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まちづくり、事業開発のコツ7選(「ひなたMBA」で伝えたエピソード録)

5,000㎡の耕作放棄地にあった2件の空き家+トレーラーをリノベーションしたHOSTEL ALAを開業して4年目。

今週、宮崎県の人材育成プログラム「ひなたMBA」事業開発講座の会場に。

27名の方々が集まり、7時間の講座を企画・実施。

ぼくが新卒入社したPOLA、志願して配属してもらった「事業開発部」。
以来35年間連続で事業開発に関わり、数えきれない失敗もしたけど、生き残ってる事業のエピソードをお伝えしました。

事業の定義や評価ってむずかしいけど、ぼくは「長く続くこと」が大事だと思ってやってます。

長く続くってことは、

・利益が出て儲かってる
社会的意義が大きい
・誰かの役に立ち続けてる

のどれかに該当するんじゃないかと思ってるからです。

1.強みを活かす

POLAキャンディー事業

事業開発のコツ、1つめは「強みを活かす」です。

人生初の事業開発は、新卒で入社したPOLAでした。
当時のPOLAは将来的な事業拡大のため、商品軸×販売チャネル軸で新規事業を積極的に推進。

既存チャネル×新規商品:下着・ジュエリー
新規チャネル×既存商品:ORBIS(通信販売・店舗販売)など
新規チャネル×新規商品:キャンディー

ぼくは、販売チャネルも商品も今までのPOLAと違い一番チャレンジングなキャンディー事業に配属。

POLAが「強みを活かす」要素は、商品企画。

強みは2つ

1つめは素材と包材。
化粧品の研究所やグループ企業の薬品会社の技術を活用、ソルビトールという冷感ある触感素材や、薬品でつかってた包材を活用。

2つめは、商品企画・マーケティング。
メインはぼくも含めた20代が担当。キャンディーの主力購買層に近い年代ならではのネーミングやパッケージデザイン、味覚など、新卒なのに営業だけでなく消費者調査、テレビCM、在庫管理など幅広く担当。

当時、事業開発部にいた20代はいま経営者として活躍しているので、事業開発だけでなく人材開発にもなっていたと思います。

キャンディー事業はアサヒグループに事業譲渡、いまもMINTIAは、一消費者として愛用させてもらってます。

2.情熱

上越ウイングマーケットセンター

事業開発のコツ、2つめは「情熱」です。

20代半ばで新潟県上越市に移住、長男も誕生した第二の故郷に。

移住のきっかけは、当時、国内最大級のパワーセンターを未経験ながら仕掛けてた地元の砂利採取業者の社長の情熱

事業の成功要因を振り返ると、建築や都市計画、小売業誘致など難易度の高い実務の積み重ねも大きいけど、それ以上に、ぼくも含めて関わったメンバー全員が、社長の情熱に惹かれて採算度外視で巻き込まれていったからなんですよね。

何に対する情熱だったのかというと

都心の大手小売業・不動産業ではなく、地元の人が地元のために商業デベロッパーになって日本一の商業集積をつくる

これって、30年近い前の話なのですが、いまの地方創生にも通じる課題の解決にチャレンジしてたんだなと思ってます。

その後、地元の小売業者さんたちがつくった会社、PATIOが事業承継し、昨年30周年を迎えました!

実は来週、上越教育大学の講演にお呼ばれして久々の上越!楽しみです。

3.事業性と社会性

キッザニア東京

事業開発のコツ、3つめは「事業性と社会性」です。

メキシコ生まれのキッザニアを日本に出店させるためにできた事業会社に、UDSが筆頭株主として参画、ぼくは取締役として経営と実務(内装設計・パビリオン企画・スポンサー誘致)を担いました。

キッザニアの事業は「こどもの職業体験」。キャリア教育やニート対策など社会的意義があることは間違いないのですが、課題は儲からない領域。

事業性を高めるために、テーマパーク入場料だけではなく初期投資や運営費用をスポンサーからの出資で賄うビジネスモデルでした。

ただし、キッザニアの世界観を保持するため、スポンサー企業のサインやロゴの掲示制限、広告物・キャラクターの禁止、運営スタッフはすべてキッザニアのスタッフなどスポンサーメリットの少ない条件のため、日本ではなかなかスポンサーが集まらず、ぼくの仕事の99%はスポンサー誘致でした。

