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都市と農村をかきまぜると書いて「都農町」、高橋博之さんと関係人口を考える。
都農町は3回目の高橋博之さん。
今回は、「つの未来会議」のゲストとして。昨年、遊びに来てくれたとき、「つの未来会議」のポスターをみて、俺にもしゃべらせろ!といってきたことがきっかけで。
高橋さんが都農町を好きになった理由を聞くと、名前が「都」市と「農」村。高橋さんの会社、雨風太陽のビジョン「都市と地方をかきまぜる」が町の名前に凝縮されているからだと。ぼくも3年住んでてこの組み合わせは初めての気づき。
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1.水車小屋と活動写真館
高橋さんのふるさと、花巻市といえば大谷翔平が世界的な有名人に。もう一人、世界的に有名なのが宮沢賢治。時代が変わっても色褪せません。
今回、高橋さんが話のテーマとして紹介したのは「セロ弾きのゴーシュ」
ぼくも子どものころに読んだ記憶がある誰でも知っている名著。ただ、この本と、まちづくりや関係人口を紐づけて考えたことはなかったので新鮮。
ゴーシュは、街の活動写真館にある音楽団でセロを弾いていた。下手くそでみんなから怒られてばかり.
常に評価の眼差しにさらされ、優れてるか劣っているかが問われ、人間性を摩耗しながら窮屈にしながら生きている。
ゴーシュが仕事を終わって帰る家は、町のはずれにあるみすぼらしい水車小屋。家に帰って水をゴクリゴクリと飲むのが生き物としての人間に戻る儀式。水車小屋にはいろんな動物がきて交流するうちに、ゴーシュは音楽の本質をつかむ。自分が表現したいことを、自然のリズムにどう載せるのか鳥から教えてもらったり。そこには優劣を競う世界はない。
ゴーシュは人間性を回復して、街の活動写真館に通う日々をくり返す。
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高橋さんは、いまの日本社会に足りないのは、水車小屋だと言います。
街の活動写真館に疲弊している人(=サラリーマン)はたくさんいるけど、帰るふるさとがなくて水車小屋に行けない。
”ふるさと難民””命の迷い子”とも表現していました。
活動写真館では、合理性を極限まで追求するので、どうしても機械化してくるため、人は代替可能となり人間性が磨耗していく。
一方、水車小屋は、人手不足で、若者は出ていくばかり。外国人を地域住民として迎え入ればければ維持できない状況。
2.手間と時間をかけて人間関係を
ポケットマルシェの出品者でくだもの農家の、菅野千秋さん(岩手県奥州市)は、資材や化学肥料、農薬など値段があがったため、1.4倍に値段をあげたそうです。
高橋さんは、菅野さんに、多くの生産者ができない値上げが、なぜ受け入れられたのか聞きにいかれたそうです。
菅野さんの回答は、正直に言ったということでしかありませんでした。
・今年、資材価格があがり生産コストがあがったこと。
・私は地域の人に声をかけられて育ったので地域に恩返ししたいこと
・友人が紹介してくれた障がい者の平均工賃を時給換算したら100円!岩手県の最低賃金850円出すといって雇用したこと。
・生産作業を分解し、りんごの蜜をセンサーで測るしごとは障がい者ができると発見し、蜜の入ったりんごが増えることで人気が出て売り上げが上がって850円を払えていること。
適正価格ってこういうことなのかもしれません。
日頃から、お客さんと関係性を育んでいたから受け入れられたのでしょう。
高橋さん曰く、「間」が大事
はいて捨てるほどの飽食の時代。
手間と時間は、漢字にすると間。
お客さんとの間に人間関係が生まれる。
人間は人の間と書く。
「先月も買ってくれてありがとう」と返信する手間や名前を覚える手間。
いまや供給過剰の中で、すべてが数値化されて、マーケティングされる時代。そんな中で、この人、私のことを覚えてくれていたと思ってもらえることの価値は大きい。
ぼくが2020年3月に都農町に移住してすぐ緊急事態宣言。生産者の販路確保が課題と聞いて、旧知の間柄であった高橋さんに相談し、ポケットマルシェを紹介しました。
その当時、都農町でポケットマルシェに登録していた生産者はいなかったところ、3年間で35人にまで増えました!
都農町でも少しずつ、都心の人たちと人間関係を育めているようです。
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ポケットマルシェで金柑が人気の、金丸広和さんもその一人。
都農町の食を町外へ発信していくために必要なこととして、
ひと手間を惜しまない、行動力!
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もう一人、白ハピ農園の山下さん親子。自分が町の外に出てからはじめて都農町の食のおいしさを知ってUターンしたそうです。
町民がおいしいを自覚する
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若手生産者として、会議の最後には、町長から未来のバトンを!
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3.生産消費者、プロシューマー
高橋さんの話に戻ります。
市場経済は取引が終わった瞬間、等価交換なので関係性がきれる。
相対取引の面白いところは、やりとりが生まれて、そこに差分が生まれる。
払った以上のものをもらった気分になり、健全な負債感をもち、なにかを返したくなるんです。
たしかに、自分に置き換えても、パーソナルな関係になると、家族や友人にもストーリーとして語りたくなるなと実感。
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菅野さんは、ポケットマルシェで生産者が8,000人近くいる中で5位前後。
高橋さんは、どこでネット販売のコツを学んだんですかと聞いたそうです。
お客さんが教えてくれるんですよ、新潟県から岩手県、車で8時間、わざわざ、買ってくれる人がいて。その人が写真の撮り方、値段の付け方、コミュニティの運営の仕方などお節介をやいてくれるんです。
この新潟の人はお金をもらえるわけでもないので、高橋さんが言う水車小屋がほしい人なのでしょう。
いまは限界集落といえども家電製品はいきわたり車も2台あります。最後になにが必要かといえば、「生活の質を高める」こと以外にない、と高橋さん。
話に出てきた新潟の人はトフラーがいうところのプロシューマー。
生活の質はどうすれば変わるか?といえば、生産に近づいていくしかない。このりんごは誰がつくったんだ?と考えたこともなかった。
わたしたちは、未来の目的のために今日を手段にしてきた。
4.都心の人に関わりしろをつくる
菅野さんは、自分たちだけでは、水車小屋をまもれないとわかったので都会の人たちに呼びかけた。これは都農町にも共通すること。
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高橋さんからの最後のメッセージ
都農町も人口減ったけど、突然、神隠しにあったようにへったわけではない。かつていた人たちはどこにいるのか?都心ですよ。で、都心の人たちは給与はあがってもお客さんが見えなくて生きがいとか生きるリアリティーを感じにくくなっている。そうなると水車小屋を求めてきます。
いまは移住しなくてもいい。都会では週休3日、副業解禁も増えています。
目の前に自分を欲している人がいて、なにかをすれば感謝される関係。副業でもボランティアでも関わりしろをつくって、人間性を回復したいんです。
高橋さんから、ぼくが典型的な活動写真館にいた人と言われました 笑。
自覚あります。ぼくも間違いなく、都農町の人に魅せられ、都農町のためになることが自分のモチベーションです。
高橋さんからの最後の提言は、関わりしろをつくる仕掛け、種まき
世界に唯一無二である、その土地固有の自然に立脚し、風土や文化ができあがり、精神的、経済的に自立することを続けてきた地方の集合体が日本です。日本はどこにいっても特産品があっておいしい。インバウンドの観光客は東京、京都で満足せず、おいしさの源流をたどる旅をしたがっています。岩手にも外国人がいっぱい来てます。これからのファンになってくれます。
大切なことは農家が持続可能になることだと思います。
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