みたいな感じです。

事業成長のためには新たな事業・商品をどんどん生んでいく必要があるし、
既存の事業や商品も、さらに売れるようにする必要があります。
言うたらシンプルですが、やるのはまあ、そこそこ大変です。

では何が大変かと聞かれたら、真っ先に「人材採用」だと答えます。

なんといっても、世の中に「事業や商品ですか?ぼく作ったことあります!初年度から10億円以上の利益が出てウハウハしてましたねえ!」なんて人は、めったにいないわけです。
「事業開発を担える人材」を採用するというのは、希少性の高さもあり、とっても大変です。

これが大企業の事業開発なんかだとまあまあいたりするんですが、
話を聞いてみると、自分がリーダーではなかったり、経営管理がメインだったり…ちょっと違うなあとなるわけです。
本質的にベンチャーに欲しいのは「潤沢ではないリソースから、不確実性の高いチャレンジをして、成果を出した人材」であって、
「潤沢なリソースを元に、確実性の高いオペレーションで成果を出した事案にかかわった」という人材は、ベンチャーのニーズとはちょっと違うわけです。

(もちろんアジャストできる可能性も十二分にあります)

一方で「ベンチャーで事業開発をやりたい」といった気持ちを持っている方は多いようで、
先日出したばかりの事業開発の人材募集にも、かなり多くの応募をいただいています。

しかしながら、事業開発というのは非常にあいまいです。どんなスキルや経験が必要なのかも、未経験の方にはイメージしづらいと思われます。
そんなわけで、「事業開発というキャリアを歩みたいのなら、どんなスキルが経験が必要なのか」ということを書いていきたいと思います。

なお、今回の内容は主にBtoB事業の責任者クラスを想定して書いています。
私自身もモバイルゲーム事業をやっていたこともあり、本質的には同じだと思っていますが、toCだと若干異なる部分もあるのでご承知おきください。


営業ができなければいけない

さて、初球からど真ん中ストレートを投げ込みます。
事業開発において「営業ができなければいけない」。これは必須条件です。

なぜかといえば、商品が売れなければ事業が成り立たないからです。
当たり前のようですが、このことが見過ごされるケースは非常に多いと思われます。
では、なんで営業ができないといけないのか?

①そもそも、売れる状態を作れない

作った商品やサービスを誰が最初に売るのか?その責任者はまぎれもなく、事業開発担当のあなたです。
商品の魅力を一番知っているのもあなた、顧客のことを一番わかっているのもあなた。
なのに、自分で売れなくてどうするのか?
他の人が「売れませんでしたー」って言ってきたら、それを真に受けて事業を畳むのか?という話です。
売上と利益の最終責任を持つなら、自分で売れる状態にできないと到底グロースしないのです。

「自分の仕事は企画!営業するのは自分の役割じゃない」という考えは、絶対に失敗します。
大事なことなので2度言います。絶対に失敗します。

②売上計画のテコ入れができない

上記と似たような話ですが、事業計画を達成しようとしたら、大抵は何らかのテコ入れが必要になります。
それは大体、対象商品の<商談数・成約率・成約単価・継続利用率>のいずれかが目標より良くないときです。

それらKPIの背景となる組織状況や販売プロセスを正確に理解し、テコ入れをするのも事業開発責任者の役割です。
「なんで売れへんねん!気合が足らんのとちゃうか!」とか言っていても、売れないもんは売れんのです。

余談ですが、以下ツイート(ポストとは呼ばない)で言及している「セールス改革」も、要はそういうことをやっていました。
既存商品の売上を伸ばすために、営業戦略・販売手法を見直し、人事評価制度にも踏み込んでいます。
これができないと、よほど優れたプロダクトに恵まれないかぎり、事業は縮小の一途をたどります。

③インサイトを発見できない

事業や商品とは、顧客のインサイト発見から始まります。
細かい話は省きますが、要するに「売れる理由」を見つけるということです。
そのさい、必要なのは顧客へのヒアリングと洞察です。色んな角度から顧客の感情、業務プロセスや組織課題など、
並々ならぬ労力をかけてビジネスチャンス=インサイトを発見していくわけです。

