新しい世界へ
『春ものの苦味を旨味と感じたか 大人になるとはそういうことか』
先日、父宛に小包が届きました。
送り主はあの女の子でした。
その子との出会いは10年前
県庁所在地で小学生対象の児童絵画展があり
父は表彰式に招かれ、少しだけお話をしました。
小学生の絵画は、夢や希望が画面いっぱいに詰まっていて 作品から情熱が伝わってきます。
「大人の皆さん、子供たちの絵を出来るだけ指導しないでください。
子供たちの思うがままに描かせてください。」
表彰式が終わり 展示会場で
エネルギーあふれる絵画に引き寄せられました。
画面からはみ出た小さな男の子の顔
鼻の上に 大きなトンボが止まっています。
名前を見ると女の子の作品
と言うことは、弟の顔かな?
見る側も想像がふくらみます。
会場を後にして 駐車場へ行くと
3年生くらいの女の子が駆け寄ってきました。
「先生、こんにちは。」
父もしゃがんで目線を合わせて
「こんにちは。」
後から親御さんが追ってきました。
小さな男の子もいました。
その顔があの作品とそっくり!
父に「あのトンボの絵の子だよ」と言うと
「とても素晴らしい作品だったね。」
その時から、父と女の子の文通が始まりました。
毎年、その女の子から年賀状や夏休みの思い出やお土産が届きました。
父も出張先からお菓子を送ったり、葉書を書いたり、楽しんでいます。
そして先日は、その子から京菓子が届いたのです。
「春休みに京都旅行かな?」
お手紙を読むと、何と!
『京都にある大学に合格しました。
第一志望の学科に入学したので、夢を叶える
ために頑張ります。』
そんな年齢になっていたとは!
父は嬉しそうに、プレゼントを買いに出かけました。
後日、その女の子から電話がかかって来ました。
「先生、プレゼントありがとうございます。
一人暮らしは不安もたくさんあるけど、
大学生活がとても楽しみです。
また先生にお会いしたいです!」
とのこと。
なんて可愛いのでしょう!
父は嬉しそうに何度も何度も
「大人になったなぁ、しっかりした大人になったなぁ。」
と繰り返しています。
一瞬の出会いで 10年が経ち
そして嬉しい報告を受けて
父も【春】を感じております。
あの女の子は、彼女は、
【新しい世界へ】入りました。
大学生活を思いっきり楽しんで欲しいです。