『神と共に 第一章:罪と罰(2017)第二章:因と縁(2018)』を観ました。
痛快娯楽の霊界ストーリーです。しかも一章と二章の2作品でどちらも140分の大作なのです。
霊界といっても『ロード・オブ・ザ・リング』を観ているかのような大スケールの作品で、アクションあり笑いあり感動ありで「頭から尻尾までずっと面白い」という、とことん観客を楽しませるという作りには、韓国映画の底力を感じます(IMAXで観たかったくらい)。
こんな作品を一気に2作品を同時に作って、まず一作目を公開して次の年に二作目を公開。
「なんかそんな作品あったなあ」と思ったら『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の翌年に『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』を公開というのがありました。『PART2』を見終わったら、そのまま『PART3』の予告が出てくる、しかも何年の後ではなく来年公開だという。あの時の映画館での、思わず声が出てしまうくらいの驚きと幸せが今作でもあったようです。
だって、一作目でお腹いっぱいくらいに満足して、さあ終わったし帰ろうかと思ったら二作目の予告が入る。これってアベンジャーズの映画(マーベル作品)みたいな感じです。でもって、二作目にはあの強面兄貴(こわもてあにき)のマ・ドンソクが出てくるではありませんか。これはもう絶対にまた劇場に来るしかないのでした。
かつて霊界のことを映画にした人が日本にいます。それは丹波哲郎さんです。
丹波哲郎さんは本当に多くの映画に出ていますので検索してどんどん見てください。なんといってもタフガイ的なカッコよさがあり、たたずまい(持ってる雰囲気)が素敵なお方なのです。
この人は超有名になってた後に、ご本人の大事な方が亡くなる前にびっくりするくらい「死にたくない、死ぬのが怖い」と怯えているのを見て、『私たちは死んだらどうなるのだろうか』と調べはじめて、それを本にしたり映画にしたりして私たちに伝えてくれたのです。
有名俳優がこんなことしたら「ついに頭がおかしくなったか」などと言われてもおかしくない時期に(まだスピリチュアルという言葉もなかったと思う)、あえて発言し本も出した。これは勇気ある行動だと思います。
というのも、私は中学でのいじめ、高校受験すべて不合格と当時の私なりには限界で「もう私の人生はお終いだ」感に飲み込まれていた時に、丹波哲郎さんの「死んだらどうなる」みたいな本を読んで、「こんな別の世界があるのであれば、もう少し生きててみようかな。丹波さんは自殺だけは絶対しない方がいいって言ってるし」ということで、なんとか生き延びたようなことがあったのです。
日本での霊界映画といえば『丹波哲郎の大霊界 死んだらどうなる(1989)』、『丹波哲郎の大霊界2 死んだらおどろいた!!(1990) 』、『大霊界3(1992)』の大霊界シリーズ3作があります。あと伊丹十三監督の『大病人(1993)』も霊界というものを映像化した作品と思います。
そんなかつて一時期に現れた霊界映画というものが日本からではなく、なんと韓国から現れたのでした。
よくハリウッド並みの作品とかいう作品が、出来るだけ真似して近づけてみましたみたいな失敗をすることがありますが、今作は「これぞ韓国の問題」というもの(兵役もそのひとつ)をしっかりお話の中心にもってきて、それに過去の話も、韓国の時代劇的な高麗時代のドラマが入ります。私なんかは全然高麗時代のことは知らなかったですが、人と人の情の話なのですんなり入ることができました。
こうやってしっかりと韓国の人の興味をがっちり掴んで、しかもそんなの知らないような日本に私みたいな観客も、しっかりと引きつけて泣かせにくる。もうお見事すぎます。
世の中の流れや権力的なものに振り回されても、なんとか踏ん張って生きてる人。そういう市民とか庶民の側に寄り添ったようなお話がいいですね。人間界でも霊界でも、それがどんな場であってたとしても、人と人の気持ちが根っこにあるという描き方がよかったです。しっかりと作品の中に韓国に生きる「自分たちらしさ」が出ている気がしました。
映画の世界で言うと、日本は国内が中心で、携帯の世界と同じガラパゴス化(独自の方向で高機能化した製品やサービス、海外進出への消極的な捉え方、排他的で規制の多いマーケットなどが、国際基準から離れた状態で進化してしまっている様)がまだまだ強くあるように感じます。
韓国映画には、外のマーケットで通用する作品を作る気合があるように感じます。「俺たちがここまでできるってのを、見せてやろうじゃねえか」みたいな気合を今作からも感じるのです(あえて、どう見ても『ジュラシック・ワールド』な恐竜を出したりも)。
こんな、ある意味ぶっ飛んだ内容の作品をしっかり最後まで作るってのは、最低限損しないように、自分が儲けることだけを考えたりして足を引っ張る人が出てきにくい環境があるように感じて、そういうのはなんだかうらやましいような気がしてしまいます。
今作を1作品作るのに約200億ウォン(19億円)かけて、興行収入は1,000億ウォン(95億円)です。冒険しつつ確実に観客を楽しませて儲けを出す。映画は興行ですからそういうビジネス的なところもしっかりしていて、こちらもお見事な韓国映画なのでした。