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「マジカルグランマ」(柚木麻子)読みました

元気を充足したい人にオススメ。
どうなるんだろうとわくわくしながら読み進め、読み終わった後も多幸感に包まれる。余韻がいつまでも残りそれがとても心地よい、っていうのは久々の体験でした。
主人公正子は70代半ば若い頃は女優を目指してたけど、映画監督と結婚してからは専業主婦。一人息子は独立していて疎遠。夫とは敷地内別居していて長年口もきいてない顔も合わせてない。その夫の死亡後、波乱万丈人生のはじまりはじまり。
…と、導入部のあらすじを知った時点で、“あーなんか先が想像できる話”と、感じたら…そういう人ほど、読んでみて損なし、です。まったく想像できなかったところまで連れて行ってくれますよ。
正子の性格がいい…いわゆる“性格がいい”とは真逆です。にこやかで穏やかないいおばあちゃん、ではない。それでいて共感ポイントがたくさんあります。
正子は、子供の頃より嫉妬深く…親の愛情を一心に受けている(と正子が感じてた)実弟とはずっとぎくしゃくしたままで終わったほど…今も、特別な存在になりたいって気持ちがいっぱい。それを隠そうとしないところが、すごく楽しいです。
自分が老人であることをとことん利用して、自分のやりたいことに向って行く姿勢がたくましい。うじうじしたところなし。そのパワーが周りを元気にする。
正子が、ゴミ屋敷で暮らす近所の男性を説得する言葉がいい。「腰が痛いまま、皺だらけのまま、私たち楽なやり方でパレードに出ましょうよ」。
正子の周りに集まる人は、彼女のパンチある“陽性”に惹かれずにはいられない。自分自身も日向の場所へ連れていかれる心地がするから。
老いも若きも、それぞれに唯一無二の人生あり。登場人物のだれもが、自己犠牲を払うような聖人ではなく、あくまで自分の人生が一番。その、自分の人生を幸せにするという気持ちの強さが相乗効果となって、様々な事態を好転させていくのです。
途中で、共感性羞恥の強い自分は、“あーこれからとんでもないことになる”と心落ち着かず、ちらちらと薄目でしか読めないところがありましたが…そして案の定の惨事!…でも、ちゃんと、お話としては挽回されていくのでご安心を。
題名の「マジカルグランマ」には深い意味が込められています。楽しくストーリーを追いつつ、社会のこともこの社会で生きる自分自身のことも考えさせる。それでも…
“この家から出られなくたって、凡人だって、人から嫌われていたって、私はなんにだってなれる” の精神をずっと持って生きなきゃね。

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