慶應カレンダー2022出来!
早いものでそろそろ来年のカレンダーのことを考える時期にさしかかってきました。
彩り美しい和・洋の貴重書を12カ月にあしらった「慶應カレンダー」。さる11月10日に、2022年版を刊行しました。
昨年は刊行開始から20年を迎える節目の年ということで、監修者の関場武氏(慶應義塾大学名誉教授)に、20年を振り返ってその思いを執筆していただきました。
今回も監修者の関場武氏に、「慶應カレンダー2022」に収録した貴重書のなかから数点を選び、ご紹介頂きました。
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KEIO CALENDAR 2022
慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)機構長の松田隆美文学部教授や大学附属研究所斯道文庫長の佐々木孝浩教授のご協力を得て、KEIO CALENDAR 2022が出来上がりました。慶應義塾や図書舘、斯道文庫等が所蔵する典籍・美術品の中から、季節感や地域性を考慮しつつ尤品を選び題材としており、今回もまた、メディアセンター貴重書室の倉持氏をはじめとするスタッフの方々にお世話頂いております。以下監修者として、2022年版の中から数点を選び、紹介申し上げたいと思います。
まず、何と言っても5月:三代歌川広重の「東京高輪海岸蒸氣車鉄道ノ圖」です。これは2019年~2021年の春にかけて、JRの新駅・高輪ゲートウェイ西側の再開発工事で出土した「高輪築堤(たかなわちくてい)」を描いたもので、新聞・テレビ等で報道され注目を浴び、時の文科相も保存公開の検討を要望しています。玩具のような蒸気機関車ですが、それを目当てに見物の人々も集まり、左手には新橋駅から7番目に当たる「第七橋梁」がハッキリと描かれており、貴重な記録です。まだビル等が建ちあがっていない現在、筆者などは、品川から高輪ゲートウェイ→田町へと向かう山手線や京浜東北線の車窓から左手を眺め、英国人技師の指導を受け、お台場の石を活用して築かれた波打ち際の石垣の上を走る文明開化期の鉄道の在りし日の姿を偲んでおります。
歌川広重(三代)「東京高輪海岸蒸氣車鉄道ノ圖」
1871年10月
次に2月の「紺紙金字観普賢経」です。以前、その一部が斯道文庫に寄託されていましたが、2021年、ご厚情によりセンチュリー文化財団の赤尾氏から慶應義塾に一括寄贈された一群の美術品の中に含まれているもので、極彩色の観音・勢至菩薩の情趣豊かな合掌姿と、紺紙金界に金字で整然と記された経文とが相俟って、平安時代極末の荘厳かつ優雅な経巻となっています。
紺紙金字観普賢経(基親願経)
1180年
1月「十二月節」の、子供たちが毬杖(ぎっちょう)に興じている姿や、6月の北フランス、パリの時禱書の大鎌で干し草を刈る姿も捨てがたい可愛らしさがありますが、8月、広重「京都名所之内・糺川原(ただすがわら)之夕立」の画面左側、慌てて茶屋に駆け込む人々の様子、9月歌麿の「狂月坊」の里芋を洗う親父と母親・子供たちが仲秋の名月(=芋名月)を共に愛でる構図など、挙げて行けばキリが無い興趣溢れる名品・名場面の数々です。
『十二月節』〔正月〕〔江戸時代中後期〕写 絵巻 上巻
ただ、今にして思うと、表紙は、前と後ろを逆にしたほうがインパクトがあった(陶山の「画引小學讀本」を前に、島次三郎の「〈幼童〉小學近道」を後表紙に)なとか、12月の浅草寺の年の市も、清親の明治版をメインにして広重をサブにしたほうが締まったなとか、同じく12月の壁紙の色を監修者指定の「御所染」にどうして出来なかったのだろうかという思いが残ります。解説も字数制限があり、例えば「〈幼童〉小學近道」では、江戸後期に流布をみた往来物「近道子寶」と関連付けて説明すべきだったとか、色々欲が出てきます。現時点ではこのラインアップが最善のもの、お出ししたこの2022年版が最高に贅沢なものであるということでお許しを乞い、次に繋げて行けたらと思っています。
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