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なぜ差別化が必要なのか?ということを改めて理解する大切さ
社内を歩いたりいろいろな事業部の会議に出ていると、「うちの事業はお客さんが他社と同じものをもってこいというので”差別化”が利かない、理想論だ」という話を聞くことがある。他にも「顧客が単価を上げられないからコストダウンしかやることがない」というような話も聞く。
こういった話を聞くとその事業がおかれた環境のことを色々と考えながら、「まだ考えが足りないな」とか「たしかに差別化はしづらいけど、もうちょっとやりようはあるのではないか」と思うことが結構多い。
そんな”差別化”がいかに大切かということについて、年配の人はもう先が短いので置いておいて、若い子も分かっているようでちゃんとした理由を分かっていない人も多いと感じるたびに社内の若い子には完全市場の話をしていかに付加価値を上げて差別化することが大切かを話すようにしている。
今日はそんな差別化についてちゃんと理解するとグッと考えの幅が広がるというような気がして若手に気が向いたらしている話について。
■こんな市場がもしあったら儲けるにはどうしたらよいか
まず一つ、こんな例え話をする。
「こんな市場がもしあったらどうなるか?」という市場環境を想像してみる。
1)企業の提供するサービスや製品が同業他社と同じである
2)その市場に他社が新しく入ろうと思えば参入する障壁は低く撤退も簡単にできる
3)製品やサービスを作るための人や技術も会社間で移動できる。
4)その製品やサービスを作るための情報を各社が同じようにもっている
5)市場にはたくさんの企業がいて、どの企業も市場価格に影響を与えられない
これら5つの条件が満たされるような市場があった時に企業の業績はどうなると思うか?というディスカッションをしてみる。
この市場でもしプレイヤーとして参加していたらどういう競争になるだろうか。一見ありえない前提のように思えるが、実は結構こういった産業というのはあるし、自分の会社も少なからず当てはまるということが分かってくる。
こういった市場では企業の業績はどういったものになるか。
■ 利益を上げるために最も大切なこと
先ほどの例をあげた市場環境がもしあったとしたらどうなるか。
いきなり答えを上げると、
完全市場は全く儲からない
というのが答えだ。
完全にサービスや製品の品質が同じで、完全にそれを作るための情報をお互いにもっていて、完全に参入が誰でもできて、完全に人や技術の行き来ができる市場というのを完全市場と言っている。
こういった市場では一切儲けることができないので、各社は自社のコストを賄うだけでそれ以上の利益を上げることはできない。
どういうことか簡単に説明するとこういうことだ。
・もしA社が利益を上げて儲かっているとする。そうするとそれを見ていたB社やC社も同じものを作り始める。参入する難易度も高くないし製品を作るためのノウハウももっているので容易に参入することができる。
・品質が同じという条件もあるので、もし品質が同じであればB社やC社は値段を下げるしかない。各社は1社では市場価格をコントロールできる規模でもないので、そうするとA社とB社とC社で値段での競争を行い、各社利益がカスカスのところまで値段を下げる。
・こうなると誰も儲からず、その製品やサービスをつくるために支払ったコストを回収することしかできないので、全く儲からない市場が出来上がることになる。
経済学の世界ではこういった市場を”完全市場”と呼んでいて、完全市場に近い産業ほど利益が上がらないということを説明するときに使われる理論で、それをかみ砕いたのが上記の説明になる。
■差別化をいかにして実現するかヒントが隠れている
完全市場がもし、完全にサービスや製品の品質が同じで、完全にそれを作るための情報をお互いにもっていて、完全に参入が誰でもできて、完全に人や技術の行き来ができる市場だとしたら、ぼくらができることはそういった市場でビジネスをしないことしかない。
完全市場に近いビジネスで事業をやっても儲からないとしたらいくら努力をしても儲からないし、会社が儲からないとぼくらの給料は上がらないことになるのでそういった産業では働く動機が生まれない。
一方で完全市場の条件にはいろいろな事業のヒントが隠れている。そのヒントをたどってビジネスで勝てる要素を考えていくこともできるのだ。
・もしある1社が価格を決める権利があったらどうだろう。
・もし他社とは違う品質の製品を作れたらどうだろう。
