【ジキルとハイド】は私の性癖の原典にして頂点
ジキルとハイド】は小説のタイトルですが、【とある状態】を指す言葉にも使用されています。
私は、その【とある状態】を持っているキャラクターに10歳の頃出会い、性癖が直角にこじれ、そのまま直線に真っ直ぐ突き進んで成長をしました。
【とある状態】フェチとして、読んでおかなければと手に取ったこちらの本。致命的で根本的なネタバレを避けて読書感想文を記しますので、
この物語の真相と【とある状態】は何なのか是非推理していただければと思います。
舞台は19世紀のロンドン。オシャレですね!
弁護士のアタスンさん(いかつい顔で感情を表に出すのが苦手、でも寛容で人によって態度を変えない誠実な人)はハチャメチャに頭を悩ませ暗い気持ちでした。
彼の依頼人である、ヘンリー・ジキル。彼から貰った遺言状には、このような事が書いてありました。
その遺言書は、医学博士、民法学博士、法学博士、王立科学協会会員等なるヘンリー・ジキル死亡の場合には、彼の一切の所有財産は、彼の「友人にして恩人なるエドワード・ハイド」の手に渡るべきことを規定しているばかりではなく、ジーキル博士の「三カ月以上に亙る失踪、または理由不明の不在」の場合には、前記エドワード・ハイドは直ちに前記ヘンリー・ジキルの跡をつぎ、博士の家人に少額の支払いをする以外には何らの負担も義務も負わなくともよいことを規定していた。
アタスン弁護士は、ハイドという人間を全く知らないので不快に思っていました。
私の友人のめっちゃ偉い人が、私がぜんっぜん知らない人に全財産を渡す遺言状を書いた。何考えてんだ?という状況。
しかし、ハイドがどういう人間か、思いがけず知ってしまったのでさらに不快感を募らせています。
エドワード・ハイド。彼は、曲がり角で鉢合わせた少女の体を平然と踏みつけ、倒れて泣き叫んでいる少女をそのままに歩いていきます。
少女は医者を呼びに走っていたらしく、一部始終を見ていた医者は大激怒。当然ですね。
嫌悪と殺意まみれでハイドを脅し、周りの人々も憎悪の表情でハイドを睨んでいます。
しかしハイドは、全く動じず薄ら笑いで「さあ、金額を言ってくれ」と答えます。金で解決!!!
不気味で劣化している家に入り、現金と小切手を持って出てきます。
偽物に決まってる!しかし翌日銀行へ行くと、正真正銘の本物。胸糞悪い!!
この話を耳に挟んでいたアタスン弁護士は、私の友人のめっちゃ偉い人が、ゲス野郎に全財産を渡す遺言状を書いた。頭おかしくなったのか?
放っておけない!と調べる事に。
そしてジキルの家の別棟の鍵を取り出し、入ろうとするハイドを見付けます。
ハイドは肌の青白い、小人のような男だった。はっきりとした病名のあるものではないにしろ、なんらかの奇形を思わせる。不愉快な笑み、臆病さと厚かましさがないまぜになった異様な振る舞い、どこか壊れたようなしゃがれた囁き声。それらすべてがハイドを不快に見せている。
アタスン弁護士は、この後ジキルにも話を聞きに邸宅へ行きます。この人行動力と人を思いやる心が凄い。
しかし使用人いわく、ジキルは不在。主人が留守にしているのに、ハイドが別棟に入ってるのはいいのか?と聞くと、
「いいんですよ。ハイド氏は合い鍵をお持ちです。私共は、ハイド氏の言うことをよく従うようジキル様にきつく命じられています」と応えます。
これにはアタスン弁護士も、「ジキル大丈夫か!?ハイドが遺言状の事を知ったら、君を殺すんじゃないか!?危険だ!私が一肌脱がなければ!…ジキルが望めば、だけど……」と猛心配。いい人。
そして2週間後の夜、ジキルが開いた夕食会でアタスン弁護士はついに
「ジキル、ずっと君と話がしたかったんだ。例の君の遺言状のことだ」と切り出します。
ジキルは背が高く、均整の取れた体付きの、人当たりのいい50代の男性です。少し狡猾さは見えますが、それを遥かに凌ぐ寛容さと優しさを持ち、アタスン弁護士に対して誠実で豊かな愛情を抱いています。
しかしジキルは、話題をすり替えようとしたり、その話は聞きたくない、そっとしておいてくれと拒否。
そして前代未聞の殺人事件発生!
