見出し画像

「学力の経済学」 中室牧子

本書の整理

学力向上と子どもを育てる環境について

1.子どもの学びに報酬を活用する
 
子どもは、長期的な利益よりも目の前の短期的な満足感に反応しやすい傾向がある。そこで、学びに対する具体的な報酬を与えることで、学習意欲が向上し、学力が伸びることが示されている。ただし、この報酬は「能力」ではなく「努力」を評価する形で行うことが重要である。例えば、子どもが「毎日10分間漢字を練習した」という行動に対して具体的に褒めることが、子どもの継続的な努力につながる。

2. テレビやゲーム時間の制限は学力向上に直結しない
 
ゲームやテレビ視聴時間を制限しても、学習時間が自動的に増えるわけではない。本書では、1日1時間程度のゲームやテレビ視聴は学力に大きな影響を与えないことが示されている。重要なのは、子どもが自ら学習に取り組む仕組みを作ることである。

3. 因果関係と相関関係を理解する
 
メディアなどでは、「○○が子どもの学力に良い」という話題がよく取り上げられる。しかし、その多くは「相関関係」にすぎず、実際の「因果関係」を証明するものではない。例えば、「家庭に本が多いと子どもの学力が高い」というデータがある場合、これだけでは因果関係があるとは言えない。一方で「家庭で親が子どもの宿題を見る時間を増やす」という介入を行いその結果として、子どもの学力が向上することが明らかになれば因果関係となる。見せかけの情報に惑わされず、科学的な根拠に基づいて判断することが大切です。

4. 環境が全てではない
 
学力向上には、子どもを取り巻く環境が一定の影響を与える。しかし、周囲の学力が高い環境が効果を発揮するのは、もともと学力が高い子どもに限られるという研究結果がある。一方で、全ての子どもにとって重要なのは、「良い先生」との出会いである。 良い先生とは、「学力向上=付加価値を生み出せる先生」とされている。ただし、単に学力を上げるだけでなく、子どもが自ら伸びる力を引き出すことができる先生が、子どもの成長に大きく貢献する。

5. 非認知能力の育成が重要
 
学力だけでなく、非認知能力(まじめさ、自己管理、コミュニケーション能力)を高めることが、将来社会で活躍する基盤となる。特に「やり抜く力」や「自制心」を育むことが重要である。
やり抜く力: 自分の能力は努力次第で伸びると信じる力
自制心: 細かい計画を立て、記録し、達成を管理する力
 非認知能力は、家庭や学校での関わりの中で育まれるため、周囲の大人の関わり方が鍵となる。

まとめ

 教育において大切なのは、科学的な根拠に基づいた実践である。本書から得られた知見に基づいて、子どもたち一人ひとりの成長を支えるためのエビデンスに基づいた実践を行なっていく。


いいなと思ったら応援しよう!