
公立初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」開校、3,000人の町の未来をともにつくる
3年越しで企画・設計してきた公立初のイエナプラン教育校「常石ともに学園」(広島県福山市沼隈町常石)が開校、今週、ようやく見にいくことができました。
リノベーションや給食運営でお手伝いした日本初のイエナプラン教育校の「大日向小学校」に引き続きUDS小田島さんとのコンビで担当。
「常石小学校」で授業が行われながら、春休みや夏休みを中心とした工事で予算も工期も難易度の高いリノベーションでしたが、小田島さんの粘り強いコーディネイト力と現場施工チームのおかげで無事、開校へ。
同じ校舎ではありますが、「常石小学校」は3月末をもって閉校(統合)、新たに「常石ともに学園」が開校となりました。
「自立・共生・自己実現が学校の目標。学びが面白いという子どもになっていって自分で学んでいく子どもたちになっていってほしい」
イエナプラン教育校をつくると決めた3年前、70人弱だった子どもの数が、開校段階で約130人近く!
新1年生は応募者から抽選で32人が選ばれ、そのうち8人は福山市以外の子どもだということです。 遠いところでは仙台や沖縄からの移住者も!
あらためて、過疎化がすすむまちづくりにおける教育の重要性を再認識できました。
1.ビッグサークル
さらに学びが面白くなるオープンスペース
全体の企画にあたり、一番こだわったのが、イエナプラン教育最大の特徴でもあるサークル対話の象徴、旧職員室を活用したビッグサークルでした。
「常石ともに学園」として、地域の方々との交流が重要テーマだったこともあり、外部と直結する旧職員室について、先生たちの合意をいただきビッグサークルとして活用することができました。


1階の中央には大きな円形のオープンスペースを整備し、子どもたちと先生、地域の方々との交流を促進します。
大きなスクリーンを活用しイベントを開催することもできます。
日常的には学習や読書をしたり、語り合ったりする場所として多目的に利用できます。
ギャラリーのように壁に沿って設けられた棚には子どもたちの作品を展示することができます。


廊下も有効に使えるように、ライブラリーストリートとして、子どもたちが興味を持つ本を並べていく予定。

2.キッチンシアター
企画段階で、地域の方々とのワークショップで多くの意見をいただいた、地域の方々も自由に出入りできるカフェのような場所。
ワークショップで印象的だったのは、子育てママたちから出ていた「小さな町だと目的地がない」という声。
ベビーカーで子どもを連れて行きたい目的地になる学校を理想とし、旧家庭科室を、地域の方々自由に使えて週末は上映会や発表会などできるキッチンシアターとしました。




3.リビングルームのような教室
イエナプランでは、教室をリビングルームと位置づけており、設計にあたっては、リビングっぽくない黒板とランドセル棚の撤去を決めました。




教室は、子どもたちにとって居心地が良いリビングルームのような空間とし、主体的に学びや遊びに向かうことができるような工夫を行なっています。教室の中には机と椅子の他に、先生と子どもたちが集まってサークル対話などをする時に座るベンチを整備します。背面の壁は教室ごとに異なった色で塗装しており、教室それぞれに愛着を感じられるような色調としています。
今回、嬉しかったことのひとつは、教育委員会が整備するカーテンについて、自主的に壁の色にあわせたものをセレクトいただいていたことでした。センスのよいカーテンでした 笑。



4.教室とのつながりを意識した廊下
イエナプランの特徴のひとつとして、教室と廊下の境界線をなくし、つながりをもたせて考えているところです。
教室だけではなく、廊下を含めて学びや遊びの場所となるように、子どもたちが見通せるような間仕切りとし、一部はベンチやデスクになっていて、自由に利用できます。




5.ともに学び、ともに生きる
「常石ともに学園」のコンセプトはともに学び、ともに生きる
「ともに」はイエナプラン教育校であることを表す象徴的な言葉であり、「友」と「共」に育つ、子どもたちと「伴」に学び続けるという意味があります。学年を超えて子どもどうしが、子どもと先生が、小学校と地域が、ともに成長していけるようにという願いを込めています。
初めて常石小学校を訪問した際、校庭に飾られていた「ともに生きる」の石碑を見て、イエナプラン教育校になることが運命だったのでは!?と関係者で盛り上がりました。

常石造船を中心とする造船、ものづくりの町として、産業や地域と密接不可分だった常石小学校にとって、「ともに学び、ともに生きる」は子どもたち、先生たち、地域にとって、もっとも腹落ちするコンセプトなのだと思います。

人口約12,000人の沼隈町に属する常石地区。

常石小学校区で見ると、15年で30%近く人口が減っています。
町としても、小学校がなくなるのは町の存亡に関わる重大事項。
3年前の企画段階では、定期的に地域住民の方々と「常石ともに学園」にどうなってほしいか、どうあるべきか、熱心な話し合いが続いていました。

これから、子どもたちと地域の方々が、この空間でどんなコトを起こして、どんなつながりがうまれていくのか、引き続き注目していきたいと思います。