「特別支援教育情報活用能力を育む授業づくり」 熊本大学教育学部附属特別支援学校 編著
本書の整理
VUCA時代の情報活用能力を育む教育
VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧さ)が高まる現代社会では、知識の習得だけではなく、情報を適切に活用し、問題解決へと導く力が求められるようになった。「情報活用能力」とは、様々な事象を関連づけて理解し、情報を適切に活用して問題を発見・解決する力である。この能力は、学びの基盤となる重要な資質・能力である。
情報活用能力を育成するための学習内容
基本的な操作能力の習得
現代社会においては、タブレットやスマートフォン、パソコンなどの情報機器の操作能力が欠かせない。そのため、これらを使いこなす力を丁寧に育て、日常的に情報収集や発信、整理する力を養う。問題解決・探究における情報活用
実生活で直面する課題を題材にし、情報収集や整理、試行錯誤を通じた問題解決に取り組む場を提供する。プログラミング的思考の育成
簡易なプログラミング学習を通じて、論理的に問題を解決する力を高める。情報モラルとセキュリティの指導
SNSやインターネットの活用が進む中で、適切なコミュニケーションや個人情報保護といった情報モラルを理解し、安全に情報を扱う能力を養うことが重要である。
情報活用能力を育む授業作りのポイント
1.基本的な操作を学ぶ機会の提供
学習計画を工夫し、教科横断的で系統的な学びの保証に留意し、「参加(知っている・できる)」レベルの学習機会を確保する。
2.理解を深める学習の確保
課題解決型・プロジェクト型学習を導入し、既有の知識や技能を活用して生活の中での課題を解決しようとする意欲を高める。
3.自己設定の課題による必然性の醸成
自分自身の課題を設定することで、学習に対する必然性を感じ、積極的に課題に取り組む意欲を高める。
4.フィードバックの工夫
「言語化」「可視化」「視覚的即時フィードバック」により生徒の理解を促し、学んだ内容を実際に活用する力を育んでいく。
まとめ
特別支援教育における情報活用能力の育成の目的は、「生徒が主体的に情報を活用し、自ら課題を設定し、解決に向けて行動できるようになること」である。これを達成するためには、段階的な目標を設定し、それに向かって授業を通じて生徒の成長を記録・共有することが重要だと感じた。こうした記録や共有の過程が、生徒自身の成長を見える形で示し、自信を持たせることで、さらなる成長意欲を高める基盤になると考える。