ハイドが、アタスン弁護士の依頼人である男を撲殺。凶器はアタスン弁護士がジキルに贈った杖でした。
これにはジキルも「事件については聞いている。もうハイドとは会わない。縁は切った。」と言います。ジキルは、ハイドから貰った手紙をアタスン弁護士に渡します。
「恩人であるジキルの寛大な計らいに何も報いることが出来なかった。逃亡手段はあるので心配無用。」
アタスン弁護士は「ジキルとハイドの関係はいかがわしいモノじゃなかった」と安心。
遺言状は、ハイドに無理やり書かされたのか?と聞くと、ジキルは唇を真一文字に結んで黙って頷きました。
そしてまた、アタスン弁護士の依頼人である男が殺されました。
自力で解決したがるアタスン弁護士もついに助手にそれとなく助言を求めます。助言はハイドの手紙を眺め、ジキルの伝言の紙片と見比べました。
「2つの筆跡は、多くの点で一致しています。文字の傾きが違うだけ」
「ジキルが殺人者ハイドの手紙を捏造するなんて!!」とアタスン弁護士はゾッとしました。
それから時が経ち、傷も癒え、各々平穏な暮らしを送っていましたがジキルと、共通の知人であるラニヨンの様子が豹変。2人は修復不可能な仲に。
何があったんだよ!とアタスン弁護士はまた悩みます。
アタスン弁護士の元へラニヨンの死後、手紙が届きます。しかしその手紙の表に記されていたのは――
「ジキルの死後、失踪まで読むな」
また時が経ち、疎遠になりつつありましたがアタスン弁護士はジキルに会います。
「一緒に散歩に行こう、君が心配だよ!」と伝えても、「君はいい人だね…君に会えて嬉しいよ、でもやめておこう…」と拒否。
話の途中、ジキルの笑顔は、卑劣なまでの恐怖と絶望に染まり窓を急に下げます。
「ジキル…自殺でもするんじゃないか…」 と顔面蒼白で怯えるアタスン弁護士。この人、心休まる瞬間が無いです。優しすぎますね。
そしてある日の夜、アタスン弁護士の元にジキルの使用人が「怖い!人殺しが起きました!私と一緒に来てください!」と邸宅へ連行。
「ジキル。どうか顔を見せてくれ。私はどうしても君に会わなければならない。これから会いに行く。承諾が得られないのなら力づくでも。」
「アタスン、やめてくれ」
「ああ…ジキルの声じゃない――ハイドだ!!」
部屋の中央に男が横たわっていた。痛々しいほどねじ曲がった体を細かく痙攣させていた。ハイドは、ジキルの大きな服を着ていた。手にした薬瓶は割れ、ヒ素のにおいが漂っている。既に息はなかった。
机にはアタスン弁護士宛の大きな封筒。中身はジキル直筆の新たな遺言状と、分厚い包み、手紙。
「ラニヨンからの手紙を読み、私の告白を読んでくれ」
作品の終盤に、ラニヨンの手紙とジキルの告白……全ての真相が明かされます。
真相のネタバレなし感想┈┈┈┈┈
アタスン弁護士さんが終始ジキルさんの事大好きすぎるんですよね。ずっと信頼してました。変わっていく親友を助けられず、最後に部屋で見つけたジキルの好きな宗教書が冒涜の言葉の書き込み塗れになってるのを発見した時…辛かったでしょう。訳者様の解説を見ると、最初アタスンさんはジキルとハイドが男色の関係だと疑っていたようです。まぁ確かに同居してるし異様に庇うのでそう見えるかもしれませんね。