
『キレイに使っていただき、ありがとうございます。』はナッジなのか
表題のフレーズについて、たまたま入ったコンビニでトイレを利用する客に対するフレーズとしては、いかがなものだろうかと書きました。(使うメンバーが限られていて、実際にいつもきれいに使われているならなんの問題もない適切な文章です)
その後、このフレーズについて調べてみると、実は前提挿入という心理学を活用したテクニックの典型例としてよく使われるもののようです。
生成AIの説明によると、前提挿入とは、「相手に何かを伝える際に、さりげなく前提となる情報を組み込むこと」だそうです。つまりこのフレーズを読むと、「みんなはいつもきれいに使っているんだ」という前提を受け入れてしまい、だったら自分もきれいに使おうと考えるようになるということです。
また、「これはナッジだ」と言う人もいるかもしれません。これも生成AIの説明によると「軽くつつく、行動をそっと後押しする」という意味を元とし、「社会科学の一分野で、人々の行動や意思決定を微妙に誘導することで、特定の行動を促す手法」のことだそうです。
そこに敬意はあるんか
これは前提挿入という心理学的テクニックである。
これはナッジという特定の行動を促す手法のことである。
それは、確かにそうかもしれません。
しかし、そこに敬意はあるのでしょうか。
たとえば、夢や目標がはっきりしていたほうが費用を払う動機づけになりますし、努力もしやすいでしょう。それは誰にとっても真実かもしれません。
しかし、問題なのはそれを使う側の動機です。
たとえば、理学療法士が、脳梗塞で歩くこともままならなくなった患者に対し「歩けるようになったら、どこへ行きたいですか?」「それはお孫さんと行ったら楽しいでしょうねぇ」「娘さんの手をとってバージンロードを一緒に歩きましょうよ」と励ますのと、ネットワークビジネスの勧誘員が「ねぇ、毎月100万円が何にもしないでも入ってくるとしたら、何したい?」「娘さんを大学にいれてあげたいでしょう。だったら、今のあなたのお給料じゃ行かせてあげられないんじゃないの?」と付け込んでくるのでは、同じ心理的スキルを使っているかもしれませんが、動機は真逆です。
翻って、「キレイに使っていただき、ありがとうございます」という文言を選んだ動機はなんでしょうか。
「キレイに使ってください」と言って「客に命令するとは何事ぞ」と怒られるのが嫌だから、このフレーズを使ったら汚されることが減ると聞いたから、他の店でも使っているから、本部からこれを使うように送られてきたたプレートを貼っただけ……。
それは、そうかもしれません。しかし、それらは客のためでしょうか。この文章を読むと、客に向かって書いてあるにも関わらず、客と向き合いたくないのではないかと思わせられます。(繰り返しますが、使うメンバーが限られていて、実際にいつもきれいに使われている感謝としての文言なら別ですよ!)

クリスマスの予定は決まりましたか?
ミニチュア・クリエーター 工房てるとさんより頂戴した ミニチュア花器を
クリスマスリースに乗っけてみました🎄
いかがでしょうか。
もちろん、このフレーズ自体は目くじらを立てるほどのことではありません。このフレーズを使ったら失礼極まりない人であると思っているわけでもありません。
ただ、「敬語を使うことが敬意ではなく、敬意を表す手段として敬語がある」。この順序を大切にしてほしいと思います。
それでは、また。
不適切な敬語は、文法を知らないで使っていることが原因です。知らなくては、正しい敬語を使いようがありません。そして、誰かに聞こうにも教えてくれる人が周りにいないのが、多くの人が置かれている現状です。
私も周りに聞ける人がいなくて敬語を身につけるのに苦労しました。そこで、こんな記事を書いております。ご自身の敬語が気になる方は、どうぞ参考になさってください。
また、本年のお礼として、今月中に予約をすれば半額になるバナーをご用意しました。
よろしければ、どうぞ。
< 『キレイに使っていただき、ありがとうございます。』~気になる敬語#36
いいなと思ったら応援しよう!
