田中 公孝 | 杉並PARK在宅クリニック

滋賀医科大学医学部卒業。家庭医療専門医。2017年4月 三鷹で訪問診療立ち上げを経験。…

田中 公孝 | 杉並PARK在宅クリニック

滋賀医科大学医学部卒業。家庭医療専門医。2017年4月 三鷹で訪問診療立ち上げを経験。市や医師会のICT事業などにも関わる。2021年春 東京都杉並区西荻窪の地に「杉並PARK在宅クリニック」開業。 https://www.suginami-park.jp/

最近の記事

自分の中の経営にまつわる話

当院は、創業者である自身の想いをもとに作ったクリニックだったので、当初から中小企業規模でありながらもMVV経営の実践を意識してやってきました。 そんな私の中の経営にまつわる話を今回はnoteでまとめてみたいと思います。 1. 当院のミッション、ビジョンについてミッションは、創業者の姿勢そのもので、ビジョンは、その後、訪問診療で成し遂げたい絵として掲げました。 医療という立場から人の生き方、組織の在り方などを探求して、現状に対する違和感をあるべき姿に変えていきたい、という想い

    • キャリアを語れるカルチャーづくりへの挑戦

      最近は、組織開発にハマっていてもはや趣味と呼べるレベルで没頭しています。エンゲージメントサーベイは組織を考える材料をたくさん与えてくれていますし、1on1が板についたことでスタッフ1人1人の考えに触れ、声を掛ける内容や接し方も知らなかったらそうは変化しなかったと思う場面も増えてきました。 見えてきたのは働く女性のキャリアへの関心と課題感 ヒアリングしていて気づいたのは、働く女性のキャリアへの関心と課題感が全員高いという事実です。ネガティブな事例を見て強く自分事化したり、キ

      • ’連携’というビッグワードな概念を紐解く

        在宅医療介護の現場では、さまざまな職種が関わり、チームを形成し、連携して仕事をしていきます。先日も2件終末期の患者さんをお看取りしてきましたが、看取り直前の数日はどちらも多くのやりとりを訪問看護さんと重ね、時間をかけた印象があります。 こういった事例を経験すると「連携は大事」という想いを新たにします。しかしながら一方で、そうではない連携不全な事例があるのも事実です。もちろん、そこまで複雑な状況ではなく患者さんや家族も比較的穏やかな事例で連携する密度が高くなくてもワークしてい

        • 在宅の困難事例には、解決しやすいものと解決しにくいものがあるという話

          先日、とあるベテランのケアマネジャーさんと話をしていて、「困難事例と呼ばれるくくりのなかでも解決しやすいものと解決しにくいものがありますよね〜」という話になりました。事例検討会と呼ばれるものは各地で開催されていますが、言語化がまだまだな分野だと思いますので、最近スタッフとも整理した内容を含めて共有したいと思います。 そもそも、ここでいう困難事例とは、「本人・病気・家族・環境要因で問題・課題の複雑度が高い患者さんのケース」を指していて、在宅医療・介護の分野ではよく使われている

        自分の中の経営にまつわる話

          訪問診療は、人生を深く考えられる仕事機会かもしれない

          最近、採用や働きがいなどを考えるにあたり、この訪問診療という仕事の意義を自分なりに考え、スタッフと話をすることがあります。 クリニックという仕事の要件スキルを挙げると各専門職の知識・手技以外にコミュニケーション能力とか、業務の組み立て力・遂行力みたいなものが特徴で、特に現場観察力・仮説検証力・個別提案力あたりがご自宅に伺う訪問診療という仕事には重要だと思うのですが、それだけだといわゆるビジネスの現場の営業・マーケティングといったポータブルスキルの方がキャリアのステップアップ

          訪問診療は、人生を深く考えられる仕事機会かもしれない

          PARKで目指すそれぞれのWILL

          杉並PARK在宅クリニックは、私があるべき未来を実現するために立ち上げました。 一方で、私だけでなく、一緒に未来を目指してフォロワーとなってくれたスタッフにもそれぞれのWILLを実現してもらう場やきっかけにしてもらいたいと考えていますし、私自身も伴走していきたいと思っています。 ちなみにここで言うWillとは、いわゆる「やりたいこと」です。 参考:Will Can Mustとは? フレームワークとWill Can Mustシート つい最近もさまざまな分野の勉強会やゼミ

          PARKで目指すそれぞれのWILL

          人生の最期に関わるとき、俯瞰する視点を必要とする

          訪問診療を通して人生の最期に伴走していく中で、ご本人とご家族の間にある関係性とシステムの再構築について検討する機会がしばしばあります。今回は、その経験の共有と、どう取り組むとよいか私なりに考えていることについて書いてみたいと思います。 例えば、これまで遭遇してきた代表的な事例として、 ・なるべく子供達に迷惑をかけないようにしてきたご本人。 ・忙しくてあまり実家を訪れず、関わりきれなかった子供達(子供達といっても50-60代の方がほとんどなので、私からすれば大先輩ですが)。

          人生の最期に関わるとき、俯瞰する視点を必要とする

          在宅医療と価値観と役割、そして関係性

          最近在宅医療を提供していて感じているのが、その家、その家の価値観や関係性に我々の関わりも大きく左右されるということ。 例えば・・・ ・本人と家族の関係性が情緒的にうまくいかない事例で症状の度に在宅医療が間に入る(逆に家庭内で対応できる場合は相談の電話がかかってこない) ・頑固な(一種の成功体験がある)高齢患者さんの価値観を尊重にして薬や方針を提案する ・意思決定をする人と一番介護に携わる人が異なる、といった家族の役割分担を把握して、誰と何のコミュニケーションをとるか判

          在宅医療と価値観と役割、そして関係性

          最期に会いたい方はいますか?

