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【TV】スター・ウォーズ:スケルトン・クルー

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スター・ウォーズ(以下SW)のTVシリーズ最新作。
今週完結しましたが、素晴らしい作品でした。
私はSWでは、映画1から6までを除くとTVシリーズの『キャシアン・アンドー』がベストだと思っているのですが、これはそれに次ぐと思えるものがあります。

しかし本作が始まった時の「なんだこりゃ」感はかつてないものでした。
現代もしくは1980年代のカリフォルニア郊外の住宅街でしょうっていう雰囲気で、一応エイリアンも一緒に住んでいるのですが、SWらしさが全然感じられない。
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』ひいては『E.T.』とか『グーニーズ』をやろうというのはわかるけどそれはSWなのか……と疑問を抱いた人も多いでしょう。
彼らが宇宙に出てからは少しSWっぽさが出てくるけど、『彼方のアストラ』そっくりだなあとか……

それでも、『宝島』のような、海賊と宝さがしモチーフが出てくるにつれ、SWの原点(海賊映画)に接近する様子も出ていました。

それに重要なのは、主人公の少年たちがジェダイに憧れる一般人である点で、SWの世界に憧れる子供と1980年代の子供(私たち)と視点を共有する存在であることでした。
SWの世界ってカッコ良くて怖くて楽しいよね、っていう子供の憧れをうまく表現する装置になっていました。
そこを受け入れられれば、自分が子供の頃好きだったSWを再生してくれているのではないかと思えて、素直な気持ちで楽しむことができるようになります。
ジェダイなのか海賊なのかわからないジュード・ロウが、大人のいい面と悪い面を見せて、主人公たちを導いたり反面教師であったりするのも素晴らしいです。

また過去作との結びつきをそれほど強調せず、過去作からの人物名や地名もほとんど見られなかったのも、私が気に入った点です。
銀河は広いのになんでみんな知り合いなんだと思う描写が多かったんですよねホントに。
もちろん基本設定は共有されていますので、見慣れた共和国の宇宙船が最終回で活躍したりはしますが、デザイン的に共通してる程度のことなのでちょうど良い塩梅でした。

主人公たちが住む惑星がヤケに平和かつ官僚的であること、それがなぜか銀河じゅうから存在を隠蔽されていること、これらの理由がしだいに明らかになりますが、惑星が宇宙のほかのエリアと隔絶されているわけです。
なので、そこから飛び出してしまった主人公たちは危険な冒険をしながら、宇宙に出たことでその広さを知る仕掛けになっています。
彼らは宇宙の怖さ危険さも知るけれども、世界は広く冒険に出る価値があると感じることになり、まさにジュヴナイルSFのおもむき。
一方でSWのもっともコアなエモーション、「宇宙に出ていきたいルークの気持ち」イコール「広い世界に出ていきたいアメリカの田舎に住む若者の気持ち」すなわちジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』のテーマに通じるものも意識されているでしょう。

TVドラマとしては、まさに『グーニーズ』のようなギミックに満ちた大冒険は楽しくスリリングで、娯楽性は他の多くのSWスピンオフと比べても上位にあるでしょう。
海賊ものでもあるので「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズみたいなところが多いほか、「インディ・ジョーンズ」シリーズとか『千と千尋の神隠し』みたいなところもあったな……
SWらしい引用元なのでしっくり来てました。

過去作好きな中高年への接待より、新しいファン層の獲得が大事だと考えるなら、こうした路線は必要であり成功したと思います。
それに、旧作ファンとしては旧作モチーフで接待されることを望んでいるわけでもなくて、子供の頃のワクワクをもう一回体験することが真の望み。
そんなの不可能ってわかってるけど……でも、不可能事にチャレンジするために、子供を主人公にすることでその感覚を呼び覚まそうとしてくれたことは、大いに喜ぶべきでしょう。

いやあ、これは良かった。
SWはあまり観たことがない人にも、それに全年齢におすすめできる傑作です。

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