・もし自社にしかないノウハウがあってそれを他がマネできなかったらどうなるだろう。
・もし他社が参入しにくい条件があったらどうだろう。
これらの”もし”があったらその市場はガラと様子が変わる。企業は独占的に一位になる可能性もあり、独禁法が問題になるくらい強い権力を持つことができる可能性も秘めているし、ものすごく儲かることができるのだ。
■完全市場と対局の”独占”はとっても儲かる
完全市場の対局にあるのが独占だ。
もし1社だけがノウハウをもっていて誰もマネできないとしたら独占することができる。その1社はいくらでも値段を上げられるし誰も追いつけない製品やサービスを作ることがある。
もしA社、B社、C社だけが市場で商売をしていて他社が入れないとしたらどうだろう。A社、B社、C社は結託して価格を操作することができる。1社が価格競争をはじめればB社とB社も値段を下げざるを得ないので、誰も儲からない価格競争が起きてしまう。
ちょっと考えればそういうことを想像できるので、この3社が合理的な判断をするとすれば「価格競争はしない」ということになる。お互い相談してやってしまえばカルテルになってしまい違法になるが、それに近いようなことは実際に行われている。
企業はすべて独占を目指した方が良いとされている。完全市場からなるべく離れる必要があるのだ。
ここまでの説明でどんなことが言えるか。
それは独占を目指すには「差別化」が重要であるという一言に尽きる。他社と違う品質、他社と違うサービス、他社が参入しづらい状況をつくる。そんな努力をし続けることが企業の成長の原動力になるとういことをこの理論は教えてくれる。
—— 〻 ——
Facebookはあれだけの人数が登録していておそらくあそこまで独占的なプラットフォームは生まれにくい。AmazonもGoogleも同じく圧倒的な数の人がつかっていてプラットフォームとして独占的な地位を構築している。
国家はそういった力を恐れ、いろいろな策を講じているがもはや彼らの力は止められないところまで来ている。それは彼らが多くの差別化されたサービスを提供して、それこと人々から”いいね”をたくさんもらったからに他ならない。
Lineも日本ではほとんどの人が使ってるプラットフォームでこれほど普及するSNSを今から作り上げることは相当難しい。
何も新しい産業ばかりではない。古い産業でも独占を実現している産業というのはある。
例えばビール会社。4社で値段をコントロールして新たに大規模にビールを作る設備やネットワークをつくることができないために独占している。パソコンのOSであるWindowsやiphoneも同じくいまさら切り替えることができないくらい独占的な地位を作り上げた。製薬会社も莫大な研究開発費がかかるのであとから参入することは難しい。
こう考えると今まで世の中にあった製品やサービスと違う道を選ぶことの大切さが本当にわかってくる。差別化をするというのはとても大切なことであって企業の本質といっていい。
こういった差別化ができないとなると完全市場に近づいてしまう。例えば薬局。薬を受け取るだけで何の付加価値もなくプレイヤーが細かいので儲かる要素というのはとても少なくなってしまう。旅行代理店も儲かる差別化の源泉がなくエクスペディアなどの新たなプレイヤーに市場が奪われていてチケットを発見する以上の価値を提供できていない。
■まとめ
このように考えると、企業ができる最も大切なことは、「自社の競争環境をなるべく完全市場から話して独占に近づけるための手を打ち続けるということ」といえる。
マイケルポーターの競争戦略に関する一連の本の本質にはこういった理論があるので、彼は差別化が大切であると説明をしてくれているのだ。
そういった本質を理解したうえで、なるべく独占できる地位をどの企業も目指さないと、市場そのものが完全市場になってしまい全く儲からない産業になってしまう危険性をはらんでいるといえる。
すでに完全市場に近い産業において、やはり差別化を目指して知恵を絞り続ける。そんな発想を常にもちながら仕事をすると、あまり嘆いたり愚痴ることもなく前向きに仕事できる気がするとぼくは考えている。
すぐマネされない差別化ポイント。それをいかに作り上げるか他社と全力で勝負をしているのだ。
ベンチャーにいる人も、起業を目指している人も、昔からある産業で働いている人も常に差別化を意識してビジネスをしていないと他社に仕掛けられる立場にある。
常に良い仲間と知恵を絞りながら差別化を目指す戦いをしたいものだ。
keiky.
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