マスク越しでも聞こえる話し方を~高齢者対応
コールセンターで難しい対応のひとつに高齢者対応があります。
聞き返されるので、大きな声を張り上げるとうるさいと怒り出されてしまい、どうしたらいいのかと途方に暮れることになります。
そこで聞き取りやすさについてのサイトがありましたので、自分のためにも、内容を簡単にまとめました。
マスクをして会話をすることが常態化している今、コールセンターならずとも知っておいたほうがいい内容かと思います。詳しく知りたい方は、ぜひ元サイトをご確認ください。
声の大きさよりも
伝わりやすい話し方は、声の大きさよりも以下の4点が大切です。
・発話速度
・口の形を見せる(マスクをしていると見えない)
・子音を強調する
・声の高さ(高い音は聞き取りづらい)
電話では、そもそも口の形を見せることができませんから、他の3つを頑張るしかありません。
それでは、他の3つを頑張れば効果があるのでしょうか。
聞き取りやすさの順番
早口で雑な話し方(マスクあり)
↓
早口で雑な話し方(マスクなし)
↓
トレーニング後(マスクあり)
↓
トレーニング後(マスクなし)
マスクがあるのとないのとではマスクなしがいいことに変わりはありませんが、早口で雑な話し方をするよりは、マスクをしていてもきちんとトレーニングをした話し方のほうが聞き取りやすいのです。
これなら、電話越しの会話でもトレーニングをすれば効果がありそうです。
実は以前、企業研修で高齢者対応についての講座も行っていました。そのとき会社から与えられたカリキュラムには、参加者に耳栓をさせ、聞こえづらさを体験してもらうという内容が含まれていました。
しかし残念ながら、加齢性難聴の特徴はそのようなものではなく、単に耳栓をしても加齢性難聴の疑似体験にはならないそうです。
なんらかの病気ではなく、自然な老化現象における特徴を見てみましょう。
【自然な老化現象】その1~周波数分解能が落ちる
百人一首をテーマにした漫画『ちはやふる』でも説明されていましたが、内耳の中にはびっしりと毛が生えています。内耳の中の数万本の毛が、入ってきた周波数成分を分析して、その結果を聴神経から脳に送ることで、音を判別しています。この毛が禿げて抜けていってしまうと、周波数分解能が落ちてしまうのです。
つまり、音としては聞こえるが、微妙な言葉の違いが聞き分けられなくなるということです。
耳栓が疑似体験になるなら、その分、大きな音を出せばいいということになりますが、実際には大声は”割れた””歪んだ”音として聞こえるので、相手をイライラさせてしまいます。
したがって、大声にすればいいというものではないということが分かります。
【自然な老化現象】その2~時間分解能が落ちる
これは、早口が分からないということです。
脳に送られる音の情報が減ったりゆがんだりしているので、内容を聞き取り理解するのに時間がかかるのです。
勘違いしやすのが、認知機能が落ちている(ボケてきた)から早口が聞き取れない、わけではないということです。毛が抜けて、脳が受け取る情報に欠損があるので、それを脳が補って解釈するために時間がかかるのです。
例えば若い人であろうと、電話で同音異義語をたくさん使って話せば、聞き取りに時間がかかります。頭の中でたくさんの漢字を思い浮かべ、その中から今の文脈に適切なものを取捨選択するという作業が発生するからです。(なので、電話応対では、漢語をなるべく使わないようにと指導されます)
このような作業を、何倍も行いながら話を聞いていると思えばよいでしょう。
【自然な老化現象】その3~リクルートメント現象
簡単に言うと、「小さい音は聞こえないが、大きい音はうるさい」。
私も老化が進み、文字を見る距離を微調整しないといけなくなりました。暗いと見えづらいのに、明るくすると眩しくて困るということもあります。
要するに、自分で調整ができなくなってくるんですね。
これがあるので、聞こえないと思って大声を出したら「うるさい!」と言われるということになります。
たとえば聞こえなくてテレビの音量を上げるものの、物が壊れるシーンやCMの大きな音でびっくりして音量を下げるというような行動が見られるようになります。
したがって、聞こえないからと大声を出す、は絶対ダメです。
聞こえるけれど「聞き取れない」
問題は、多くの人に、その自覚がないということです。
なので、「こいつの話し方が悪い」と思われてしまうんですね。
皆さんは、これまでの特徴の中でご自身に当てはまるものはありますか?
このような傾向に何歳ぐらいからなるのかというと、20歳がピークで少しずつ少しずつ機能が落ちていくのだそうです。
つまり、30代の人も40代の人も、自分では気づかない兆候が既にあるかもしれません。
これまでのことを踏まえ、聞き取りやすい話し方をまとめましょう。
【加齢性難聴との接し方】その1~やや大きめの声で、ゆっくり、はっきりと話す
「やや」が大切。大声は逆効果です。(伝わるのは言葉ではなく、怒っているということだけ)
そして、ゆっくりとは間が長いことではありません。
一文字一文字をゆっくり話しましょう。
はっきり話すうえで大事なのは子音、特に語頭の子音
語頭の子音が伝わればほぼ伝わるということが聴覚心理学的に証明されているそうです。※準実時間子音強調システム(九州大学大学院芸術工学府
安武 達朗 中島 祥好)
はっきり話すには、語頭の子音を丁寧に、長めに発音するといいようです。
ただし、子音は聞き取りづらいままなのに語頭だけ語気を強く言ってしまうと、ただ乱暴なだけになってしまうので、注意が必要です。
とにかく、大きくダイナミックに口を動かすことを意識しましょう。
子音の中でも、特に聞き取りづらいものがあります。
・サ行
・ハ行、中でも「フ」が聞き取りづらい
・パ行 タ行 カ行(”難聴のPTK”と呼ばれる)
したがって、これらが語頭に来ないような単語を選ぶのも効果的です。
【加齢性難聴との接し方】その2~声の高さ
あまりにもキンキンした声、あまりにも低い声でなければ、OKです。
黒電話だった頃は、電話に出ると声が1オクターブ高くなるお母さんがよくいましたが、そのような極端な癖がなければ、それよりも、やや大きめ、ゆっくり、はっきりのほうを意識しましょう。
それでは、また。
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