地方のまちづくりと教育と観光を重ね合わせるスタディツアーのつくりかた
人口減少、高齢化、若者流出など、日本の地域課題をすべて持ち合わせているといっても過言ではない人口1万人の過疎地、宮崎県都農町(つのちょう)。
ぼくらが日々直面しているリアルなまちづくり実務、捉え方を変えれば、教育カリキュラムにも観光コンテンツにもなりえます。
4年前、移住してすぐ新型コロナウイルスが猛威をふるっていた時。
海外旅行の機会を逸した東京など都心部の高校や大学から、SDGsや地方創生文脈のツアープログラムがつくれないか、受け入れができないかというオファーをいただきました。
1.スタディツアーをはじめた経緯
時を同じくして、ぼくらは直営事業として、まちづくりに関心のある町内外の人たちがつなげる「まちづくりホステル」をコンセプトに、HOSTEL ALAを開業。
とはいえ、観光資源のない町の宿泊事業は簡単ではありません。
なので、通常宿泊の期待値は低めに。
まちづくりに参画できて教育要素・観光要素を包含したスタディツアーを収益の柱にすることにしました。
地方にとって、3つとも重要な要素。
ただし、町の実態は、とても縦割りで連携がされていることは少ないです。
ぼくらの実務は3つの分野にまたがっていたので、自分たちなりのやり方で、それぞれを重ね合わせていくことにしました。
2.まちづくり×教育
まちづくりと教育の重ね合わせは、都農中学校の総合学習「つの未来学」で実践しています。今年で4年目に。
ありがたいことに、『先生の学校』や『先端教育』で紹介いただきました。
また、日常的に中学生たちとまちづくりに関わりをもてるよう、昨年創部した地域クラブ「まちづくり部」でも、まちづくり×教育を日々実践。
3.教育×観光
教育と観光の重ね合わせでは、中高生たちがスタディツアーの企画提案をするプログラムで実践しています。
スタディツアーで提携している東京の新渡戸文化高校。
毎年2回、都農町に希望する高校生が来訪します。
昨年11月のスタディツアーでは、東京の高校生たちが都農町にいきたくなるツアーづくりをしてもらいました。
ツアー造成のプロセスは、探究や企画を体験するよい機会になります。
前職では、滋賀県の近江兄弟社高校で、インバウンド向け近江八幡体験ツアーの造成を高校生たちと一緒に行い、リアルな外国人ゲストのガイドまで実践しました。
4.観光×まちづくり
観光×まちづくりの重ね合わせでは、ぼくらが経営するHOSTEL ALAが実践そのもの。HOSTEL ALAのゲストの多くは、まちづくりに関心のある人。
まちの地域課題を知るために、都農神社や都農ワインを訪れます。
都農ワイナリーは、町内で希少な観光スポットともいえますが、都農ワインの歴史はまちづくりの歴史そのもの。
ゲストにとっては、まちづくりと観光両面でインプットや体験を頂けます。
もちろんワインをたっぷり飲んで、購入いただいてます!
5.イツノマ流スタディツアー
ぼくらが試行錯誤しながら、まちづくりと教育と観光を重ね合わせてつくってきたスタディツアーを紹介します。
①京都市⽴⽇吉ヶ丘⾼校
「越境学習」がコンセプト。
2021年に修学旅⾏、2022年、2023年は夏休みにフィールドワークで来訪
廃校活⽤などテーマに、2泊3⽇で7時間近いワークショップを実施、町の⼈に提案。
2021年
2022年
2023年
②新渡⼾⽂化⾼校
「探究」がコンセプト。修学旅⾏を廃⽌し、合計4回、全国20町村を選択
2022年から2023年まで合計3回、今後も毎年2回受け⼊れ予定。
ツアープログラムは事前にオンラインで⾼校⽣の希望を聞き、話し合って決定
2022年11⽉
2023年11⽉
③東京大学
農業と地域おこしに取り組む学内サーク ル「東大むら塾」の6名がツアー参加。都農町の若手経営者との交流も実施し、 地方創生について意見交換
都農高校跡地活用を2泊3日で現地内覧・ 企画し、町⻑・副町⻑にプレゼン
④立教大学
イツノマが観光学部で「ホテル運営論」 を2週連続で講演したことがきっかけで、 受講した学生が都農町に。
町内の若手経営者と、都農町の現状や課 題について意見交換し認識を深める
地元の「南国プリン」をテーマに、TikTok でのプロモーションを提案
⑤関西学院大学
人間福祉学部社会起業学科の公式プログ ラム「フィールドスタディ」。
1人2週間の滞在、まちづくり×教育や、 地方での宿泊施設経営の学習と職場体験を実施。
⑥企業(ダイナモブートキャンプ)
知識創造プリンシプルコンソーシアム主 催の、企業の新規事業研修「ダイナモ ブートキャンプ」を2泊3日都農町で。
サントリー、三菱重工グループ会社など 参加企業5社の社員と、都農町の小中学生、 経営者が一体となって、これからのサー キュラーエコノミーに関わる新規事業を 企画立案
今年度も、6月に新渡戸文化高校、8月に日吉ヶ丘高校のツアーは決定しています。ぼくらも経験値が増えてきて、ちょっとしたノウハウにはなってきたかなと思っているので、今年はより多くの高校・大学・企業に来てもらえたらな、と思っています。
分断されがちな、まちづくりと教育と観光。
小さな町のよさは、3つの要素を重ね合わせられることだと思います。
そのためには縦割りになりがちな行政の隙間を縫い合わせる民間の機能。
そして、なによりも楽しくなければツアーの魅力が出ないので、町としてどうホスピタリティをつくっていくか?楽しい体験をしてもらえるかの企画と町の巻き込み力が必要です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?