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元南極観測隊の大岩根尚博士と都農町民でゼロカーボンのまちづくりについて対話

未来のまちづくりを話し合い、次世代へバトンを託す「つの未来会議」第5回を、台風14号が差し迫る9月16日(金)、都農高校で開催しました。

ゲストに大岩根尚さんをお招きし、町長・教育長、小中学校の校長先生、民間企業の経営者、生産者など産官学メンバーが集まって、気候変動のいまと未来について、2時間近く熱のこもった対話が行われました。

大岩根尚さんのプロフィール

・1982年宮崎生まれ
地質学を専攻、東京大学博士号(環境学)取得。
南極観測隊として、気候変動に関連する研究に従事。
・鹿児島に移住し、三島村の役場職員に転身。
・その後、同村の硫黄島に移住し合同会社むすひを起業
自然ガイド気候変動やSDGsの講演やワークショップ
・書籍「DRAWDOWN」の翻訳協力・実践支援
NPO薩摩リーダーシップフォーラムSELF理事
株式会社musuhi取締役
・鹿児島県大崎町「サーキュラーヴィレッジラボ」所長

1.気候変動のいまと未来

まさに「経験したことがない」規模と報道される台風14号が近づく中、大岩根さんより、ここ数年、激化する気候災害と温暖化のヤバさをインプット

「50年に一度の」「1日で1ヶ月分の雨」「観測史上最大の」毎年こんなフレーズが。

台風と洪水はデータで見ても顕著に増大、被害の強度も上がる一方。

30年以上の研究の結果、温暖化が人間の影響であるとIPCCが発表。

原因であるCO2も右肩上がり。

排出できるCO2が、このペースだと残り約7年で到達してしまう現状。

参加者への問い。

参加者より

報道で見聞きする限り、待ったなしの状況とは伝わってきにくいです。政府や自治体がそこまでの危機感をもってとりくんでるのか、温度差も感じますがどうなのでしょうか?

大岩根さんより

科学者たちは何年も前から警鐘をならして言ってるんですが、経済活動のブレーキになる可能性、経済団体からの票がもらいにくくなる可能性が政治家や自治体トップにとってはジレンマになってるのではないでしょうか。
だからこそ、こういう場を活用して、住民がちゃんと理解して、もっと厳しくやろう、やるべきという声をあげていくべきだと思ってます。

2.何が気候変動を悪化させているのか

人間が出している温室効果ガスで影響が大きいもののひとつとして、牛肉による気候変動への影響についてお話がありました。

牛肉は豚肉の6倍ぐらい温室効果ガスを排出しています。
海外で牛を育てて輸送、冷凍するために大量の水と飼料の生産、農薬、燃料が必要になってくることが原因です。
話はこれで終わらなくて、中東シリアでは2007年から3年間連続で雨がふらずかんばつに、100万人の人が失業して都市に流れ込み、政情が不安定に、スラムができてテロ組織に入る人も出てきて内戦に。
大量生産させるために、アメリカでは牛肉の販売会社が4社しかなく。その4社がすべて買い上げるかわりに高い農機を買わせて、がんじがらめにして農家を搾取。
牛に無理やりとうもろこしを食べさせて胃の中が酸性化して、逃げ出してきた最近が病原性大腸菌0-157になったり。
さまざまな問題がつながっていて一つだけを取り出して解決できない。
「私自身」も「安い牛肉」を買うことで問題に加担しています。
「全てを同時に」解決するためにSDGsが生まれました。

世界がこれだけつながってしまっている。温暖化をすすめたいわけではないのに、全体の経済のしくみでそうなってしまう。
じゃぁどうすればいいかというと、まずは自分を変える、ことだとぼくは思ってます。
牛肉を食べるときに、安いからと言って本当に遠くから来た牛肉を買う必要があるのか、近くにもあるじゃないですか。
宮崎でつくれますよね。そしたら地域にもお金がまわりますよね。
すべては安いのがいいよね、と思い込まされていたけど、安さだけではなく、もう少し意識して買うことはいますぐできることですね。

3.町民との対話

大岩根さんからのインプットをうけて、参加者同士の対話を経て質問したいことが貼り出されました。

①都農町の取り組みは?

