電話応対と感想戦
感想戦とは、棋士などが対局後に対戦相手とともに、その対戦内容を振り返ることです。
これは、電話応対の品質向上にもとても重要です。もちろん”対戦”ではありませんし、お相手のお客さまとともにというわけにはいきませんが、自分の応対を振り返り、良かったところや悪かったところを客観的に把握します。そうすることで、良かったところの再現性を高め、悪かったところは改善します。
今の電話の流れを覚えているか
感想戦ができるということは、今の対局を覚えているということです。
電話応対が得意ではない人には、応対中に流れが大きく変わったポイントすら覚えていない人が多いようです。
自分がだらしない相槌を打っていても気づいていない場合、気づいてもいないことを覚えることはできませんから、後から自分の応対を振り返ることはできません。
また、NEWSポストセブンの記事によると、羽生名人ですら、幼稚園児同士の「自由奔放で法則性のない」手を記憶するのは難しかったそうです。
電話応対も、”たまたまそうなっただけですべては偶然”という把握しかしていなければ、覚えることは難しいでしょう。
しかし、電話応対は仕事として話をしているので、電話対応で使う言葉には全て意味があり、目的があります。
それをわかっていないと、なんとなく対応したり、普通に対応したりします。しかし、「なんとなく」する仕事や「普通に」する仕事はありません。
最初は全く怒っていなかったお客さまが途中から怒り出したのに、普通に対応していただけという認識しかないのでは「なんだか分からないけど突然怒り出した」としか言いようがありませんよね。それでは、クレームの原因を探すことはできません。
トークにもスキルがある
トークにも、スキルがあります。
“聴く”スキルは、相槌と復唱と質問。
“話す”スキルは、スピードと抑揚と間。
たったこれだけですが、これをきちんと意識して使ってほしいと思います。
その他に、こういう局面ならこうするという一連の型(=定石)もありますが、それらはスキルが使いこなせることが前提です。
自分の行為に理由はあるか
お客さまの話を伺いながら、どのスキルをなぜ使っているのでしょうか。
なぜ今、相槌だけを繰り返し打っているのか。なぜ、ここで復唱を使ったのか。なぜオープンエンドで質問したのか。なぜクローズドエンドで質問したのか。そこに目的がなければなりません。
お問い合わせを受ける窓口では、お客さまに要望や質問があって初めて私達に電話がかかってきます。主体はあくまでもお客さまです。けれど私たちは、それなら全てお客さま任せにして話を聞いていれば良いのかというとそれも違います。
お客さまにとってどのように“聴く”ことが一番良いのかを考え、お客さまが電話をしていらした目的を達しやすいようにしてあげるのです。
そのためには、「お客さまが話したいことをまず邪魔せず伺おう」というときにはシンプルに相槌を。「ちょっと大切そうなキーワードだな」と思ったらキーワード復唱を。お話が時系列になっていないので、一旦整理しないと話が混乱しそうだな、と思ったら要約復唱を。一通り話終わったようなので、不足している情報を聞き出すために質問を。etc.
全体の流れと、その局面
トークには、その状況その状況の目的があります。
お客さまに信頼していただきたい。
お客さまが話したいことを全て受け止めたことを理解してもらいたい。
ネガティブなご案内の前にショックに備える準備をしていただきたい。
意に添わない現実と向き合ってもそれを受け入れることができるよう支えたい。などなどです。
適切なスキルを選ぶためには、全体の流れの中で、今はどの局面なのかということも分かっていなければなりません。それができれば、全体の流れが乱れたときや、その局面での目的から遠ざかってしまっているとき、すぐに気づくことができます。
そして、スキルを選び間違えたのか、局面を見誤ったのかを分析して軌道修正をすることができます。
少なくとも電話を終えた後で、「あそこが失敗だった」と反省することができます。
全てはお客さまのために
スキルを意識的に使うとは、自分が会社の代表として、仕事としての会話に徹しているか、お客さまを無視して話を進めようとしていないか、お客さまのニーズをつかめていないまま自分勝手に会社の都合を押し付けていないかを常にチェックする気持ちの有り様です。
では、また。
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。