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『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言(1985)』を観ました。
こんなタイトル他にないけど、こんな見事に作品を表しているタイトルも他にないと思う(選挙の党とかは出てこないし、演説なんかもありません)。
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日本全国南から北までドサ周りをしているストリッパーのバーバラ(倍賞美津子)と、かつての恋人のような存在でやくざな雰囲気の宮里(原田芳雄)。
バーバラは19歳のときコザ暴動に巻き込まれ、それがきっかけで宮里と沖縄を出てきた。パスポート(昔は沖縄からは必要だった)も住民登録もない2人が生きていく道は、ドサ周りのストリッパーと原発内で働く『原発ジプシー』であった。
(80年代に映画の中で、ここまで原発のこと描いてるのは他にないのでは)
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今作は喜劇です。
のっけからツッパリ風の男女3人組が高校で修学旅行の積立金を強奪して、担任の教師(平田満)を誘拐して車を運転させて逃亡する。大迫力ですがどこか滑稽な雰囲気で作品ははじまります。
昭和の俳優さんは沢山おられるますが、ここまで原発の街を背景にして絵になるのは原田芳雄さんがダントツでしょう。そして、この問題の大きさや重さ、さらに不気味さや怖さなんかには全然負けてないくて「へっちゃら」な存在感が凄すぎます。あと、泉谷しげるさんがハマり役です。
今作の森崎東監督(脚本も)の作ってきた作品は喜劇が多くて、以前に観てた『ペコロスの母に会いに行く(2013)』はやさしい気持ちになれる映画でした。男はつらいよの3作目『男はつらいよ フーテンの寅(1970)』も監督(脚本は山田洋次さん)されてます。
(今作の配信はなかったけど、ゲオのネットレンタルや、置いてるレンタル店舗もポツポツありました)
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今作が描いているのは社会の安定したところで生きてる人たちではなくて、学校の不良少年少女、学校を首になった教師、国籍がない沖縄人、原発で放射能を浴びて働いてたいしたお金ももらえない労働者、出稼ぎで日本に働きにきた女性。
社会からこぼれ落ちてしまっても、それでも絶対あきらめずに生きていく人たちの、生きるか死ぬかギリギリの場での喜劇です。
例えば沖縄なんかでの喜劇っていうのは、生きるか死ぬかギリギリの中で、そんな気持ちに押しつぶされそうになるのをなんとか持ちこたえて、笑い飛ばして生きていこうというものに見えます。
浅草から出てきた渥美清の寅さん映画とかも、そういう切羽詰まったとことから出てきた喜劇という感じがします。
ツライ話をツライ顔して話しても、よりツラくになるだけだろう。
「じゃあ落ちていってジタバタもがいて、それでも浮き上がれずにどんどん沈んでいったらどうすればいいの?」という問いには、今作はちゃんと答えてくれている。