スポンサー営業する際、広告・営業的メリットは言えないため、当時、企業の不祥事が相次ぎCSRの重要性が増していたことを踏まえたCSR対策として、あるいは子どもや孫世代のために投資することがリクルートやブランディング対策という側面を強調。そんな話に賛同してくれる企業がスポンサーになって頂きました。

いまは事業性だけを追求しても共感は得にくい時代、「事業性と社会性」の両立は、今後の事業開発でも重要なコツになると感じてます。

4.パートナーとの協働

INBOUND LEAGUE

事業開発のコツ、4つめは「パートナーとの協働」です。

インバウンドのコンサルティングをしている株式会社やまとごころの村山社長と盛り上がってはじめたのが、インバウンド事業者のためのコワーキングスペース「INBOUND LEAGUE」です。

どの事業でもパートナーの存在は不可欠ですが、パートナー同士が、強みを活かし合った協働をしていけるかがポイントです。

ビジネスモデルは、当時親会社の小田急電鉄さんにビル一棟投資・所有頂き、ぼくらが企画・設計してマスターリース。

収益源は、やまとごころさんの本社をはじめとするオフィス賃料、専用デスク、ラウンジ会員、シェアハウス賃料、イベント収入など複合化させて運営しています。

PR面では小田急電鉄さんを巻き込んでワールドビジネスサテライトで放映いただいたことでインバウンド事業者の方々への認知が高まり会員・入居者増に貢献していました。

5.意義の共有

神保町ブックセンター

事業開発のコツ、5つめは「意義の共有」です。

若い世代にとって神保町はいまや「カレーのまち」ですが、もともとは「本のまち、古本のまち」。

靖国通り沿いの一等地、岩波書店の旧本社ビル1Fで経営していた書店が破綻、その後の活用法の提案を求められていました。

企画をする上で、大切なのは支出を抑えること。
この事業の最大の支出は不動産賃料でした。

ぼくらが提案した事業は、ブックカフェとコワーキングスペースの複合。ただし、この立地条件だとコンビニやドラッグストアの賃料にはかないません。

そこで当時の岩波書店の岡本社長に直談判、目先の賃料より、神保町、岩波書店の聖地として、本にこだわった業態をやる意義を主張しました。

岡本社長は、ぼくらよりさらに上位概念の視点で、

正直、岩波書店にこだわらなくてもいいと思ってる。
もっと若い人に本を読んでもらうため、
出版業界、全体のための場所になるならいいと思う。

「意義の共有」ができたことで事業が進み、開業時にはNHKでも大々的にとりあげていただきました。

6.運営シーンの想像

HOSTEL ALA

事業開発のコツ、6つめは「運営シーンの想像」です。

過疎地の耕作放棄地でホステル。なかなか採算イメージはわかないものです。そんなときに必要になるのがどういう運営をするか?の想像。

宿泊客だけでなく、そもそも運営する人員も採用が難しい過疎地において実現させるためには無人オペレーションがマスト。

その上で、来てほしい人たちは、地方創生やまちづくりに関心をもってぼくらと話したり協働する学生やまちづくり関連の人たちでした。

そんな人たちをイメージしたため、2棟ある建物の1棟はドミトリー形式をミックスしてより多くの人が安く泊まれるように。

もう1棟は、ぼくの自宅を兼ねつつ、スタディツアーや合宿研修の際は研修や食事場所として使えるような場づくりをしました。

今回、27名が集まって終日、研修できたのは想像していたイメージ通りの用途で大変ありがたかったです。

7.ビッグピクチャー

以上、実体験に基づいた事業開発のコツを6つ紹介してきました。

最後の7つめはビッグピクチャーです。

事業を開発する際、どうしても日常業務の延長上で企画は企画、設計は設計など分業化しがち。

ただし、未知のものをあたらしく作り上げていくには、日々変革と調整の連続。誰かが一人、俯瞰して全体を見ていかないと部分最適なものしができず、出来上がってみたら既視感あるものだったりします。

常に、対象事業の領域の一つ、二つ上のレイヤーから客観視していくことが重要になると思ってやってます。


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