基礎的な顧客対面能力がないと、まともなヒアリングすらできません。
信用されなくて、本当のことを教えてもらえなかったり、上司や同僚を紹介してもらえなかったりします。
営業を経験したからといって、インサイト発見ができるようにはならないのですが、顧客からインサイトを引き出すためには必須スキルだと考えられます。

ここでいう「営業」とは、必ずしも営業組織での経験を指すわけではありません。
ただ少なくとも、いざとなれば自身で顧客に接し、自身でお金を稼ぐということができなければ、事業開発をするのは極めて難しいと考えます。

ちなみに私も、とにかく顧客に会うことを重視しています。
前述のツイートも、とにかく営業同行にいって一次情報を収集し、営業戦略を抜本的に変える意思決定をしたことが背景にあります。
オフィスにずっといながら良い企画ができるなら、誰も苦労しないのです。

ITがわからなければいけない

続いてはあまり異論のない話かと思いますが、ITの知識はほとんどの場合において必須スキルです。
では、なぜITの知識(主にPM・ディレクションの知見)が必要なのでしょうか。

①エンジニアと会話できない

根本的な問題はここです。
あなたに優秀な事業開発能力があっても、実際にモノを作るのは(たいていの場合)エンジニアです。
「いい企画作ったから、あとはよろしく!」なんてわけにはいかないのです。

例えば企画を開発要件に落とし込むとき、技術がわからないと、対等な会話が成立しません。
-エンジニア「この案件、最新の言語なんでGo使ってみていいすか?」
-企画者「(全然わからん)ええんやで」
みたいな流れで、めちゃくちゃ重要な意思決定をしてしまうこともあります。

※上記の例は単純化していますが、実際に類似の例はいくつも見ました。そのどれもが、新技術の恩恵を受けるよりも、「新技術に対応できる人を採用できない」という壁にぶちあたっていたものです

②QCDの管理ができない

上記にも含まれますが、ITのことがわかっていないとQCD(品質・コスト・スケジュール)の管理ができません。
よくあるケースだと、開発会社に過剰な見積もりで提示されていることに気づけないとか、開発チームが重要ではないことにリソースを割く結果を招いているなどです。

自分が初めてモバイルゲーム開発に携わったさいも、ITの知識はあまりなかったです。
それでも幸いにして、優秀なエンジニアの方がうまくリードしてくれたおかげでプロジェクトが進み、
なんとかローンチにこぎつけることができました。
しかしながら、それは全員がタクシー帰り・休日出勤どんとこいという状況下だからこそできたことであり、今の時代だとまったく再現できません。
もっと上流からプロジェクト全体をコントロールすることが求められます。

ITの知識をもとに、全体のQCDをコントロールできなければ、再現性ある事業開発は難しいでしょう。
※当時の記事「モバイルサイトにウンコの絵文字が表示されて死にかけた話」

事業のことがわからないといけない

最後に、「事業」の話です。
事業がわかるというのが、どういう状態を指すのかは非常に難しいですが、よくあるポイントを列挙します。

①自分で優秀な人を集め、動かさなければならない

特に最初にぶち当たる壁はここです。
私見ですが、特に大企業の出身者やコンサル出身者が最初に面食らうポイントはほとんどここだと思います。

ベンチャーの人材は非常に限られています。新規事業を立ち上げるからといって、必要な人材がそろっているというケースは多くありません。
それなりに経験を積んだ優秀な人材というのは、基本的に既存の中核事業にアサインされています。そのため事業プランを作ったとしても、大抵は人材を”社外から”採用する必要があります。

また、事業開発側の人材を集められたとしても、社内を動かすというのも必要です。
ルールの整っていないなかで、営業や開発を動かすためには、自分から「動かす理由」を作らなければなりません。

企画を詰めながら、人材を採用し、場合によっては評価基準から見直したりしつつ、
営業や開発のミッションともすり合わせつつ、一気に動かしていく…
こんな、細やかかつ大胆な動きをしないと、新しい事業というのは立ち上がりません。

