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エトワール
「娘にはあんな過酷な思いさせたくない」
「忍耐、孤独…」
「自問自答、自分とずっと向き合わざるをえない」
「体力と知性のバランス…知性が追いついて来たと思ったら体力は下降していく…そこが一致する時期はごくわずか」
「友達?ずっと孤独よ」
バレエの世界は特殊です
幼少期から学校に入りそのままカンパニーへ
狭い世界で自分の同級生とずっと一緒、友達にもなれずケンカをしても翌日また顔を合わせなければならない、仲間ではあるがライバルでもあり、心の中をわかり合えることはなく抜擢されて天国を味わったとしても突然奈落の底に突き落とされる
ほんの数分の出番のために365日を肉体的にも精神的にも全て捧げ犠牲にするのです
バレエダンサーの定年は40才から45才
上記の会話は2001年に公開されたパリオペラ座のバレエダンサーを1年間追ったドキュメンタリー映画「エトワール」からです。
ダンサー、振付師、先生などのインタビューがコラージュのようにバラバラに散りばめられていて、練習やレッスン、次の舞台のために忙しく走り回るダンサーを一瞬捕まえてインタビューするのです
私がバレエを始めたのは23才の時です。3歳の頃から一緒にレッスンしている中高生や就職しても続けて来ている年上の女性の中に30才まで居ました。
3歳から始めれば8年目からは自分で振り付けを考えるフリーレッスンが始まり13才でバレエ指導者の資格が取れるのです。
つまり
突然振り分けられ一緒に踊ることになった中学生が先生だったり、自分と同い年ぐらいの時々来る人は憧れの綺麗な人
勿論みんな口なんてきいてくれません。中高生は挨拶さえしてくれない。
先生には
「ここ!!」
と指摘されいつも怒られてばかり
鏡の中にずっといてもどこが悪いのかわからない
どうしてダメなのか
どうしたら良くなるのか
どうしたら上手くなれるのか
ずっと自問自答なのです
一緒にやっている仲間は一時的に指摘はしてくれるけど、どうしたらと言う過程が抜けていて本番の頃や当日に「こうやって揃えましょう」と言う話しがやっと出来たり、本番直前になって振り付けが変わってしまったり、一緒に踊る仲間が病欠になったりするので、全ての踊りを覚えておかなければならない、いつでも代役が出来るようにしておくのです。
他人を出し抜こうなんて気持ちではなく、舞台に少しでも長く出たいと言う純粋な気持ちを貫けられなければ置いてかれてしまうのです。
この映画の録画ビデオを昨晩観て、バレエをやりながら私が感じていた変な孤独や違和感はこういうことだったのかとやっと理解出来ました。
私は演目や振り付けのマイムを理解する知性が備わる前、体力的に可能な限りの無理が出来るところまで続けることが出来ました。
だから知性が肉体を追い越してしまう時期は味わっていません。
30才で辞めることになったのは今は良かった幸せだったと思えました。
転んでもただで起きない人たちが続けられるのがバレエなのです。
私が親友によく言われてた
「鈍感力…そのままで良い、最高」
と言われた由縁はこういう経緯があって言われたのかとやっと理解出来ました。