ヴェネチア2024 ⑦Homo Faber編⑷ 最終回
父と二人でヴェネチアへ一週間の旅に出た、最終回。
10ある会場も残すところ、3つ。
次はどんな世界を見せてくれるのだろう。
★8の会場【Dreams】
この会場に行く通路は、少しずつ狭くなり、蔓性の植物アーチを潜って会場入口にたどり着くようになっている。そんな演出も素晴らしい。
建物の中は、暗い…
明るい光の中を歩いてから入ると目が慣れず、何があるのかよく見えない。
しばらくすると少しずつ見えて来た…
会場スタッフの説明によると、ここは室内プールだった。それを利用し50年ぶりに水を入れ、ニットデザイナーの展示になったそうだ。
プールサイドには、世界中のお面が並ぶ。
ヴェネチアと言えば仮面をかぶるお祭りが有名だが、世界中でもそのようなお祭りが多い。
仮面をかぶる→日常の自分で無くなる→祭りを思いっきり楽しむ
夢のような一日を過ごすための道具が仮面なのかもしれない。
★9の会場【Dialogues】
人生の後半戦、楽しむための時間、穏やかで少しリッチな作品が多いと感じた。
会場ではビーズ刺繍を来場者に刺してもらうコーナーがあり、楽しくて無心で刺してしまった…
他にも、卵の殻や麦藁を使って作品を創る作家さんたちのデモンストレーションがあり、会話【dialogues】を楽しんでいる様子だった。
★10の会場【Afterlife】
いよいよ最終会場、人生の最後に何が待っているのか…
会場全体は暗いが、作品は光あるものが多い。
天井から吊り下げられた鳥が輝きながら落ちてゆくオブジェ。
あの世を表したかのような、にぎやかなタペストリー。
そして、私が惹かれた作品がこちら↓
薄い絹の素材を雲のように染め、そして、銀糸やグレーの細い糸で刺繍してある。天を舞う鳥の群れにも見えるし、海の中の魚の群れにも見える。また、天に昇る魂なのかな?とも感じた。
色やグラデーションの使い方がとても素敵だ。
会場の一番奥にある金箔の棚には、世界各国の作品が並んでいた。この棚は、慈善団体が障害のある方々と箔を貼ったと聞いた。
最後まで素晴らしい演出と会場作りに、感動という言葉しか浮かばない。
…☆…
私は今まで、展覧会というと〈美術工芸〉か
〈現代アート〉かを区別をして観ていた。
幼い頃から〈用の美・美術工芸〉見る機会が多かったので、〈現代アート〉に関してはあまり興味がなかった。
しかし、Homo Faber2024の作品たちは〈工芸〉とか〈現代アート〉ではなく、〈人の手で創り出される美しいもの〉であり、地位も区別も差別も国境もなく、作品に情熱があり作家が無心で制作している事が伝わるものばかりだった。芸術というものはそういうものなのかと実感した展覧会だった。
そして、自分の中の薄い膜がパチンと破れ、覚醒した感じがする。
「そろそろ次のステップへ行こう!」
と天からの声が聞こえたような気がした。
3日間、この会場に通う事が出来て、素晴らしい展覧会を見せてもらえて、心から感謝している。
Homo Faberのスタッフたちがnoteを見ているとは思えないけど、この場をお借りして感謝を申し上げたい。
「2年後、またヴェネチアに来よう!」
父・79歳、ヴェネチア一週間の感想である。81歳になっても見たいと思うこの展覧会の魅力、皆さんに伝わったでしょうか?
私もまた、81歳の父を連れてヴェネチアに行きたいと思います。
…★☆★…
『 1万キロ離れて気付く 固まりがするりとほどけ目覚める心』