「人は足りないし、制度も整ってないし、なんなら社内の理解も得られていない」といったところから、とにかく人を集めて動かす。
ベンチャーの事業というのは、こういうところをクリアする泥臭さが必須です。

②魅力的なプランを作らなければならない

当たり前ですが、魅力的ではない事業プランにヒト・カネが投資されることはありません。
いくら頑張って作ったプランでも、他にもっと魅力的なプランがあれば、そちらが優先的に投資されます。

この「魅力的な」という部分を理解することが、なかなか大変です。
経営の戦略を理解し、市場的な価値を理解し、数年スパンで戦略に合致した企画を作る必要があります。
しかしながら、ある程度の規模の会社になってくると、経営や市場のことを理解するのも大変になってきます。
他にやることがどんどん増え続けている経営層の時間をとるのが、どんどん難しくなってくるためです。

そんな状況下で「魅力的な」プランを作るためには、社内的な立ち回りも重要になってきます。
合間をぬって経営層と会話する時間を作ったり、キーパーソンに相談したり、社内の支持者を集めたり…といった動きが必須です。

なぜなら、魅力的かどうかを決めるのは会社だからです。

そこを理解せずに、「こんなにいい企画なのに会社が理解してくれない!」と叫ぶのは、何の意味もありません。

③”商売”=マーケティングしなければならない

抽象的な話ですが、事業とは要するに商売です。
商売とは、「顧客にたくさん買ってもらい、売上利益を伸ばすこと」です。
そのためには、顧客に対して魅力的な価値を提供しなければなりません。

魅力的な価値を提供すること自体が、商売でありマーケティングです。

ここがもっとも理解しづらい部分だと思います。
マーケティングについては以下の記事で書いてますが、それなりに複雑です。

マーケティング戦略のかなり最低限な作り方入門

三浦のnote

上記は戦略の話ですが、実際には実行にあたって色々な問題をクリアしていく必要があります。
人を集めたり、人の問題に向き合ったり、財務的な問題と向き合ったりなどなど…戦略を実行するには、ものすごくタフな仕事をこなさなければなりません。

ここで語ってしまうと、それだけで記事の1本2本ができてしまうような話なので割愛しますが、まあ商売をするのって大変なのです。
やったことがないと、絶対にわかりません。

いわゆるサラリーマンとしてキャリアを積んできた人が、いきなりこの視点に立って動くのは、けっこう難しいと思われます。

結局、やってみないと身につかない

ここまで書いてきたように、事業開発には営業×IT×事業視点というスキルセットが必要になります。
もちろん、最初からこのようなスキルセットを持った方がいるかというと、非常にレアです。

多くの企業はこのように多様な経験ができる社内キャリアはないため、
キャリアチェンジ=転職をしながら事業開発に必要なキャリアを積んでいく必要があります。

私のばあい、3回の転職(うち1回は出戻り)において、やることは毎回変わっていました。
その結果、営業×IT×事業のスキル・経験を得ることができ、いま事業開発を担えるようになったと考えています。
(正直、転職のたびに給与は大幅ダウンしていましたが…チャレンジする機会を得るための非常に良い投資だったと思っています)

長々と書きましたが、要するに伝えたいことは以下です。

  • 営業×IT×事業開発のスキルが、事業開発には必須

  • 事業開発をやってみなければ、事業開発スキルは身につかない

  • いきなり全部やれなくても、段階を踏んで経験していく

スパイダープラスの事業開発の募集についても、この記事の内容が念頭にあります。おおよその考え方でいえば

・責任者:営業×IT×事業の全経験や成果実績がある
・リーダー:上記のうち2つがそろっている(大抵は営業とITのいずれか+事業経験)
・メンバー:どれか1つはある

といった想定です。
いきなり全部できる人はまずいないので、段階を踏んで成長をしていってもらいたいと思っています。

この記事を読んで、事業開発ができる人材へのキャリアを歩みたいと思った方がいれば、ぜひご連絡をいただきたいです。
思った以上に長文になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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三浦 慶介 | 事業グロースのひと
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