歌の先生をしています。
いわゆるボイトレの先生。
始めて数ヶ月ですが、たくさんの気付きがあります。
「声には人柄が出る」とはよく聞きますが、こんなにも?と驚いています。
プロの世界にしばらく居させていただき、たくさんの歌を聞いてきましたが、
そこに居るのはたくさんの修行を重ね、理想の声を作り上げてきた人達。
もちろん、その人それぞれの「理想」に、その人となりが反映されますから、そういう意味で、その人の声はその人を物語る、という解釈をしていました。
今僕が歌を教えているのは、ほとんどが「最近始めた」「これから歌を楽しみたい」という方達。
共通してみなさん、歌が好き、あるいは歌いたい!という気持ちではあれど、地道な反復練習やらを繰り返して来た方たちではないわけですよ。
そう言ったみなさんの、いわば「プレーンな声」を聞いてますと、まあ本当にその人柄が見えてきます。
「声」というもの自体はほぼ毎日使うわけですし、声を出すのも筋肉を使うわけで、
その人がそれまでにどんな声を出してきたかで、その人の声が出来てるわけです。
優しい言葉をたくさん言ってきた人は、「うっせぇわ」を歌っても優しく聞こえる。
自信がなくて自己主張が少ない人は、大きな声で歌ってみよう!って言っても難しかったり。
で、だいたい皆さんそれを「直してほしい」と言って、教室にやってくる。
歌い手としては、自分の持ってる一番いい声を、狙って出せるのが理想、だと思うし、
先生と名乗る以上、生徒さんの「こうしたい」を形にするのが仕事、だと思う。
ただ、ひとりの聞き手としてはね、嫌いじゃねえんだよなぁ。
その人が普段どんなことを感じて、どのくらい表現して、どのくらい我慢してきたのか。
歌ってる歌のどこがどんな風に好きで、どんな気持ちになってるのか。
百発百中でわかるわけではないけど、それに触れられた時、引き出せた時、本当に鳥肌が立って涙が出るくらい、感動する。
そのとき俺の心を動かしてるのは、その人が「苦手」や「嫌い」と思っていた、元々その人が持っている固有のクセだったり、声色だったりする。
もしかしたら、誰もが理解出来る「良さ」ではないのかもしれないけど、僕はそれこそが、その人の「個性」だと思う。
歌の先生としては、良しとしてはいけないことなのかもしれないけど。
1人の歌好きとして、そういうときは「ありがとう」といいます。
だって、「エモい」ってそういうことだろ?と、
変にロック思考の僕は、そう思うのです。