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【映画】ボルテスV: レガシー
オリジナルのTVアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』は、私も小学生の時観ていましたが、アニメを卒業する前の作品なので記憶は乏しいです。
さらに、アニメ卒業を目前にガンダムブームが来たことでアニメ留年決定となって以降、リアルロボットしか観なくなったためスーパーロボットというものへの理解や知見はほとんどありません(大人になってからマジンガーZの漫画版を全部読んだりとかはしてます)。
ただこの作品、堀江美都子が歌う主題歌がものすごく良くて、カラオケで女の子が歌って一同ブチ上がる定番曲でしたね。
アニメがフィリピンで大人気となり実写版TVシリーズまで作られ、フィリピンの歌手が日本語で歌う主題歌をYouTubeで聞いて感動したりしてました。
あと、オンライン英会話をずーっとやってるのですが、フィリピン人の良い講師が多くフィリピンという国にも親近感を持ちはじめていたので、日本とフィリピンの良好な関係を願うという意味でも、劇場で観ることにしました。
フィリピンでのボルテスVの人気は破格のようで、40話のTVアニメシリーズを実写でリメイクして90話にもなったという、驚きの熱量です。
日本で公開された映画版はTVシリーズの最初の方のエピソードを再編集、一部新映像も追加されたものということ。
そのような経緯の作品ですので、映像がそこまでリッチではないですし、単体作品としてはベタな展開と説明不足の脚本、垢抜けない演出で、面白いというほどでもありません。
90分程度で短いのは良いのですが、結構眠い……オリジナルを全然覚えてなくても、予想を超える展開がまったくないというのもあります。
それでもとても魅力的なのは、いわゆる原作愛ということになるのでしょうが、ストーリーを現代風に改変する気がないストレートさに、70年代アニメの熱気を呼び覚ますところがあるからではないかと思います。
物語的には、敵勢力の中で複雑な事情があるらしい点が仄めかされており、そっちが明らかに面白そうなのですがそこはほとんど描かない。
一方で、パイロットたちとその母である博士との関係がドラマの軸になっていて、確かに母子の愛となれば(少なくともアジアでは)説明不要なので、あれこれ動機を説明しなくて良いわかりやすさです。
この母マリアンヌ、息子たちの体調や無事を本気で心配するのが素晴らしいです。
テム・レイや碇ゲンドウはマリアンヌの爪の垢を煎じてのめと言いたくなりますが、そもそも最終兵器に息子たちをためらいなく搭乗させている時点で…… とも思いますねw
それはともかく彼女の声を堀江美都子が吹き替えていて、ここはもう少し説得力のある芝居をしてくれたら、もう少し違ったんじゃないかなとは思いました…… お母さんには見えるけど博士には見えなかったかな。
そのほかの声優さんたちは見事なもので、映画の熱気をよく表現していて素晴らしかったです。
吹替で鑑賞、かつ単純な脚本なので俳優たちの演技力をはかるのは難しいのですが、ボルテスチームのスティーブやジェイミー、敵の司令官ザルドス、ザンドラといったメインキャラクターの美男美女ぶりが良いです。
特にプリンス・ハイネルことプリンス・ザルドスはものすごくカッコ良くて、彼がボアザン帝国の中でどんなことになっているのか、心にどんな苦悩を抱えているのか、興味を惹かれます。
あとロバート役のマット・ロザノ、70年代までのアニメには必ずこういうデカくて優しそうなキャラクターがいたなあっていうルックスでなんとなく感動です。
そのようなビジュアル面の充実は、VFXシーンやコスチュームで感じられました。
メカやコスチュームの基本的なデザインはオリジナルにかなり忠実でありながら、色やテクスチャをリッチにすることで映像的に面白くなっています。
ボルテスチームのパイロットスーツなどは、ゴレンジャー的な色分けと「V」をフィーチャーして当時のままのようでありながら、プロテクター的なデザインを入れることでカッコ良くなってます。
このあたり、どこを現代風にするのか、どこを当時のままにするのか、その方向性が絶妙だから、原作愛があると感じられるのではないかなと思いました。
いわゆる「リアル」にしようと組織や衣裳やメカデザインをミリタリー風にしたりはせず、ストーリーも当時から変えず、ただ映像だけ解像度を上げるという方法です。
映像的にはロボットアクションが結構面白く、巨大ロボットが戦う映像って面白いんだなあと思えたしそれが映画の尺の多くを占めるので、それも損した感じがしない理由でした。
これは『パシフィック・リム』という基準があったのが大きいでしょうね。
こういう方向性での映像化はなかなか、できそうでできないんじゃないかなーという気がします。
多分そこが「愛」だなって思えるセンスなのが素晴らしいです。
勝手なことをいえば、堀江美都子版の主題歌も映画館で聴きたかったなというのもありました。
彼女がフィリピンを訪問した時は国賓なみの扱いだったとか。
日本とフィリピンの文化交流も今後していくと良いでしょうし、そう思える作品でした。