河野正和町長より

一番は昨年9月にゼロカーボンタウン宣言をして、「都農町はこれから具体的に取り組んでいきますよ」と想いとスタンスを表明しました。

教育の現場で子どもたちから、ゼロカーボンに関するアイデアや提案を受けて宣言したのは大きなことだと思ってます。

具体的な政策としては、10年以上前、リニアの実験線の上に太陽光発電施設を設置しました。当時の東国原知事にお声がけをして、民間と自治体の稀有な事例となりました。

農の都として施設園芸がさかんなので、ストーブの燃料を重油から木質ペレットにしました。

8年近く、木質ペレットの製造・販売を手がける、都農ペレット工業株式会社の河野章弘社長から一言。

平成25年、宮崎県が脱化石燃料をうたい、重油が高騰していることもあり、平成27年3月に操業が開始しましたが、石油高騰と、CO2削減の流れもあり、熊本県にペレットを納入してい、ハウス暖房を化石燃料から木質ペレットに代替できないか、農家のみなさんと話をしているところです。

山に捨てている木材をもっと活用、経済的な側面も視野にいれ、早生樹を植えて、成長の早い木を収穫する調査研究もはじめてます。

②畜産農家の失業を防ぐには?

大岩根さんより

育て方と遠くから運んでくることが問題。
なるべく自然環境に近い生態系の一部として育てることは解決策のひとつ。
牛に海藻を食べさせることでメタンがでないという調査報告もあります。
環境にいい育て方をしているというブランドをつくる。
環境負荷を減らしながら経済価値を高めることを目指すことには可能性が

③子どもたちのゼロカーボン教育は?

大岩根さん

近くのものを大事に使う。
作り手がわかっているものを使う。
そういう価値観、こころの教育の方が早いかもしれません。
いま、都農町ではじめている「つの未来学」や「Green Hope」のように、子どもたちがこういう未来に暮らしたい、実現できるんだという実感をもてる教育が大事ですよね。

④私は何ができますか?

町長より

生ゴミの分別はすぐできますね。
生ゴミの9割は水分。燃やすのにもお金がかかる。
生ゴミを減らせれば、税金も使わずにすむ。
もっともわかりやすいことではないでしょうか。

木製コンポストの製造・販売、Tree alive合同会社の谷村さんから一言。

Tree alive合同会社|谷村江利子 代表

生ゴミを堆肥にかえる箱をつくってます。
生ゴミは自分との戦い
誰に強要できるものでもないけど、これならできると思ってます!

4.町とわたしのゼロカーボン宣言

今日の対話を踏まえて、参加者一人ひとりが、
・ゼロカーボンのために、都農町にやってほしいこと
・ゼロカーボンのために、わたしがやりたいこと
を書いてもらいました。

【産】株式会社華りん(生花販売)|黒木正和社長
【官】都農町まちづくり課|黒木教介さん
【学】都農小学校|石川睦美校長

最後は、「つの未来会議」恒例、町長から若者世代へ未来のバトンパス。

今回は、木製コンポスト製造のTree alive合同会社、谷村菜々子さんに

町長より

都農町の未来を背負ってたつ若い人たちにバトンを渡せる喜び。
バトンをパスしながら、がんばらにゃいかんなぁーと
これが最近、生きがいになってきました。やる気がでます。
がんばらにゃいかん!


大岩根さんのお話で個人的に特に印象に残ったこと。

一つは、子どもたちや孫の世代に、いまのゴミを先送りしたり、温暖化を少しでも食い止めようと努力したんだ、といって死にたいなという話。
そして、もう一つは、いま世界中が問題を認識して、これまでの世界を変えようとしている。これは希望と捉えることもできるという話。

自分もできることを、希望と捉えて、仲間と続けていきたいと思いました。

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当日の様子は、翌日にUMK テレビ宮崎のニュースで放映されました。



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