          先週も1件、自宅で最期を望む高齢者の方をお看取りをさせてもらいました。在宅医療に携わっていて、いくつもの季節を重ねていますが、季節と季節の変わり目が一番お看取りになることが多いというのが体感値です。私の友人も体調が少し悪い、という話を同時期にされていましたが、気温の変化や台風などの気圧の変化は総じて我々の体に変化を与え、ギリギリまで灯してきた命の火に影響を及ぼす大きな事象なのだと感じます。 さて、私は看取りの技術について自分なりに体系化をして日々言語化に努めていますが、その

          最期に会いたい方はいますか?

          人生の最期は様々な葛藤・感情が溢れ出る

          前回は、価値観・人生観にフォーカスして診療をしているというお話をしましたが、今回は家族背景・社会背景を見ることも同じくらい大事、という話です。 一見穏やかに見えるご家庭でもそのお家そのお家で事情があります。人生の最期や病気になってしまった、という極限的な場面では、その時に抑えられていた感情や、これまで手につけてこなかった家族間の問題が出てくることがしばしばあります。 特に人生の最期をみる在宅医療において遭遇するのが相続・遺産関係、そしてこれまでの人間関係。 病状が進行し

          人生の最期は様々な葛藤・感情が溢れ出る

          在宅医療のキモは、価値観・人生観にフォーカスすること

          前回は訪問診療という新しい医療の分野の中でも、看取りに向き合う心構えについて紹介しました。その続きです。 そもそも在宅医療は、ご自宅での生活を基本に提供していく医療なので、患者さんやご家族の方がホームグラウンドの場所であり、私たちがお邪魔している形になります。ここが病院の構造と異なるところであり、通常イメージする病院のルールを遵守することの逆で、ご自宅ルールを大事にする必要があります。 例えば、最期までタバコを吸いたい方を無理に止めることはしなかったり(もちろん家族がやめ

          在宅医療のキモは、価値観・人生観にフォーカスすること

          人の人生の最期との向き合い方〜心構えについて

          私は日々、医師として、院長としてご自宅に訪問して診療を行っています。主に80-90代の高齢者で認知症や骨折して動けなくなった方ですが、若くして脳卒中となって倒れた方や難病を抱える方もおられます。その中でも常に癌の末期状態の患者さんを担当している状態がかれこれ開業してから3年を越え、毎月のようにお看取りに関わらせてもらってきました。 そうこうしている中で、自分の中に一定の方法論と言いますか、哲学的なところが経験的に身についてきたので、今回は、日常の診療や出来事について紹介しな

          人の人生の最期との向き合い方〜心構えについて

          地域医療連携の今の潮流とは?

          こんにちは。ぴあ訪問クリニック 三鷹で院長をしている田中です。 今回は、年々変化をしている病院とクリニックの地域医療連携のリアルについてお伝えできたらと思います。東京に限ったことかもしれませんが、体感としては、2-3年で変化するイメージなくらい、早いスピードで刻々と変化している印象です。 退院時カンファレンスの開催が多くなった 退院時カンファレンスとは、患者さんがご自宅に退院される際に送り出す病院側の医師、看護師、ソーシャルワーカーと受け入れる訪問サービス(訪問診療、訪問

          地域医療連携の今の潮流とは?

          当院が提供している「自宅看取り」について

          こんにちは。ぴあ訪問クリニック 三鷹で院長をしている田中です。 昨今、「日本は病院での最期が多すぎる」というお話を耳にする機会が増えましたが、今回は、当院が取り組む自宅看取りについて紹介したいと思います。 多職種で家族をサポートしていく「自然看取り」の推進以前、よく連携している薬剤師の方に「当院の看取りは特徴がある」というコメントをいただき、ハッとしました。これまでの有名な在宅医の先生と比べるとスタンスや得意とするシチュエーションが違うと。 それを言葉にすると、 「自

          当院が提供している「自宅看取り」について

          在宅医療ICT最前線①〜MCSの使用経験について

          こんにちは。都内で在宅クリニックの院長をしている田中です。 これからnoteでリアルな在宅医療現場の発信をしていければと思いますのでフォローの程、よろしくお願い致します。 初回は、当院が開業当初より現場の迅速な情報共有を目的として、力を入れている医療介護専用SNSについての経験と知見を紹介させてください。 在宅医療ICTとは? 三鷹市では、地域医療介護連携で迅速な情報共有を目的として、医師会公認でMCS(メディカルケアステーション)を導入しています。これは、インターネッ

          在宅医療ICT最前線①〜MCSの使用経験について