BoN Voyage 🇧🇬🇬🇷
居心地が良くて6日間も滞在したブルガリアはソフィアの最終夜、飛び込みで観戦した地元リーグの想像を遥かに超える盛り上がりに興奮覚めやらず、つい夜更かししてしまった。
バスターミナルまで歩いて10分の立地に宿をとっていたという油断もあるが、朝の便に乗るのにパッキングもせず寝てしまい、結局大慌てで宿を後にして、発車時刻7:30ぎりぎりの7:20にターミナルに到着。
結局毎度と同じくターミナル内の無数のバスの中を走り回りながら目的地のテッサロニキ行きを探す。
しかし、探せども探せども見つからない。流石に焦る。もう発車時刻まで2分とない。
そんな中、同様にバス毎に聞いてまわっている女性と鉢合わせる。
彼女と話してわかったのだが、どうやらチケット会社からバス会社が変更になる旨のメールが今朝届いていたようだ。パッキングで大忙しだった僕は当然見落としている。
確認すると、「バス会社が変更になったから、バスの表示見るか運転手に直接聞いてね。楽しい旅を!」というフワちゃんよりふざけた内容のものだった。
しかし、こんな時は同じ境遇の味方は心強い。
と思っていたのも束の間、彼女は何やら現地スタッフと話すと、僕には一瞥もくれずにスタッフと走り去っていってしまった。
情報共有してほしいなと思いながらも、既に7:30を迎えている緊急事態。焦って早口にまくしたてている彼女の英語についていけるはずもなく、バディとして見限られたのは明らかだ。予選敗退でーす。
海外チーム移籍してパスこなくなる日本人の気持ちってこんな感じなのかな。なんて途方に暮れている暇もないので、僕は僕でまたバス巡りを再開する。
すると、今度は同じように走りまわっている子連れの4人家族が。
見たところブルガリア人であろうパパとは「テッサロニキ?」「テッサロニキ!」とそれだけでお互いの状況を理解し合うことができた。
お互い拙い英語なので逆に意志疎通がスムーズである。
そして、パパとは何となく手分けして探すことを共有し、また走り始める。
そして遂に、新たに到着したバスに「Yesテッサロニキ」というドライバーを発見したのだ。
僕は肩が外れるほどの放物線を描いてパパに合図をする。最高の笑顔。身軽な僕と違って、小学生くらいの子供2人と妻を連れた家族旅行の重みは計り知れない。
そのバスの周りには、いったいどこに潜んでいたんだというくらい大勢のテッサロニキ難民が集まってきた。皆不安から解放されたのか、独特のふわふわとした一体感が漂っている。
しかし、その中に走り去っていった彼女を見つけることは終に叶わなかった。
彼女は一体どこに行ってしまったのだろう。
諦めてしまったのか。それとも何か別のルートがあったのだろうか。
願わくば彼女の姿をギリシャの地で拝みたいものである。
フランシーヌ人形の最期に想いを馳せるギイ・クリストフ・レッシュとそんな自分を重ねながら、30分遅れの午前8時にバスは出発した。
フロントガラスに貼られた「BUCHAREST(ブカレスト)」の表記に一抹どころではない不安を抱えながら。
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